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【映画の感想】スモーク(1995 アメリカ)


ウェイン・ワン監督、ポール・オースター脚本、主演はハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハート、1995年公開のアメリカ映画。フォレスト・ウィテカーが脇を固める。第45回ベルリン国際映画祭審査員特別賞受賞作品。

ざっくりと

舞台は1990年、ブルックリン。
毎日同じ場所で同じアングルの写真を撮りつづけるタバコ屋のオヤジ(ハーヴェイ・カイテル)、店の客で妻を強盗事件でなくした小説家(ウィリアム・ハート)、そして父親が蒸発した少年(ハロルド・ペリノー・ジュニア)、それぞれの生が「縁」によって交差する、機知に富んだ人情味あふれるオムニバス風の物語。
親子の情愛、ろくでなしの業、大人の友情、どれもくどくない。さらりと流れる。レビューを覗くと、肯定的な評価をしている人はおおむね温かい話だと捉えているよう。ぽっかぽかというよりは、ジーンとくる感じかと。


ロッテントマト

SMOKE
R 1995, Drama, 1h 52m
88%
TOMATOMETER
33 Reviews
89%
AUDIENCE SCORE
10,000+ Ratings


感想

冒頭、煙の「重さ」は量ることができるというエピソードが語られるが、まことに暗示的。この世界が言葉によって分節化され初めて「有る」ように、煙の重さもまた、言葉によって、機知によって初めて「有る」。
ハーヴェイ・カイテル演じるタバコ屋のオヤジは、十年以上、毎日同じ時刻に、同じ街角の写真を撮っているが、同じ写真は一枚もないという。不変なものなどない。「有る」ものはみな移ろう。
大きな事件は起こらないし、悪人は出てこないわけではないが、善人も特異な才能ある人物も出てこない、下町の日常が描かれている。良質なクリスマス映画といってもいいですが、本当か嘘かわからない、真実は曖昧な挿話があったり、写真の話といい、無常と空を感じる映画です。実在とは現象かも知れない。
劇中流れるトム・ウェイツもいい。
誰にでもおすすめしたい。