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ーあなたは決して独りじゃない。ー 映画『ペラペラトーストとたっぷりバター』が伝えることは?

人生は何があるかわからないもの。長い人生の中で起こる変化は、決して緩やかなだけではなく、突然訪れることもあります。

あなたには、人生が変わったと思える経験がありますか?

それは一体どんな経験でしょうか。人生を変える出来事はたくさんあるでしょう。例えば友達に励ましてもらったり、普段から好きだった事・物に救われることもあります。

さらに、普段から目にしていることに限ったことでもありません。街を歩いていて、すれ違った人の何気ない一言に「はっ!」としたり、逆に嫌いな人から言われた一言だったり。

人生の中で変わるきっかけは、どこからやってくるのか検討がつかないものです。

もちろん映画も人の人生を変えることができる芸術の大きな一つ。

今そんな悩めるあなたに、大きなメッセージが込められた作品をご紹介します。その映画が『ペラペラトーストとたっぷりバター』です。

いじめにあって悩みを抱えている独りの少女を主人公に描いたヒューマンドラマ。

素直に、そしてストレートに込められた映画のメッセージからあなたも希望を感じてみてほしい。

映画の解説と一緒に、ぜひ作品の世界観に浸ってみてください。


<作品時間> 15分41秒
<監督> Paul Stainthorpe 
<あらすじ>
新しい学校に馴染むことができず、いじめがトラウマになってしまった少女・クロエ。いつもの朝、一緒に暮らす母親と祖父に心配をされるも相談できずにいた。

朝のルーティンで祖父とボードゲームをした後、悲しそうに祖父を抱きしめて出発するが、向かった先は学校ではなく橋。あまりの過酷さに耐えきれず、飛び降り自殺をしようと決意する。

しかしその様子に危険を察知し、突如現れた一人の女性・アリス。慌ててクロエを引き取めるのには特別な理由があった・・・



◎若者のいじめをストレートに描くヒューマンドラマ

長年、世界的にも問題になってしまう学校で発生するいじめ。SNSなどが急速に普及されて以降、いじめが増えたといっても過言ではありません。

まさにこの映画は、いじめを受けている人の姿をストレートに描いた作品でしょう。

その中でも特に共感させられるのは、いじめを受けていたとしても隠して学校へ行き続けようとするクロエの姿。

そこにはいろんな理由があるはず。決していじめを受けていたとしても学校を休んだら逆に心配される、さらにはいじめられていることを吐き出せないなど様々。

15分の映画の中で、何度も繰り返されるいじめのフラッシュバックはとても印象的。まさに、いじめを受けてしまっている人間の頭の中のようです。

それでもどうか生きる道を見つけ出そうと、何事もなかったかのように学校に行こうとする描写。クロエの深刻な姿を感じながらも、はっきりと口に出せない母親と祖父の表情。

誰もが『いじめは最悪なこと』だとわかりながらも、簡単には口に出せないリアルな空気感には胸が締め付けられるのではないでしょうか。


◎突然現れた救いの女性

まさに希望を失ってはいけないことを教えてくれる、クロエにとっては人生の転機ともなる出来事。

自殺を試みた橋に突如現れた女性・アリス。クロエにとっては見知らぬ人ではありましたが、初めて現状を打ち明けることができた人でした。

大切なことや自分が持っている秘密などは、関係が親密な人に話したいと思うもの。

しかし、お互いの関係性を知っているからこそ伝えきれないことだったり、言いたくないこともあるということ。

アリスが言ったこのセリフはとても深いです。

「学んで、育って、強くなるの。そして、それができないと思った時は周りの人に頼るのよ」

「信じて。あなたがわからなくてもみんなあなたの味方よ。私はあなたに会ったばっかりで、あなたのそばにいるわ。」

おそらくクロエは、アリスだったからこそ打ち明けることができたのではないでしょうか。

そして、話を進めると明らかになるアリスの過去。それは、アリス自身もこの橋から飛び降りようとした経験があるということですね。

アリス自身も同じ橋で自殺をしようと思った経験があるからこそ、クロエに救いの手を差し伸べたと考えられます。

同じ経験をしていなければ、素通りしていた可能性もあるわけですから。

そのように考えると、クロエがアリスに出会ったのも決して偶然ではないのかもしれません。


◎果たして本当に自殺をしたかった? 彼女が求めていたこと

橋の上から飛び降りようとしたクロエ。
果たして本当に自殺しようとしていたのでしょうか?

おそらく、誰かが救ってくれるのを期待していたとも考えられます。

実際、橋の上にたどり着くまでのシーンでクロエが助けを求めた仕草がありました。

わかりやすく表現されていたのが、祖父とのやりとりに隠されています。

いつものように出発するはずだったクロエが、わざわざ祖父を抱きしめたこと。さらには、ボードゲームに「HOPELESS」とメッセージを残したこと。

心の底では「いじめから解放されたい!」と叫んでいたのではないでしょうか。

これは現実世界でもあり得ること。素直になれない子どもたちは、上手く吐き出せずともクロエのように行動というサインで訴えることもあるはず。

いじめから解放されて生きたいと思うからこそ芽生える葛藤。だからこそ生まれる彼女の何気ない行動にも注目していただきたいです。

◎必ず救ってくれる人は現れる。そして目の前の人の大切さ

『灯台下暗し』ということわざがあります。この言葉は『人は身近なことに案外気づかない』という意味です。

人は欲の深い生き物ですから、常に何か新しいものを求めてしまうもの。そして何かを失ってしまった時、失ってしまった物のありがたみを感じて後悔をしてしまう。

この映画では、今ある日常や家族、友達を大切にしてほしいというメッセージもあるような気がします。

アリスに人生を救われ、再び家に帰って祖父と会うクロエ。

最初にクロエが起こした行動は、いつものように『たっぷりのバターでペラペラのトーストを作ること』でした。

あなたを救ってくれる人は必ず目の前に現れる。そしてあなたを愛してくれている人はもう目の前にいる。

そんなあなたの周りにいる人を大切にしてほしいと伝えている最後のクロエのシーンですね。


◎エンディングに込められたメッセージの意味

映画の最後に残されたメッセージ「希望」という言葉。

そして最後には「すべての人に捧げます。一人で苦しまないで。会話をしましょう。決して希望を失わないで。」とありました。

これだけ、飾らないストレートなメッセージには心を動かされる人も多いことでしょう。

実は意外なことに『会話をすること』はとても大切な言葉です。

余談にはなりますが、実は筆者も心の病気を患ったことがある張本人。その時大切にしてほしいと言われていたのが、今回の映画のテーマともなっている『会話』でした。

実は会話をすることで、反芻思考に陥って気持ちの落ち込みを防ぐ効果があるといわれていることも。

勇気を持って口に出すことも、そして相手のサインに気づいてあげることの重要さを作品が教えてくれています。

必ず誰かが手を差し伸べてくれる。信じることの大切さを感じさせてくれる映画「ペラペラトーストとたっぷりバター」は絶賛SAMANSAで配信中です!

絶対にあなたは独りじゃない。

人間関係など、何か人生でうまくいかないとネガティブな時にピッタリな作品。人間の生きる強さを肌で感じてみてください。


<映画ライター/ shuya>