さのさとし

個人HPはこちら https://sano3104.com/

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最近の記事

マイナス詐欺師

「100万円を貴口座にお振込させていただきたい。」 この話は、私のもとに届いた、一通の不審なLINEから始まる。 友だちが一人もいない私は、誰でもいいから構ってくれる人が欲しかった。たとえそれが詐欺師であろうと。私は、ブラックホールに吸い込まれてゆくかのように、その怪しさ百点満点のLINEに返信せずにはおられなかった。 はじめに断っておくが、この話はフィクションであり、創作である。賢明なる読者のみなさま方におかれましては、くれぐれも真に受けないでいただきたい。もしあなた

    • 並列回路の合成抵抗について

      理科ができる生意気な少年だったぼくは、自然、電気回路の問題もよくできた。だって、豆電球が何個あったって同じだもん。複数の豆電球を1つのまとまりと捉えて、ちょちょいのちょいと抵抗を合成してあげればいいんだもの。例えば、抵抗1の豆電球が直列にならんでいたら1+1で2、並列にならんでいたら、半分の1/2で―― って、あれ?なんで二つあるのに半分になるの?? あれから幾星霜、今は子供たちに理科の計算問題の解き方を教える側になった。教えていて思うのは、今も昔も相変わらず、電気回路の

      • 矛盾2.0

        今は昔、古代中国にSOという国があったのを、みなさんはおそらくご存知ないだろう。いきなりネタバレから始まって恐縮だが、このSOという国は高度に文明を発達させた挙句、紀元前五百年ごろに滅亡してしまったという。 最新の考古学的研究成果によると、なんとこのSOは今から約三千年前、既にいわゆる“シンギュラリティ”というやつに到達していたという!人工智能がSO人たちの知能を超え、ありとあらゆる生産やサービスが機械とアルゴリズムによって代替された結果、SO人たちはついに労働の十字架から

        • 家庭教師というお仕事

          ひとりで家庭教師という仕事を始めて、ありがたいことにもう4年目になります。振り返ってみて、商売としてこの家庭教師というお仕事について考えてみますと、この商売はつくづく不思議なものだと思います。兼好法師の言を借りれば、家庭教師、あやしうこそものぐるほしけれ、なのであります。 その1 良いものほど売れない? あるラジオパーソナリティの放ったトークが今も忘れられない。 「僕、こうみえてもサ、昔、国語の家庭教師やっていたんだよね。なかなか優秀でYOH、教え子の成績もグングンうな

        マイナス詐欺師

          おれのほそ道(下)

          5日目山中温泉 四日目は金沢に泊まる。まだ日も明けないうちに、ホテルを出発し、加賀温泉駅を目指す。ホテルから金沢駅へと行く道すがら、まだ未明の暗闇に包まれている古い町屋敷をくぐりぬける。素敵な街並み、それと、ちょろちょろ聞こえてくるお堀の水の音がなんとも風雅である。  加賀温泉駅に到着したのち、山中温泉へはバスに乗る。降りてすぐのところにある喫茶店のおじさんに教えてもらい、菊の湯というところで入浴する。朝一番のお風呂は気持ちがいい。ところで、今日は東京に帰るっていうのに、な

          おれのほそ道(下)

          おれのほそ道(中)

          2日目松島 初日の夜は松島に泊まる。翌朝起きると、ホテルの窓からは松島が見える。さすが、日本三景。遠くまで来たものだ。  ホテルで朝食をとったのち、芭蕉も訪れたという雄島にゆく。ここから見える海はとても静かで、あの大震災の日、ここが津波に襲われたということを思うと、何だか不思議な思いもする。東日本大震災が発生したのは、私の大学合格発表翌日のことであった。あれから、丸四年。時間も随分経った。  物思いにふけったあと、私は瑞巌寺にお参りした。 平泉 松島を後にし、平泉までは

          おれのほそ道(中)

          おれのほそ道(上)

          序 「月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり、うんぬん…」を実感できるほど齢を重ねたわけでもないが、先日、このワタシも三十歳になった。三十歳、果たして、十年前、二十歳のワタシが、三十歳になった今の自分の姿を想像できていただろうか。もちろん「ノー」である。それはちょうど、十歳になったばかりのワタシが想像していた二十歳のワタシと、二十歳のときの実際のワタシが、大きくかけ離れていた、ように。あるいは、こうも言えるかもしれない。「今日から百日後の晩ごはんの献立を予測できるか

          おれのほそ道(上)

          最近同音駅名衝突

           言語学には同音衝突という現象があります。これは、ある2つの単語の発音(シニフィアン)が同じな上に、その意味(シニフィエ)までもが似ているようなとき、このような2つの単語は併存できない、という原理です。例えば、日本語の「私立」「市立」はともに「しりつ」と読みますが、その意味内容(private schoolとmunicipal school)が似通っており、どちらを言わんとしているのか、話し言葉では判別困難なため、わざと「わたくしりつ」や「いちりつ」と読まれることがありますね

