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映画『ジョーイ』〜ジョーカーを彷彿とさせる! 予想外の衝撃展開で・・・?〜

ピエロを題材にした映画として、最も注目を集めた作品の一つに『ジョーカー』という映画がありますね。ジョーカーとは元々、世界的人気を席巻している、DCコミックスが出版するアメリカンコミックス『バッドマン』に登場する架空のスーパーヴィランとして有名です。

鑑賞者に深い悲しみと恐怖を与えた、ジョーカーを演じたホアキンフェニックスの演技は世界的にも賞賛され、アカデミー賞で主演男優賞を受賞。映画としては2020年度のアカデミー賞で最多の11部門がノミネートされるなど、社会現象を巻き起こしました。

そんな出来事を筆頭に、ピエロという存在は『孤独で悲しみを抱えた悪』といった印象を持つ人も少ないないでしょう。

しかし今回ご紹介する映画『ジョーイ』は、新たな視点からピエロのユニークな存在を感じさせてくれる作品。

ジョーカーを彷彿とさせながらも、ピエロに寄り添ったほっこりしたエピソードに仕上がっています。

実はピエロのこれまでの歴史を辿れば、世間の悪として知られる存在でもないとのこと。

今回はピエロの歴史に触れながらも、映画『ジョーイ』の魅力に迫っていきます。

ネタバレ等含みますので、SAMANSAで作品のチェックもお忘れなく!


<作品時間> 14分25秒
<監督> William Ash
<あらすじ>
友達もおらず、寂しく独りでピエロとして働くジョーイ。その孤独の辛さはもう死んでもいいと思っているほどだった。ある日の昼頃、ピエロに姿のままカフェに座っているジョーイ。

ペンを使ってマジックをしたり、何気なく店員さんを楽しませるジョーイだったが、突然カフェの店員さんからデートに誘われる。やがて2人は恋に落ちていくのだった。

その日の夜、2人はぎこちない姿を垣間見せながらもテーマパークでのデートを楽しんでいた。お酒も飲み、やがてジョーイの家に辿り着いた2人はキスを繰り返し、ロマンチックな雰囲気に。

しかし、眠ってしまったジョーイを見たカフェ店員の女性は慌てて逃げるように家を出てしまう。そう、ジョーイには決して誰にもいえない秘密があった・・・しかしその秘密が意外な展開を呼び込む。



◎ジョーイはどんなピエロ?

映画「ジョーカー」を鑑賞した人であれば、冒頭のシーンは何か圧倒的な雰囲気をフラッシュバックさせるような、映画全体にダークな印象を持たせます。

しかし、そこが今作品における一つのポイント。見ていく中で、良い意味で視聴者の期待を裏切ってくれる物語が魅力的。

後半にやってくる二転三転する展開には、約15分の映画とは感じさせないような感覚になる人もいるかもしれません。

なんといっても、最後にピエロに対して抱く温かい感情は鑑賞者をほっこりさせます。

またピエロを舞台にした新たな視点で描かれた本作品に、何か新鮮な気持ちも持つことができるのも、私たちを魅了させる大きな要素の一つでしょう。

ぜひ、一度ピエロの視点を感じて鑑賞していただきたい一本です。


◎ピエロの歴史からわかる存在価値

そもそもピエロはどのようにしてこの世界に生まれたのでしょうか?

実はピエロが生まれたのはイタリア。正確には『クラウン』と呼ばれる方が一般的なのだとか。ピエロはフランス語が語源となっており、日本では道化師とも言われていますね。

映画で存在するピエロとは裏腹に、現実世界ではテーマパークや行楽地などで、パントマイムや風船を配ったり多くの人々を楽しませるキャラクターとして確立しています。

しかし、歴史を辿ればそんな人々に喜びを与える存在ではなかったということがわかります。

イタリアでクラウンと呼ばれていた時代は、良い意味で狂った者や頭が切れる者として宮廷道化師と名乗られ、王のアドバイザーとして活躍していたとのこと。

トランプのジョーカーもここから来ているそうです。

しかし時代が流れ、フランスにピエロとして知れ渡った時には、全く反対の存在に。

きっかけは当時の劇でピエロが与えられた役割が、田舎者で愚か者、人々の嘲笑の対象にされる不恰好な役だったこと。

そこからピエロは、孤独で悲しさを重ねもった哀愁さを漂わせるキャクターになったといわれています。

まさに様々な映画で描かれているピエロは、歴史を辿った姿がそのまま表現されていることがわかりますね。


◎人間界に潜んだピエロ

今回の映画で面白さを与えてくれるのが『人間界の中にピエロ界が存在している』ということ。

昔から道化師として人間が作った存在とはいえ、長年の歴史のおかげで確かにピエロ界があってもおかしくはないとも思わせられます。

さらにピエロ界は世界が狭いのか、歴史と同じように『孤独で悲壮感』を抱えているのは変わりない。実はこの部分は、人間界でも抱く感情だと共感を寄せることができますね。

人間界の中でもいろんなコミュニティーがあります。それは家族や友達、チームかもしれません。そういった様々なコミュニティーでうまく和に入れない人々も、孤独な虚しさを感じます。

まさにそういった状況と照し合わせることができる。ピエロ界の視点に立つからこそ、感じれる面白さや感慨深さがあるのではないでしょうか。

ただの淋しいピエロを客観的に覗き込むのではなく、自然な流れで悲壮感、そして温かい気持ちに持っていかれる構成に引き込まれていきます。


◎これは2度の鑑賞が必見映画!?

ぜひ、この映画は2度は見ていただきたい・・・。

その大きな理由に、ジョーイに恋するカフェ店員の女性の存在があります。

結末は、女性も同じピエロだったということですね。

ぜひ「彼女もピエロだ」と理解した上でこの作品を鑑賞すると深さが違ってくると思います。

例えば、2人がデートで再び会った時にする話などはとても印象的。

女性はジョーイにプレゼントとして、青い花を持って来ますね。

「心配しないで。顔に水がかかるやつではないから。」
「これは折れちゃう花なんだけどね。」

こういったサプライズをするのも彼女自身がピエロだからこそ生まれる行動ですね。

また、女性から「あなたは、、、前とは違うわね」と言われたジョーイの返答は

「それなら安心だよ!」

と発言しています。これは『自分がちゃんと人間として認められている』ことに安心した言葉だとわかります。

この後もジョーイの家でのシーンなど、お互いをピエロだと理解した上で見ると、違ったユニークさを発見できる映画ですね。

ぜひ、すぐに見返してみることをおすすめします!


◎あなたが感じるのはどっち??

これまでは、映画『ジョーイ』が温かい気持ちにさせてくれる作品だとお伝えしてきました。

確かにピエロも狭い世界で頑張って生きているんだと考えると、恐怖を与えるピエロの印象をとは一転して、同情できる鑑賞者も多くいるでしょう。

しかし、哲学的要素を加えるとまた面白さを感じるのがこの作品のもう一つの魅力。

本当に人間界にこのようなピエロが存在していたらどう思いますか?

もし、すれ違う人が人間になりすましたピエロだと想像したら・・・。
少しゾッとさせるような話になると思います。

ピエロの孤独や悲壮感、仲間がいることの温かさ、もし本当にピエロ界があったらと考えると芽生えるちょっとした恐怖。

この映画はいろんな視点で鑑賞することで、違った体験をすることができる、新たなピエロ映画ともいえるのではないでしょうか。

映画『ジョーイ』はSAMANSAで絶賛配信中です。

ぜひ、ご覧ください。

<映画ライター/ shuya>