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「ものづくり」と「産業」

第8講は、カットソーに関する講義です。
講師は丸編み生地工場の現場経験・営業経験を経て、現在ulcloworksの代表として生地の企画生産から製品まで、カットソーを中心に携わる山本さんです。

レポート担当はデザイナーアシスタントからOEMメーカー営業生産を経て、現在迷走中の田中です。

講義は「そもそもカット(裁断)してソー(縫う)するなら服って全部カットソーになるのでは?」という素朴すぎる疑問を切り口に、カットソーとは、そしてそれらを構成する丸編みとは何なのかというテーマからスタート。

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布帛(織物)は織られた一枚の布を裁断して縫うプロセスを前提で作られるのに対し、ニット(編物)は糸を編んで服にする事が前提になっているもの。そんなニット生地を裁断して縫製するからわざわざ「カットソー」と呼称するというややこしいことになっているのですね。

そして、前回学んだセーターのようなニットに用いられる横編みとは違う、カットソー製品の素材となる丸編みの生地とは何なのか。手編みのように横方向に往復して編んでいくものとは違い、円状の編み機に数十本の糸を引き込み、ベラ針と呼ばれるかぎ針で互いに絡ませ合いながら螺旋状に繋げて編み上げ、最終的には筒状の生地が編み上がり、それを切り開いて平面上にする、というものになっているそうです。

その後も丸編み生地特有の問題点、丸編機の構造に関する技術的なこと、丸編み生地の組織の解説など知識的にも構造的にも複雑で濃い内容でしたが、軽妙に小ネタの笑いも挟みつつ噛み砕いて講義して下さった山本さん。レポートを書くにあたって、自分のとったノートを見返したら頭が痛くなってきて、さらにこれを日常的に仕事でこなす山本さんや職人の方々のことを思うと、自然とプロフェッショナルの曲(山本さん推奨BGM)も流れてくるってものですね・・・。

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後半では、丸編み工場の現場経験や現在関わる産地を俯瞰し、山本さんならではの目線でアパレルメーカーと産地の工場や職人の方々との関わり方、そして現状の問題点を提起するような、「産地の学校」としてより踏み込んだ内容に。

かつての商流から現在のアパレル産業のシステムへと変化していく中で生まれた歪や、原料から売り場までそれぞれの感覚のギャップに起因する軋轢など、具体例を交えたディープなお話をお聞きすることができました。

問題の一つとして挙げられていた「中間メーカー」としてアパレル産業の流れに関わっていた身としても、直視せざるを得ない問題、新しい視点を持つこと、それぞれが変わっていくこと、産業全体のより良いサイクルとは何か、山本さんの視点を通して自分自身でも考えていきたいテーマが発見できました。

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ご自身のルーツであるカットソーを起点に、アパレル産業全体の繁栄を考えて活動されている山本さんならではの、ものづくりと産業の両面から切り込む興味深い講義をありがとうございました!

このレポートで興味を持っていただけた方がいらっしゃれば、山本さんのnoteulcloworksのコラムを読んでいただけるとその知識と思考の一部、そして人柄を感じることができると思います。

田中

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