          最近同音駅名衝突

          武蔵野線

           武蔵野線で大回り乗車せんとする者は、時間をムダにすることを苦にしてはならぬ。首都圏主要路線のうち、中央線、埼京線、京浜東北線、常磐線、総武線、京葉線いずれかに乗っていれば、いつか必ず武蔵野線に乗り換えられる駅にたどりつく。また、東海道線や横須賀線であっても、川崎駅ないし武蔵小杉駅で南武線に乗り換え、府中本町駅までゆきゆけば、武蔵野線に乗り換えることができる。  武蔵野線の非生産性は、ただその、東京の郊外を中途半端に四分の三周する円弧の大部分を車中で佇みながら、無為に車窓を

          数字依存症

          それはつい昨日の出来事でした 今朝も私は、起きるや否やnoteの全体ビュー数に目を凝らしていた。目覚めたばかりでまだシボシボしている眼に鞭を打ち、それを拷問にかけるかの如く、ギラギラ強烈な光を放つスマホの画面に釘付けになっていた。やれやれ、昨日メンタルクリニックに行って「数字依存症」と診断されたばかりだっていうのに。 「毎朝、noteの全体ビュー数をチェックしていますか?」 「はい」 「毎晩、保有している銘柄の株価をチェックしていますか?」 「はい」 「ご自身のTwitte

          数字依存症

          「心はつらいよ」が終わってつらいよ

           大変でい、大変でい。対象喪失でい。そう、週刊文春の連載「心はつらいよ」がついに終わってしまったのだ。これまで僕は、この世知辛い世の中を曲がりなりにも生き延びていくため、密かに、そして毎週のささやかな楽しみとして「心はつらいよ」をせっせと読み重ねてきた。しかし、ついにお別れのときがやってきたのだ。今、週刊文春を開いても、もう「心はつらいよ」は載っていない。  そんな、僕の心にポッカリ穴を空けてくれた「心はつらいよ」であるが、著者はといえば臨床心理学者の東畑開人さんである。僕

          「心はつらいよ」が終わってつらいよ

          サンショウウオ feat. マルクス

          1 ハケン(ロウドウシャ)は悲しんだ。  彼は彼の勤めているカイシャを思い切って辞めようとしたのであるが、貯金が底をついていて、辞めようにもそうするわけにはいかなかった。なら、貯金がある程度できたら辞めよう、とも思う。だが、彼のお給料は最低賃金すれすれで、貯金しようにも一向に貯まらない。“お先まっ暗”とは、こういうことをいうのだ。たぶん。  「なんたる搾取であることか!」  とはいえ、自ら生産手段をもたず、労働力しか売れる商品がない彼にとって、搾取されることは之すなわち、生き

          サンショウウオ feat. マルクス

          なぜ営業電話の営業マンは自分から電話を切らないのか

          電話の呼び出し音はいつだって不吉だ ♪りんりんりんりんりん。♪りんりんりんりんりん。いつものように電話が鳴る。電話の呼び出し音はいつだって不吉だ。だって、かかってくる電話の内容が良いことだった試しなんて、空から1万円札が9674枚降ってくるくらいありえないのだから。  例えば、「私は1億円の資産を持つ石原さとみ級の美女です。今とってもとっても寂しくって、そばにいてくれる人を切実に欲しています。私のお金でもってあなたを養いますから、ぜひとも私と結婚してください。」なんて電話がか

          なぜ営業電話の営業マンは自分から電話を切らないのか

          レモン2019

          1 えたいの知れない不吉な魂が梶井基次郎の心を終始おさえつけていたであろう1925年から94年のときを経た2019年、えたいの知れない不吉な魂が、今度は、私の心をおさえつけていた。酒を飲んだあとの宿酔がいけないのではない。また、結果した肺尖カタルや神経衰弱がいけないのではない。ずばり、無職がいけないのだ。収入がないのがいけないのだ。そして、無職と無収入という2つの虚<無>がもたらした、その不吉な魂がいけないのだ。以前、私をあれほど喜ばせてくれた、ビートルズやザ・フォーク・クル

          レモン2019

          ビッグバンを待つアナゴ

          登場人物 プ:プロトンさん ア:アナゴさん プ: さあ、今宇宙ももうすぐ終わりを迎えようとしています。私、当番組『ゆく宇宙くる宇宙』の司会を務めておりますプロトンと申します。よろしくお願いいたします。それでは、早速、ゲストをお迎えいたしましょう。ビッグバン待機委員会、会長のアナゴさんです。アナゴさん、どうぞよろしくお願いいたします。 ア: はい、ビッグバン待機委員会、会長のアナゴです。よろしくお願いいたします。 プ: さ、UHK(宇宙放送協会)紅白歌合戦も無事終わりまし

          ビッグバンを待つアナゴ

          東海道・山陽新幹線の駅名とさだまさし『案山子』

          東海道・山陽新幹線の駅名(東京駅~博多駅)を、さだまさしさんの名曲『案山子』のメロディに乗せて、替え歌で覚える方法です。 ♪このまちを わたがしに とうきょう/しながわ/しんよこはま ♪そめぬいたくもが おだわら/あたみ ♪きえればおまえが ここをでてから みしま/しんふじ/しずおか/かけがわ ♪はじめてのはる はままつ/とよはし ♪てがみが むりなら みかわあんじょう ♪でんわでもいい なごや/ぎふはしま ♪かねたのむの ひとことでもい

          東海道・山陽新幹線の駅名とさだまさし『案山子』