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ー白人VS.中国人スパイ?!人と人を繋ぐのは・・・ー映画『バルーン』

色んな人と関わるようになった、このご時世。
人に救われたり、人に裏切られたり。

そんな日々を経験している中で
簡単に人を信じってしまったり、また疑ったりしてしまう。

そんな偏見が人と人との繋がりを妨げてるようにも思います。

そう考えさせられる
映画『バルーン』は、中国のスパイ気球から墜落したと思われる男性と、田舎に住む白人男性二人が出会う物語。

新始動したSAMANSAオリジナルレーベル〈SSTRUCK〉(ストラック)が手掛けた、第1弾目のショート映画となる今作。

今回は、
この作品で監督が伝えたかったメッセージや
実在したあのスパイ気球の正体についてなど
映画にもっと深く入り込める作品裏側をお届けします!♪


〈タイトル〉『バルーン』
〈監督〉Law Chen
〈作品時間〉16分42秒
〈あらすじ〉アメリカ上空を飛ぶスパイ気球が話題になっていたころ、 2人の田舎者の白人が墜落するスパイ気球を発見!「スパイを警察に渡せばヒーローになれる」と墜落現場に向かうが、そこで彼らの人生を変える出来事が待ち受けていた。

SAMANSA


● 二つの文化を知る、中国系アメリカ人の監督

様々な人種が在住するアメリカ合衆国で
多くの人が経験するのが、偏見や衝突

そんな複雑なテーマを語るこの作品。
その裏には、監督自身が歩んだ生い立ちがあるそうです。

アメリカ中西部で生まれたロー監督。
中国系アメリカ人の両親の元で育った彼は、
8歳の頃から中国の北京に移住。
この経験が監督にとって刺激となり、
人種や文化というアイデンティティについて考えるきっかけに。

以降、アメリカに帰国したとき
アメリカ人の中国に対する偏見や批判が改めて気になるようになった。
この複雑な思いが作品に埋め込まれていったと話します。

ロー監督は、どのような光景を見てきたのでしょうか。

これまでアメリカでは、
特にコロナウィルスの流行によって
アジア系に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が増加し
「STOPアジアン・ヘイト」がトレンド入りするなど
特定の人種に対する差別行為が、社会問題として呼びかけられました。

このように、
様々な人種が住むアメリカ合衆国だからこそ
特定の人種が住みにくく感じたり
居場所をなくす状況が起こってしまうのでしょう。

そんな状況をさらに悪化させた事件が、
今回の作品で描かれた「2023年中国気球事件」

一体、何がなぜ起きたのか
そして本当に作品のようなことが起きていたのか・・・。

● アメリカに現れたスパイ気球?!

2023年2月。
突如アメリカ合衆国の上空に現れた、中国から来たと思われる偵察用気球 🎈

アメリカ空軍によってすぐに気球は撃墜されましたが
多くのメディアは、気球から発見された大量の情報収集機材により
「中国のスパイバルーン」と報道。

これにより、
アメリカではアジア系に対する批判や偏見がさらに悪化してしまったのです

しかし、中国が飛ばした気球の真の意図は未だ不明。
さらに、気球による中国への情報収集は記録されていないそう。

いずれにしても、
この事件によりアメリカと中国の間には緊張感が増すように。

この複雑な状況を受けロー監督は、
異なる人間同士でも共通する何かがあると伝えたかったそうです。

アメリカと中国、二つのアイデンティティを持つ監督だからこそ
伝えたいメッセージが込められたのでしょう!

● ニューパルツの街全体が撮影に協力!

ニューヨーク州のニューパルツという街で撮影されたこの作品。

なんと、ニューパルツの街は撮影に前向き!
交通機関や消防署の協力によって、
今回とても順調な撮影期間になったそうです🎬

街中全ての道沿いで撮影の許可を降ろしてくれたり
撮影中に発生する煙等を、消防署や近隣住民が事前に承認してくれるなど!

また、映画専門学校に通う息子を持つ女性が、
撮影期間の4泊5日を制作チーム全員無料で泊まらせてくれたそう!

こんな絶好な撮影ロケーションに恵まれた撮影で
唯一恐れていたこととは・・・

それは虫!🐛
山奥での撮影が長かったため防虫管理だったそう。

しかし、防虫スプレーなど持参したにも関わらず
撮影で発生した大量の煙によって虫は一匹も現れなかったそうです😂

そんな撮影現場では、
チームのみんなで毎晩集まったり
キャストの誕生日を祝うなど🎂

とても楽しい光景が浮かんできます!

