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『下午のまち銭湯』㉑富久の湯(入谷)

台東区のまち銭湯で朝風呂

銭湯は昼下がりに行くに限るが、たまに午前中に入りたかったりする。
とはいえ銭湯は大体15時開店だったりするので、そういう時はスーパー銭湯かサウナに行ったりする。

都内には数が少ないが、朝風呂を提供してくれる銭湯が存在する。代表的なのが上野にある燕湯でここはその外観もあって東京銭湯の中でもかなりファンがいる湯場。

 某日上野浅草あたりで9:00頃行動中。そうだ燕湯で風呂に入っていこうと思ったけれど、微妙に距離がある。歩いていけるだろうか?と地図アプリを開くと近くに別の銭湯が表示された。富久の湯。しかも営業中になっている。スーパー銭湯かな?と確認してみるとなんとまち銭湯。へぇ、燕湯みたいに朝やってる銭湯がここにもあったんだ。ならここで良いじゃないか。

場所は台東区入谷駅の近く。上野、浅草、千住のホントに中間点といった立地。このあたりは下町銭湯群雄割拠地。南は浅草橋弁天湯から北は南千住改正湯までまんべんなく点在している。特に浅草寺より北のこのエリアには集中している感じでちょっと歩くとすぐ銭湯に行ける。最近評判の良い「湯どんぶり栄湯」「ひだまりの泉萩の湯」もこのエリアの銭湯だ。これは期待値が上がる。

入谷駅側から千住側に歩いていく。大通りから中に入ると入り組んだ路地に中小のオフィスビルが立ち並ぶ。国際通りに出る直前のビル群に紛れてふいにその銭湯は現れた。

富久の湯

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ビルの一階部分にある。黒い木目の壁で塗装されていてなんとゆうか新装開店のラーメン屋というか見た目はオサレ系。これは今風のリノベ銭湯かな。
中に入ると下駄箱がある。この下駄箱は年代式のプラスチック札型
扉の開けるとフロント番台がある。ロビーは一昔前の応接室といった雰囲気で奥に鷹の木彫り像が置いてある。

脱衣場にはいると・・・あれ・・・あれれ。違う。思ってたのと違う。
外観は今風の銭湯だったので当然内観も流行りのデザイナーズ的なものかと思っていたのだけどはいい意味で古めかしい。昔ながらの銭湯のそれだったので妙に安心してしまった。

天井には空気循環用の大きな扇風機がついている。奥には黒いフェイクレザーのソファーとマッサージチェア。昔ながらの例のあの体重計があって隣にはぶら下がり健康機もある。昭和感ある。
片側の壁にロッカーが積んである。赤褐色の非常に綺麗な色合い。鍵は松竹鍵でヘアゴムがついてるまち銭湯仕様。ロッカー横に姿見もある。

ロッカーは大きめで余裕がある。脱衣場にはBGMでボサノバが流れていた。朝だからかな?この時間なら演歌よりこっちのがあってる。喫茶店のモーニングなムード。いいな~。

服を脱いで浴場にGO。時間は9時20分。朝営業は6:00~10:00まで。閉店時間が迫っている。ちゃっちゃと入ろう。

浴場も年季の入ったまち銭湯。白いタイルにカランが縦に並んでいる。カランの数は25か所。仕切り壁があって隣の女子浴場とは空間共有ケロリンの黄桶を手に取り真ん中付近のカランに移動。午前の閉店間際なので客はぼくも含めて3人しかいない。

カランにはシャワーがついているのだけど、壁から直接出ているやつがあったりホースがついてるのがあったりバラバラ。この統一感がない感じが良い。カランの湯は少し熱め

身体の清拭が済んだので湯に入ろう。正面壁側に3つの浴槽が並列している。3つとも白湯で一番右側が深風呂仕様。

真ん中の白湯から浸かる。しゃぽん。足挿入。
あああ~。染みる。固く凝り固まった朝の体に銭湯の湯がじわ~と浸透していってほぐされていくのがわかる。温度は適温。でも温度計を見ると45℃になっている。そんなにあるかな?午前中は体がまだ寝ぼけていて温度感度が鈍い。燕湯の朝風呂に行った時もあの強烈な熱風呂の浴槽にはいってもなぜか全然熱く感じなかったりする。だからこれももしかしたら本当はちゃんと熱いのかもしれない。

