超短編小説「ぼくの友達は、あしたにはふつうではない」
「ごめん、耳が聞こえずらくなった」
わからない。
「だから、昨日電話出れなかったんよ。ほんまにごめんな。お願いやねんけど、周りの子には言わんといてくれる?」
やっぱり、わからない。
ぼくの理解力が足りないのだろうか?いや、想像力なのか?いや、なにか情報や知識が足りていないのか?いや、そもそも”ごめん”ってなんだよ。悲しみでもなく、なぜか怒りだけが表層する。いやだ。
本当は分かっているんだ。
想像だにしていなかった”現実”を目の当たりにして、あたふたしているだけなのだ。ビビりなのだ。怖いのだ。同じように、彼女も弱い。
面と向き合って会話することがタブー視されているコロナ禍の昨今では、コミュニケーションはもっぱら”リモート”、つまり人間と人間を映像と音声で繋げるシステムを採用している。だから、なにも考えずに「みんなと電話するから、来週の日曜日の20時にオンラインのおいでや」と彼女に言ってしまった。
余談にはなるが、現在の彼女は恋人ではない。
「付き合っているわけねぇーだろ」とも「好きじゃねぇーよ」とも、マイケル(生粋の日本人で、あだ名である)やけいに散々言われてきた。鬱陶しい。そう思っているすら、本当なのかもわからない。彼女のことを好きなんだろうか。ぼくはいつも、「なにを考えているかわからない」だから、自分が怖い。
話を戻そう。ぼくは彼女を傷つけたかもしれない。いや、傷つけたと思って生きるべきだろう。愛は他者から注がれるものだけれども、傷は自らで癒すしかない。だから、人を傷つけてはいけない。
『傷は愛では埋まらない』
これが絶対に正しいかわからない。でもね、悪い考えだとは思わない。
「私は全然大丈夫だから」
そう彼女にいわせたら、なぜか負けだと思っている。だから、彼女をいい意味で愛せるようにー。
「がんばってね」
以上、未完全短編小説「ぼくの友達は、あしたにはふつうではない」でした。
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