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仄暗い部屋にピストルはまだ鳴らない。

               「静寂」
                     23 × 16.5 ㎝   油絵具 / テンペラ乳剤混成 板   2021

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夜は五感をたたみこみ。探偵小説は読み終えました。もう誰も来ることはないのです。「ねえ君、牛乳のむ?」 ピストルが鳴るまでの沈んだながぁい静寂のひまに。

稲垣足穂の「一千一秒物語」を読んだ時、おもわず「なんだこりゃ!」とひとり呻いたのでした。  ショートショートよりも短いと想われる超短編(掌編?)が70編(改訂版)収録されているものなのですが、読めば読むほどそのキテレツさに再び「なんだこりゃ!」なのです。異次元の玉手箱からブリキやセルロイドのおもちゃやらビー玉やらバネ仕掛けゼンマイ仕掛けの人形やらがごちゃごちゃと賑やかに飛び出してきたような。                                簡単に言うと月や星が登場しそれらがドタバタ劇を繰り広げるのですが、どこか洒落ていて妙な魅力を感じるのです。調べてみると1923年に初版が出ているのですが、この当時一体どんな風に受け止められたのでしょうか。  抽象的でメタリックで体温は感じないのですがほのかに毒をはらんでいるようにも想うのです。その毒の味はというと、やはりこれはあまい毒かな・・・。

まるでヒエロニムス・ボッシュ(ボス)の「快楽の園」やジョゼッペ・アルチンボルドの寄せ絵の肖像画を観るような。珍奇な美?

コアなひと達はこの作家を「タルホ」と呼ぶようですがこの異端、異才のひとは少年愛論の先駆者でもあるらしい。




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