寒川拓郎

TVでデレクターをやっています、さんがわと申します。

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最近の記事

「新テレビ学講義」を読んで 〜「人材」と「見てほしさ」〜

P165では「作り手の人材の多様性」について述べられている。 「作り手たち」自体に多様性があることが、多様性のある番組を作ることができるということである。 テレビ創世記はさまざまな業界からテレビ業界に飛び込む人が多かったのかもしれないが、現代においては、テレビ好きがテレビ業界に憧れてテレビ業界に入り、テレビを作る技術を身につけていき、 テレビっぽいテレビを作っていくことで満足したり、憧れの出演者さんと一緒に仕事ができることの楽しさで留まってしまう人もいるし、その気持ちもわか

    • 一穂ミチさん「光のとこにいてね」 おもろすぎ

      一穂ミチさんの小説、「光のとこにいてね」が良すぎました。 僕が過去に読んだ著者の、「パラソルにパラシュート」は、僕が芸人とルームシェアしてたから面白かったんかなと、 「砂嵐に星屑」は、僕がテレビ局に勤めてるから面白かったんかなと、 「スモールワールズ」は、僕がミステリー好きやから面白かったんかなと、 色々理由を考えながら楽しく読ませていただきましたが、 昨年11月発売の直木賞候補作「光のとこにいてね」が、 シンプルにめちゃくちゃ1番面白かったです。 恋愛でもない、友達との距

      • 「新テレビ学講義」を読んで 〜第一章〜数十年前から改善されない問題点

        第一章では様々な視点からテレビ界がこれまでどのような問題を抱えてきて、どうやってそれを乗り越えてきたかを分析し、記している。 中には50年以上前から存在する問題が、現在のテレビ制作現場でも同じように解決しきれずに残っているものも見受けられる。 時代によって扱いが少しずつ変化している「視聴率」の存在による弊害や、「テレビ局」という会社組織がものづくりをしているというシステムの弊害による問題点。 それらを「送り手」であるテレビ局内部の編成部署、「作り手」である制作部署の存在、

        • 「新テレビ学講義」を読んで 〜第一章〜 番組制作の無力感の根源

          テレビ研究の歴史について語っている第一章。 分析はまだ1960年代。 藤竹暁による「テレビの組織研究」などを網羅した「送り手」論を、1969年に出版された「テレビの理論」などの出版物から引用し、分析している。 その中で私が気になった点を挙げる。 P71より引用 視聴率についての最大の問題は、すべての人が平等に貴重な一票として数えられる点である。だから、誰一人としておろそかにすることはできない。 こうして誰にたいしても、ものわかりのよさ、面白さ、を売ろうとすることが、逆に、す

        「新テレビ学講義」を読んで 〜「人材」と「見てほしさ」〜

        • 一穂ミチさん「光のとこにいてね」 おもろすぎ

        • 「新テレビ学講義」を読んで 〜第一章〜数十年前から改善されない問題点

        • 「新テレビ学講義」を読んで 〜第一章〜 番組制作の無力感の根源

          「新テレビ学講義」を読んで 〜第一章〜 視聴率の強迫観念

          新テレビ学講義を読んだまとめと感想。 第1章 「テレビ研究は何ができて、何ができていないか」の序盤。 これまでの海外と日本のテレビ研究において、どういう分析がなされてきて、どの部分が足りないために業界に改革を起こすような芯を食った実用的な論文が存在しないのか、を様々な引用をもとに記している。 中でも私がより気になった過去の研究の例を挙げたい。 P63より引用 『企業ニーズの複雑な流れにおいて、視聴率は科学的で機械的な機能以上の効果を発揮する。例えば、トッド・ギトリンは1

          「新テレビ学講義」を読んで 〜第一章〜 視聴率の強迫観念

          「新テレビ学講義」を読んで 〜序章〜

          『新テレビ学講義 松井英光著』の引用と感想。 第一章の前に序章「なぜ海外情報バラエティーばかりに?」。 基本的には昨日概要で書いたこの本の目的を中心に記載されているのだが、加えて気になった点を抜粋したい。 なぜ今のテレビは面白くないと言われるのか、どうすれば面白くなるのか、という命題である。 以下、原文抜粋 『いくらデジタル技術による多チャンネル化で番組数が増えたとしても、「最大公約数」的な類似企画や一部の人気出演者への集中が横行すれば、それは決して「多様性」が確保さ

          「新テレビ学講義」を読んで 〜序章〜

          新テレビ学講義を読んで 〜概要〜

          「新テレビ学講義」という本を購入し、読み始めた。 言葉が難しくてなかなか頭に入っていかないので簡単な言葉にまとめて感想と併せてnoteにメモしていこうと思う。 分厚い本でこれを読み終えて感想を書き終えるのには少し時間がかかりそうなので、読み終えた頃にはテレビマンとして成長し、自身の企画や編集に生かせることを取り入れ、最終的にテレビの未来に希望を持てればと思う。 まだ第一章までしか読んでいないので、まず今日はこの本がどういう本なのか、概要だけ記す。 著者は松井英光さんという方

