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矛盾2.0

今は昔、古代中国にSOという国があったのを、みなさんはおそらくご存知ないだろう。いきなりネタバレから始まって恐縮だが、このSOという国は高度に文明を発達させた挙句、紀元前五百年ごろに滅亡してしまったという。

最新の考古学的研究成果によると、なんとこのSOは今から約三千年前、既にいわゆる“シンギュラリティ”というやつに到達していたという!人工智能がSO人たちの知能を超え、ありとあらゆる生産やサービスが機械とアルゴリズムによって代替された結果、SO人たちはついに労働の十字架から解放されたのだ。

その証拠にSOの遺跡からは、ベーシック・インカムとして現金とともに支給されたといわれる、大量の矛と盾が出土している。労働時間という概念が氷解し、暇をもてあまし出したSO人たちは、やることもないから遊び半分で矛と盾をメルカリ?に出品し始め、それがいつしかブームになったという。商品説明文には多分にホラが含まれていたとか…

すまない、話が脇にそれてしまった。本題に戻ろう。ではなぜ、人工智能強国SOはこれほどまで高度な文明を獲得することができたのか?諸説あるようだが、考古学者たちの間で有力なのは、ずばり資本主義がその牽引役であったという説である。

いや、もとい、資本主義の精神を支えたSO人たちの勤勉性にあったという。SO人たちはその勤勉性をいかんなく発揮し、見事、週ゼロ時間労働の社会を実現したが、そのような理想社会を作り上げる過程において、皮肉なことにその代償として、働かないことに強い罪悪感を植え付けられてしまったのだ。

さて、SO人にひとりのニートがいた。
そのニートが自分の国を誉めて言うには、
「国、我にベーシック・インカムを賜う。
 故に我働かずとも死せず。
 快なるかな。」

周りの人が言うには、
「なんじ、ニートにあらずや?
 ニート、出しゃばるべからず。
 なんじこの世に生きるに、何の意味ありや?
 嗚呼、ただ無能なるのみ。」

さて、このSO人は果たして幸せだったのだろうか、如何?

いかん、いかん。平日の昼下がり、床屋で髪を切ってもらっている間じゅう、うとうとしていた僕は、こういうくだらないことをつらつらと考えてしまっていた。

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