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映画『i Mom』 ーあなたは未来の素晴らしさを見るか? それとも狂気を感じるか?

ここ最近を振り返ってみても、世界的に著しくなった科学の発達。一つ例を挙げるとすれば携帯電話。昔は大きかった電話機が、今ではスマートフォンと呼ばれる小さな機器に変化し、連絡や写真撮影だけではなく仕事までもこなせるようになりました。

さらに現在ではAIの機能が発達。世間では「人間が必要な仕事がいずれは無くなるのではないか?」と人間がAIに世界を支配されるのではないかとまで叫ばれていることも。

実は今、近未来に起こってもおかしくないリアルを感じさせる、一つのショート映画が話題に。その作品こそ『i Mom』です。

この映画で描かれている未来は、女性の代わりに母親として機能をするロボットの存在。最初はロボットを受け入れられなかった子どもでしたが、段々と愛着を感じていき・・・

果たして子育てAIロボットは人々を救うヒーローとなるのか、それとも人間の脅威となるのか、あなたもぜひこの目で確かめていただきたい。

今回は映画『i Mom』の魅力を紹介しています!


<作品時間> 13分36秒
<監督> Ariel Martin
<あらすじ>
ある母子家庭の家族。母親は、忙しいの原因で子どもに料理さえもしていない様子。そんな生活の中、子どものために母親が頼りにしていたのが、代わりに子育てをしてくれるAIロボット・i Mom。まるで人間のように普通に日常会話ができるのに加え、ダウンロードをすればどんなレシピの料理も作ることができる。一方で息子のサムは、このロボットの存在に嫌気がさしていた。
母親が仕事で外出をした後、i Momと二人っきりになるサム。ある出来事がきっかけとなり、サムも少しずつ心を許していくのだった・・・。一見すれば、非の打ち所がないがロボットに感じるが・・・真実は?

これは本当に未来を担う完璧なロボットか、それとも世界を悪い方向に変えてしまうのか・・・!?



◎いかにもあり得そう・・・ 未来を描く不思議な世界

近い未来、本当にこれが実際にあってもおかしくない」と思わせられる今回の作品。

その大きな理由の一つには、現在のAIの発達にあるでしょう。実際、現在でも極限に人間に近づけた会話のできるロボットは、度々話題になったりしています。

だからこそ抱かせられるちょっとした恐怖感。描写としても全体的にダークに描かれているのが特徴的です。

さらに妙なリアルさを感じさせるのが、何度も登場するi Momがテレビのニュースで取り上げられているシーン。

そこで発言されている言葉は

「親になることは簡単ではありません。」
「母親になる自信がありませんでした。」
「親になりには早すぎた、自分に母親が向いていない」

インタビューで取り上げられたこういった発言に、おそらくたくさんの人が共感できるのではないでしょうか。さらには・・・

「若い母親にとっては、好きな時に外出できるようになりたい」
「革命的で、支えてくれる人がいて本当に心強い」

ただAIの技術の発展に恐怖感を感じるだけではありません。

今でも抱える人々のリアルなニーズに、はっきりとマッチさせられたAIロボットだからこそ「近未来に起こるかもしれない」と思わせるところに素晴らしさを感じますね。


◎変化していく子どもの安心感

13分の中で大きく変化していくのが息子・サムとi Momとの関係性です。

最初は、サムが「料理がまずいし、アイツが嫌いだ」と一方的にi Momのことを軽蔑した目で接していました。

しかし、家が停電してしまった時にサムの気持ちは変わり始めます。

怖くなった時に、そばにいてくれたi Momを信頼したのか、安心したかのように暗闇で話を始めるサム。

とても印象的だったのが、サムがi Momの唇に口紅を塗りキスをするシーン。

冒頭の時点でロボットと認識はあるものの、母親と同様にキスを求める時点で接し方はもうすでに人間と同じ様子。

つい「子どもがAIロボットに育てられたら、どのように人間になるのか?」を考えさせられるような描写ですね。

子どもは素直だからこそ、最初から人間だ認識する可能性も。

「果たしてロボットから育った人間にどんな未来が待っているのか?」など、子ども視点から未来を考えさせられる印象深い一面です。


◎i Mom が発言する意味深な言葉の数々

この映画にはi Momが、息子サムとの会話で発言する意味深な言葉が散りばめられています。

その一つが「世界が木で、私が果実ならどんな世界になる?」といったセリフ。

この言葉に込められた思いは、作品の大きなメッセージが含められているのではないでしょうか。

果実は育てられて、木からたくさん生まれるもの。

これを、果実=ロボットと置き換えた時「この世界からAIロボット(i Mom)がどんどん増えていったらどうなると思う?」とも解釈することができますね。

まさに「ロボットが発展したら人間はどうなるのか? 本当に支配されてしまうのか?」と訴えられた、私たちがきっと今後取り組まなければならない強いメッセージ。

そして、もう一つ注目してほしいセリフが「狼と羊、あなたはどっち? 私はどちらでもない」です。

この言葉は、聖書における「羊の皮を被った狼」に基づいていると考えられます。

この言葉には「外見では親切に振る舞っているように見えていたとしても、内面は悪人のよう」といった意味があります。

また、キリスト教では「キリスト者が非キリスト者の世界に共存するのは、羊が狼の中にいることと同じだ」と伝えられているそう。

つまり『iMomは、良い人でも悪い人でもない』。

普段から親切な良いことをしても、仮に人を殺すような悪いことをしてしまっても、決して狼でも羊でもない。それは心のないただのロボットだから。ということでしょうか。

映画全体を振り返ってみても、言葉一言に強烈なメッセージを感じさせてくれる作品ですね。


◎ベビーベッドにあるチキンに隠された意味とは?

この映画の最後は、ベビーベッドに置かれたチキンで終わります。一体、映画全体を通してこのチキンは何を意味していたのでしょうか?

このチキンは、i Momを雇ったからこそ起こってしまう脅威的な結末を表しているのでした。

この真相を知るカギとなるのは、前半に母親が赤ちゃんにこぼした何気ないセリフにあります。

またね。私のかわいいチキンちゃん。

これをそばで聞いていたi Mom。実はこの時点でi Momが『赤ちゃんのことをチキン』と間違って認識していたことが考えられます。さらに、停電で少し狂ってしまうi Momのシムテム。

最後にチキンをベッドに置いた真相は『赤ちゃんをチキン』と認識してしまっていたから。

結末は描かれていませんが、赤ちゃんがi Momに誤って調理をされていたと考えるとなんとも恐ろしいロボット・・・。

上記でも述べたように、仮にそれが起きてしまったとしてもi Momは狼(悪者)ではありません。心のないロボットに過ぎませんからね。

一見、完璧に描かれたAIロボットに隠された驚くべき落とし穴。これこそ作品が伝えたい大きな警鐘かもしれません。


◎あなたが期待する未来はどっちか?

この映画を見て、あなたはi Momがいるような未来を期待しますか?

おそらく、これからも科学は急速に発展していくことが考えられます。私たちに『ロボットが一家に一台当たり前にある時代』は訪れるのでしょうか。

それとも『人間は人間が責任を持って育てる』といった上手くロボットを支配する未来が来るのか。

あなたが描きたい将来はどちらですか?

特に子育てを経験したことがある人、さらにはこれからの時代を担っていく若い世代の人には、ぜひ鑑賞していただきたい作品ですね。

映画『i Mom』はSAMANSAで絶賛配信中です!

今の時代だからこそ鑑賞して感じられる、ゾッとする感情を体験してみてください。

<映画ライター/ shuya>