あたらしい春

突然やってきた春の陽気は私の閉め切った部屋の中の雰囲気までも変えてしまうほど、強力だ。

きっと太陽の光の総量とか角度とか気温とか鳥の囀りとか風向きとか、そんな色んな要素が、数日前までの「冬」から確実に様子を変えているんだろうなと思う。そして私の体と心はそれをしっかり感じている。多分、こんなに季節を一身に受け止めているのは人生ではじめてのことだ。

私の周りの大切な人たちは明日から新しい環境で新しい生活をはじめる。
とても誇らしいし、肩をたたいて送り出してあげたいと思う。
花々や生き物たちが長い冬の眠りから覚めて一斉に動き出すように、私の周りのみんなも新しい服装と表情で歩み出す。
日本の新生活は春からはじまるというのは、理にかなったものなのかもしれないね。

私はここ最近、ぼんやりとしてしまう。
温かいお湯に頭まで浸かっているようだ。泳いでいる魚が水という存在に気がつかないように、私もじきにこの幸福を当たり前なものだと忘れてしまって、ずるずると怠惰を引き寄せてしまうのではないかと自分自身を危ぶんでいる。
今は自分のことがろくにできず、みんなへの思いがとめどなく溢れてしまう。
未だに学生の私はみんなと比べて遅れをとるけども、別段焦りはない。
少し焦ったほうがいいのではとも思うのだが、どうにもこうにもねえ。


昨日の夜、
私の髪を無造作に撫でる大きい手の間から生暖かい夜風が入ってきたと思ったら、それは彼の深い息だった。熱を帯びた呼吸が耳元に、とても近い。くすぐったくておもはゆい。
今年の春は姿かたちをあれこれ変えながら私に忙しなく呼びかけるけれど、その中でも一番鮮やかな薄桃色をしていたんじゃないかなと思う。


私たちは春に歌う、地球の子供!
そんな子供たちに幸が溢れますように。


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