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代表作と好きな本

読書

作家を紹介するのに代表作を挙げるのは普通だが
それならその代表作が多くの人に好まれているかと言うと
まあおそらくは好まれているとは思うがその人その人がその作家の作品で一番好きな作品がその代表作かと言うとそうでもないと思う。

例えば藤沢周平
藤沢周平と言えば「蝉しぐれ」とくるのだが
私の一番好きなのは短編集の「橋ものがたり」である。
江戸の市井の人々の暮らしや子どものいじらしさが細やかに描かれていて
そうとは書いていなくとも
江戸時代の夜の暗さや家の中の匂いや感触が感じられるのである。

例えばアストリッド・リンドグレーン
リンドグレーンと言えば「長くつ下のピッピ」とくるのだが
私の一番すきなのは「やかまし村の子どもたち」である。
やかまし村という、村と言ってもたった3軒の農家であるが
そこの子ども達を中心に、村での日常やちょっと変わった日の出来事が
それぞれ生き生きと描かれている。

例えばアガサ・クリスティー
クリスティーと言えば「オリエント急行殺人事件」や
「そして誰もいなくなった」
なのだが
私の一番好きなのは「パーカーパインの事件簿」である。
短編集で、人の心の機微をよく知るパーカーパイン氏のお悩み相談が
まるで世話物のようで、人生とは日常の積み重ねである、としみじみする。
あ、もう一つ、こちらも短編集の「死の猟犬」である。
こちらは生まれ変わりや交霊術も出てくる不思議の世界で
まさにミステリー。
ええっと、一番が2冊あったっていいじゃないか ♪

こうしてみると私は短編が好きという事になるのだが
たぶんこれでもかとすべてを書き尽くさないところが好きなのだ。
前後に想像の余地がある、という事だろう。

あ、もちろん長くて「これでもか」という濃密な小説も好きでこちらは今の所「その女アレックス」が最高得点をたたき出していてこの小説の重さと濃度と深さとともに「そうくるか」というどんでん返しを一度ならず三度くらってひっくり返ったところで一気に収斂するというこれはちょと他の追随を許さないのでは-あっ、要するにそう思いつつもこの作家ピエール・ルメートルの他の小説をまだ読んでいないので何とも言えない。

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