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日本製鉄のUSスチール買収について

昨年、国内鉄鋼最大手の日本製鉄が、アメリカの老舗鉄鋼会社であるUSスチールを約2兆円で買収するという報道がありました。

日本の会社がアメリカの有名な会社を買収すること、
買収金額が2兆円と大きいこと、
とても驚きました。
鉄鋼業界は再編に次ぐ再編を続けていますが、日本国内だけではもう無理だということなのでしょう。中国やインドの企業に太刀打ちするには日米でタッグを組むしかないということだと思いました。

しかし今年に入り、アメリカ大統領選に共和党から出馬するトランプ前大統領が、この合併に対して「No」と言いました。
それにつられるかたちで現職のバイデン大統領も合併に対して否定的な声明を出しました。
今年はアメリカ大統領選の年です。
「もしトラ」などと言われていますが、もしもトランプ氏が大統領選で勝利した場合は、政治も経済も安全保障も大きく動くことが予想されています。
アメリカ第一を掲げ、アメリカが利益を出さない取引や関係性はとことん否定するのがトランプ氏のやり方です。
そのやり方からすれば、日本製鉄がUSスチールを買収することに反対するのは当然なのかもしれません。

では、今の鉄鋼業界はどのような勢力図なのか。
数字をもとに考えてみましょう。

2022年の世界粗鋼生産ランキングは以下の通りです。

1位 中国宝武鋼鉄集団(中国)   13,284万トン
2位 アルセロール・ミタル(ルクセンブルク)6,889万トン
3位 鞍山鋼鉄集団(中国)       5,565万トン
4位 日本製鉄(日本)        4,437万トン
5位 江蘇沙鋼集団(中国)      4,145万トン
6位 HBS(中国)         4,100万トン
7位 POSCO(韓国)       3,864万トン
8位 建龍集団(中国)        3,656万トン
・・・
16位 ニューコア(アメリカ)       2,060万トン
22位 クリーブランドクリフス(アメリカ) 1,680万トン
27位 USスチール(アメリカ)      1,449万トン

このランキングを見て、皆さんどう思われるでしょうか。
たぶん、同じような意見を持つと思います。

・中国企業が上位を占めているんだな
・1位の中国企業は2位にダブルスコアをつけての圧勝なんだな
・日本製鉄は世界4位でがんばっているんだな
・USスチールは世界1位企業の1/10しか生産していないんだな
・USスチールはアメリカ国内でも3番手なんだな

このような感想でしょうか。

そうです。USスチールはアメリカ国内においてもトップ企業ではないのです。そして、日本製鉄がUSスチールを買収しても、2位と3位の間にかろうじて入るだけ。1位を狙うことはまだまだ難しい状況です。

アメリカ国内1位の企業ならばまだしも、3位の企業に前職と現職の大統領が声を上げる。これが今のアメリカの実情なのだと思います。
自動車のGMが労働者によるストライキをした時もそうでした。トランプ氏、バイデン氏ともに労働者側に立ちました。アメリカを守ることが労働者を守ることにつながっています。
コロナが明け、NYダウが最高値を更新し、物価も安定的に上昇し、失業率も低位で安定しているアメリカ経済。
一見、好景気が続いているように見えますが、実際はコロナによる景気低迷の対策のために世界各国が未曽有の財政支出を行い、その結果、お金がだぶつき、その資金が株式市場や一部富裕層に流れているだけなのかもしれません。

アメリカのプライドとして、USスチールやゼネラル・モーターズやゼネラル・エレクトロニクスなどの昔ながらの企業を何としても守るという思いもあるのでしょう。
しかし、そんなアメリカに世界の平和が左右されると考えると、なかなかややこしいなと一個人としては考えてしまいます。

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