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図書館にて太宰萌え

写真をごらんあれ、「太宰萌え」とはなかなかキモの据わった書名ではないか?
まず、最近の私といったらまるでなっていなかった。腐りきっていたのだ。えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終おさえつけていた。焦燥と言おうか、嫌悪と言おうか.。
あ、ごめんこめん!梶井基次郎の檸檬になりきっちゃった。.実は私は、2年たって流れてしまう有給休暇を、流さず使い切ってよろしいという上司のありがたいお言葉を信じて、時々こうして会社を休んでるのである.。でもね、晴天続きだからといってどこに行くでもなく、と言うのもお金がないからなのだが、家→マック→家→スタバ→家と、正にノマドワーカー、ウロウロしながらも気持ちは腐りきっているのだ。このままで年寄りになったらどうしよう。何もすることなく散歩ばかりの毎日が訪れるのだろうか。あ、そうだ。今や、行き場所のなくなった老人の目的地Destination、自宅では集中できない受験生のNestである、近くの私立図書館に行ってみよう。
さて、実際行ってみると、老若男女問わず渾然一体として勉強している、素晴らしい場所だった。今やまさに「嫌老時代」なので世代を越えて一室に集まるなんて図はなかなかない。よしよし。早速備え付けのパソコンで蔵書を検索してみた。ここでそのとき引いたワードを列記しよう。
太宰治
宮本常一
沖縄戦
インパール作戦
その作者の署名だけでなく、関連するいろんな本が出てくる。楽しくて堪らない。しばらく検索を楽しんだのだ。私の後ろに並んでいる小学生が、おじいちゃん、まだー?とせっついても気にせず検索し続けたのだ。(ウソだけど)
見つけた「太宰萌え」という本に目が行き書棚から探して、その場で少し読んでみた。これは面白い。ファン向けの書籍ね。


ここで急に質問するけど、これを読んでいるあなたは、何推しだろうか。
私は、若い頃は完全に「ヴィヨンの妻」だったけど、最近は「東京八景」推しだ。自らの過去を振り返りつつ、東京での生活の場所を重ね合わせて一景としていく、じめじめとした作業がこれでもかと続き、そうして最後に、妹の婚約者たる兵隊さんを見送る場面が登場する。読んでいる読者の私もうっすらと暗くなりながら後半まで来て、おいこのまま終わりかい、と心配した、その頃合いを見て、最後にほっとさせてくれるのが、いい。出征する兵隊さんに「あとは、心配ないぞ!」と声をかけるシーンは、見てもいないのに場面を想像するに難くない。

写真にある「太宰萌え」「別冊太陽 太宰治」「太宰治と歩く文学散歩」この三冊を借りて帰った訳だが、このおじさんも、完璧に、しかもいい年こいて、太宰萌え~~だ。ちょっと恥ずかしいけど、私も完全に太宰にヤラレている。