          新テレビ学講義を読んで 〜概要〜

          仮説②ZiDolはSMAPである

          新曲が素晴らしかった。アイドルとしての幅が格段に広がっていた。 これまでは、いちアイドルとしてアイドル界に参戦している感じだったが、「today is まにまに」でいつの間にか王道アイドルのド真ん中に急に踊り出ていた。 ここでまたある仮説が立った。 ZiDolはSMAPなのではないだろうか。 ZiDolのメンバーといえば、最近はそれぞれのコンビとしての仕事がうまくいっていたり、賞レースで結果を残している。 私は、それもZiDolという支柱が根幹にあるからこそなのだと思う

          仮説②ZiDolはSMAPである

          仮説①ZiDolは侍ジャパンである

          あの5人のメンバーを最初に見た時は、「全然アイドルっぽくない人も混ざってるし、どういう人選なんだろう」と少し疑問を抱いた。 しかし、その理由が今回の合宿、ワンマンライブで強く浮かび上がってきた。 全ては考えに考え抜かれて集められた5人なのである。 ZiDolは、オールスターではなくWBCにおける侍ジャパンなのである。 人気者を集めたお祭りではなく、世界に通用する最も強いチームを作る上で、本当に勝つために必要な重要な要素を満たしているのである。 全員4番打者だけを並べるのが

          仮説①ZiDolは侍ジャパンである

          the idolの社会学

          果たしてthe idolは「YouTube」なのか。 現在の発信媒体がYouTubeなだけで、テレビが買ってテレビで流せばテレビ、配給会社がついて映画館で流せば映画、Netflixが買ってNetflixで流せばNetflixなのである。 よって、the idolは「事実」でしかないのである。 乱立する映像の世紀に、媒体の概念を越えた「事実」として我々はthe idolを目の当たりにしているのである。 テレビ番組の制作を生業としている私から見て今回のthe idolには心を打

          the idolの社会学

          パチンコ台とテレビの社会学

          パチンコ台の題材が、一つも興味があるものがない。 エヴァもガンダムも北斗の拳も上の世代のものだし、他のアニメも見たことがないものばかりで、全く演出のアニメーションを見てみたいと思わない。 もしも、 パチンコMr.FULLSWING、パチンコ世紀末リーダー伝たけし、パチンコ金色のガッシュ、パチンコうえきの法則、パチンコPASSPO☆などがあれば間違いなく僕は興味を持って打ちに行くのである。 だがそんなことは関係なく、入り口はどうであれパチンコの本質の面白さ(ギャンブル的な面

          パチンコ台とテレビの社会学

          社会学の社会学

          タイトルに社会学とつけているのはなぜかというと、社会学という概念が好きだからである。 社会学とは何なのかを聞かれても、定義は非常に難しく、社会学者によっても曖昧なものなのだ。 社会で起こっている事象について分析して研究すれば社会学を言わざるを得ない。 そして逆に、これは社会学ではない、というのも非常に難しいことなのである。 単なる感想、批判、疑問も社会学とは呼べないにしても、社会学の種ではあるのである。 社会学を大学で学ぶ価値とは、「何でもないことを学問的に考える思考」

          社会学の社会学

          noteの社会学

          noteというサイトを使い始めて気づいたことがある。 楽しい。 何が最も楽しさを生み出す要因となっているかは簡単である。 下書きを保存した時に出てくる、 執筆お疲れ様です。 執筆が進んだら軽く休憩してみましょう。 である。 しかも様々な労いのパターンがあるのだ。 また会えるのが楽しみです。 なんて恋の予感みたいな言葉まである。 僕はこれを脳内で出版社の編集部の綺麗な女性の声で再生している。 実際にそんな悠長なことを言っている編集者はいないだろうが。 僕の普段の仕事

          noteの社会学

          ラヴィットの社会学

          ラヴィットを見ていると大声で笑ってしまう。 スタジオで面白いボケやツッコミがあって笑うというのもあるが、それにしても他のバラエティではありえないぐらい家で声を出して笑ってしまっていることに気がついた。 それは、テレビの収録をその場で見ているかのような感覚に陥っているからである。 演者さんのテンションが上がるように笑う、微妙な間を埋めるために笑う、多少スベっていても次の人がボケやすいように笑うという職業病のせいで、見ていると2時間笑い続けてしまうのである。 視聴者の方々も

          ラヴィットの社会学

          幸福度の社会学

          幸福度研究に関する記事をよく読む。 大学時代からどうしたら幸せになれるかは非常に興味があった。 一生懸命勉強していい大学に入っていい企業に入って一生懸命働いて、たくさんお金をもらっても一定以上の収入になると幸福は増えないことが社会学では常識として語られていたので、じゃあどうしたらええねんと思い始めたのがきっかけである。 日々どうすれば幸せになれるかを考えても、結局一番幸せそうなのは、何も考えてないやつなのである。 僕らはそれを「割に合わん」と言っていて、20歳の頃から30歳

          幸福度の社会学