壁はモザイクのタイル絵。浴槽後ろの壁は和風の湖畔。カランの壁には洋風の湖畔。上を見上げると青ドームに天窓。日のある時間に銭湯にくる理由。天窓から差し込む光がこの天井を照らして青空に見えるんだ。露天じゃないのに露天気分を味わえる。この青ドーム仕様の湯気抜きもめっきり減ってきたなぁと感じる。

白湯には2基のジェットバスがついていてしっかり強力。後ろの壁にいろいろお知らせが貼ってあるの見てみる。何々・・・ヨガ。この銭湯ビルの屋上でヨガ教室をやっているらしい。隣にはボクシング。これまた屋上でボクシング教室をやっているらしい。その隣にはランニングイベントの告知がある。朝ジョギングしてここで汗を流そうみたいなイベントらしい。なんかスポーツジムのお知らせみたいになってる。

その横にパパママの湯なるイベントのお知らせが貼ってある。読んでみる。午後の開店前の時間を利用して小さな子連れのお客さん限定で入浴できる時間帯があるようだ。周りのお客さんを気にせず入れますよというイベント。
これはいいなと思う。こどもは銭湯に来るとはしゃいで走ったりするし、甲高い叫び声は銭湯だとよく響くから。自分の子供時代を思い返してみてもたまにしかいかない銭湯って楽しいから騒いじゃうんだよね。昔はそういうのを銭湯のヌシみたいなおやじが「こら!」って叱ってけど、今の時代はそれやっちゃうと逆におこられたりするのでほっとくしかない。だからこういうイベントはすごくいいと思う。子供の料金は無料になるらしい。

隣の浴槽に行ってみる。この浴槽はなんだろう。薬湯でもない。もう片方の浴槽のように深風呂というわけでもない。手を付けてみる。温度は一緒。熱風呂ってわけでもないのか。かべを見てみると蛇口から水を足せますよとかいてある。なるほどこの浴槽だけぬるく調整できますよということか。

銭湯に行き慣れてしまうともう全く気にならないのだが、サウナやスーパー銭湯に比べるとまち銭湯の湯は確かに熱い。水で埋めたいなと思うこともあると思うが、沿っては絶対にやってはいけないマナーなのだ。でもここはじゃんじゃんできますというね。とりあえず入湯する。別に水で調整するつもりはないので全く同じ。ただ移動しただけだった。

一度カランに戻ってデコ飲み水浴びをして体をクールダウン、深風呂に移動。もう一度身体をじわっと温める。いいお湯。ずっと浸かっていたい。脱衣場に店員が入ってきていろいろ作業しているのが見える。ああそうか・・・閉店の時間か。ざばっと浴槽から出る。

脱衣場に戻り服を着る。髪を乾かす。ドライヤーは無料で使える。時計を見るとちょうど10時になろうとしてる。さっと入ってさっと出る。これはこれでいいんだよなぁ。

体が火照って気持ちいい。今日はなんだかいい一日になりそうな気分だ。午前の湯もいい。いい朝風呂スポットを見つけた。今後は燕湯ではなくこっちに来ることも増えそうだな。見た目は新しく中身は古風。ギャップ萌え。この感覚にセンスの良さを感じた実によい銭湯であった。

銭湯の詳細

富久の湯』[所在地]台東区千束[最寄り駅]日比谷線「入谷」駅下車徒歩10分[営業時間]月曜15:45−23:30、火~土曜6:00−10:00/15:45−23:30、日曜15:45−22:30 [定休日]不定休[入浴料]500円[ドライヤー]0円




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