このような絶好な撮影と団結したチームだったからこそ叶えた作品。
たくさんの想いが込められていたんですね!✨

ちなみに、スパイを疑われたエリック役を務めていたベン・ワンは、Disney+ ドラマ『アメリカン・ボーン・チャイニーズ 僕らの西遊記』などに出演する今注目の話題俳優。

2024年12月に新しく公開予定の『ベスト・キッド』シリーズ最新作では、なんと主演を務めるのだとか!!

Ben Wang. EMMA MCINTYRE/GETTY IMAGES

主役のオーディションは世界中で行われ、たくさんの応募が殺到しましたが、ワンは役との深いつながりや流暢な中国語、そして数々の武術スキルを披露したことで、見事に役を獲得することができたといいます。

まさに旬な俳優の一面が見れる、見逃せない機会にもなっています♪


さて、ここからは映画の内容をもうちょこっと深掘り🧐ネタバレを少し含みますので、まだ観ていない!という方はぜひ鑑賞後にご覧になってみてください:)

●'アメリカ人らしさ'とは

さて、劇中でスパイを疑われたエリックですが、実はアメリカで生まれ育った韓国系アメリカ人であったように、見た目だけではその人その人のバックグラウンドまで決めつけることは難しいと言えます。

アメリカが抱える多様性、そして多くの人々が複雑な文化的、民族的背景、ルーツを持っていることは、これまでにもSAMANSAの映画『マイ・ピープル』などでも描かれてきました。↓

 一方、移民問題とも相まって、そういった人々に対する一部の人からの風当たりが強いのも事実です。

特に、田舎のブルーワーカーとして厳しい生活を送っていた主人公のデールもまた、日頃からメキシコ料理屋の主人と揉めるなど、勝手にアメリカ人ではないと決めつけた人々に対し、差別をしていました。

しかし、エリックとデールらのやり取りにはいかにも”アメリカ人”らしいやりとりがたくさん流れてくるのも見どころ。

アメリカ合衆国への忠誠を示す「忠誠の誓い」(多くの公立校で毎朝言わされるそうです)を言わされたり、国民の2つの権利や最高裁の判事の数など、まるで米国市民権テストに似た尋問がされるのはもちろんのこと、エリックの財布に書かれた"Chiefs" (カンザスのフットボールチームの名前)を見てアメフトの話で盛り上がるくだりは、まさに”アメリカ人らしさ”が皮肉にもギュッと詰まっています。

 こうしてみると、そもそも ’アメリカ人’とは、'アメリカ'の定義とはなんなんだろう…と考えさせられますね。


●主人公の意外な人物像とラストの意味

そしてもう一つ。エリックのスパイ疑惑が浮上した現場では、3人の間になんともしれぬ緊張感が漂っていました。

しかし、デールの愛犬ピーナツが亡くなってしまった話を皮切りに、少しずつ彼らは「文化的アイデンティティ」を超えて打ち解けていきます。

この映画の一つの興味深い点は、映画の冒頭、主人公のデールがまるで死体を遺棄する殺人犯かのように描かれていること。

このミスリードは、デールという人物に対する誤解を観客に与えます。

攻撃的だった白人2人も、実はただどこかで寂しさを抱え、つながりを求めていただけなのです。

一方のエリックは、あれだけ優しい言葉をかけていたのにも関わらず、最後にはいきなり逃げだしてしまいました。彼のIDも本当かどうかわからず、彼の正体も結局あいまいなまま、物語は終わってしまいます。でも、デールにとってそんなことはどうでも良かったのです。

おそらくそれは、文化的な立場それ以前に、「誰もが見えない何かと戦っている」ということを教えてくれているような気がします。

だからこそ人を表面だけで判断してはいけないし、たとえ表面上の優しさに見えたとしても、時にはそれが見えない苦しみの支えになることもあるのかもしれない…。

「会話をすることが重要なんだ」というエリックの言葉は、これからどんなに世界が変わろうとも、きっと何よりも大切なことなのかもしれません。


偏見を超えて、もっと人を信じられるようになりたいな。
と少し優しい気持ちになるかもしれない
映画『バルーン』
ぜひ、SAMANSAでご覧ください♪

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