「あわせ鏡」に照らし出された新しい柳家さん喬師匠との出会い|さん喬あわせ鏡

・・・年の瀬にあわてて更新中・・・
今日は5月〜11月のまとめ記録です(長いよ)

今年から、エムズさんが主催されているさん喬師匠の独演会に「さん喬あわせ鏡」とのタイトルが付き、そちらにちらほらと伺っております。

さん喬師匠は一体、あわせ鏡でいくつの面をさらけ出すおつもりなのでしょうか。出されても出されても、まだ底が知れなくって、おそろしい。

さん喬あわせ鏡(第一回)

◆ 第一夜「新作部屋」

※途中から
柳家さん喬 らくだの馬 / こわいろや

20230508
日本橋公会堂

連休明けのハイな感想をどうぞ(https://twitter.com/akari__sano/status/1655552784073367553?ref_src=twsrc%5Etfw
「こわいろや」のひらがな表記は今見てもやっぱりニクイ

「新作落語をかける柳家さん喬」の図がわたしにはもう新しくって。
もともとさん喬師匠の落とし噺が好きなので(というか落とし噺が好きなんや)、「らくだの馬」のような、くだらない噺に出会えたのは嬉しかったな。そしてハケるときの後ろ姿がなんともお可愛らしく。噺のくだらなさと相まって、しばらくツボに入ってしまった。


◆ 第二夜「古典部屋」

柳家さん喬 らくだ / 死神

さん喬 百年目

20230509
日本橋公会堂

https://twitter.com/akari__sano/status/1655926629846380548?ref_src=twsrc%5Etfw
正統派の古典落語に殴られるっておかしな表現なのですが、この日はまさしくそんな感じでした

旦那の言葉を心して受けとめることになった「百年目」も、「死神」の世界観の鮮烈な描き出し方も、凄かった。
噺そのものが持つ強さをまっすぐど真ん中に響かせることのできる厚み、独自の解釈や色味を加えて変化球をも完成させてしまう遊び。それぞれがそれぞれに素晴らしくって、まさか「古典部屋」でも師匠の多面性を見せつけられることになろうとは思いもよらなかった。

「死神」の幕切れが、そりゃもう、めちゃくちゃカッコよかった。師匠の死神は、やはりどこまでも"人ならざるもの"なのだなあ。

全体の印象はやわらかいのに、触れてみると骨太。
この印象は、11月の会の「芝浜」にも通じています。



さん喬あわせ鏡(第二回)

9月は人形町の社教会館へ。たしか初めてさん喬師匠の独演会にお邪魔したのもこちらの会場だった。ハコの大きさも程よく段差もしっかりしていて、なにより明るいのでとても好きな会場です。

連休明けの平日夜にさすがに連日通うわけにもいかず、二日目の《月の巻》へ。「花」と「月」なら、悩みながらもわたしはやはり、「月」を選びたい。

◆ 月の巻

※仲入り後から
柳家さん喬 お若伊之助 / 宮戸川〜笠碁

20230921
日本橋社会教育会館

https://twitter.com/akari__sano/status/1704847615928779016

さん喬師匠の独演会の演題表でたまに「宮戸川〜笠碁」という表記があって。ずっとなんだろう? と思っていたのです。噺から噺へと、魔法のようにつながっていく特別感。こういうの、大好き。

さん喬師匠の高座は、まくらから噺へと入っていく流れでも、その世界に一気に引き込まれるような感覚になることがある(下記は昔の感想)。

https://twitter.com/akari__sano/status/1314189632242761730

師匠の声音や語り口によるものもあるだろうけれど、この引力の強さに、師匠ご自身がご覧になっている世界はどれほどに鮮やかなのかしら……と思う。描いた"絵"を的確(かどうかはわからないけど)に、観客にも共有して観せてしまう──これが芸でなくて何と言うのでしょ。

さん喬師匠の落語だからこそ、出会える独特の感覚。この、遠くに連れて行かれる感覚が、好きなんだよな。



さん喬あわせ鏡(第三回)

三遊亭歌きち 子ほめ
柳家さん喬 福禄寿 / 掛取万歳

さん喬 芝浜

20231109
内幸町ホール

第三回は一日単独公演。一席目から「福禄寿」に出会うの、たぶん二回目です。さん喬師匠からはいつも「本気」しか感じない……!

https://twitter.com/akari__sano/status/1723677822705934515

さん喬師匠の人情噺に出てくる男像が硬派説は引き続き検証していきたいところです。

遅刻したりしなかったりしながらも、なんとか通うことができた約半年間。
改めて思うことには、「あわせ鏡」で新しい面を見いだそうとしているのは、他ならぬさん喬師匠ご自身なのではないだろうか、ということ。

飽くなき探究心と、尽きせぬ芸への欲。
やわらかさの奥に宿る熱にあたりに、来年もまた、お邪魔できたらと思います。

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