見出し画像

あのヒットの裏側にあった契約担当者の苦労。エンタメ業界の契約業務の実態とは

私たちの生活は多数のコンテンツに囲まれています。この記事を読んでいる皆さんも、通勤中や仕事終わりなど、日々たくさんの映像や音楽に触れているのではないでしょうか。

しかし、素晴らしい作品の裏側には、膨大な「契約業務」が発生しています。そこで、エンタメ業界への導入が広がっている「Contract One」では、業界のユーザーを集めたミートアップを開催しました。

映画・音楽・テレビ番組などを手がける企業が集まり、この業界だからこその契約業務の苦労話などを語っていただきました。その模様を、今回のユーザーミートアップを企画した当社のカスタマーサクセスの青木がレポートします。

青木崇太朗
2021年にSansanに新卒入社。現在は、Contract One Unit カスタマーサクセスグループのマネジャーを務めている。 趣味はラジオで、霜降り明星や佐久間宣行のオールナイトニッポンをよく聞いている。


孤独になりがちなシステム推進責任者が集まり課題を共有

エンタメ業界の契約業務における実態をお伝えする前に、ミートアップを開催した背景を簡単にご紹介させてください。

私はカスタマーサクセスとして日々ユーザーの皆さまと向き合っていますが、新しいシステムを導入する際に、推進責任者となる方が孤独になりがちだということに課題を感じていました。システムを導入するには業務フローの再構築が必要になることも多く、社内調整に苦労することもあります。

そこで、推進責任者同士で業界ならではの悩みや知見を共有できる場を提供したいという想いから、今回のミートアップを企画しました。

いちプロジェクトあたり40件、山積みになる契約書

ミートアップでは、それぞれの業界における契約管理のお悩みをうかがい知ることができました。皆さんが特に苦労していたのが、契約書の多さです。

例えば映画業界では製作費が数十億円にのぼることもあります。一社で担うにはリスクが大きいことから、放送局や製作会社、広告代理店など、複数企業が出資します。映画のポスターやエンドロールに「〇〇製作委員会」などと表記されているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか。

製作委員会の立ち上げには、契約書が交わされます。10社近くの企業が合同で一つの契約書にサインする必要があるため、締結完了までに半年近くかかることもあるそうです。ほかにも、下請け、二次受け、三次受けと、製作からその後のグッズ販売等も含めると、一つの作品で40件近くの契約書を締結することもあります。

総務省「放送コンテンツの製作取引適正化に関する ガイドライン(改訂版)【第7版】」より、
当社が作成(https://www.soumu.go.jp/main_content/000720416.pdf)

音楽業界ではどうでしょうか。例えば音楽アルバムを製作する際には、一枚のアルバムに10曲近く収録される場合があります。アーティストはもちろん、作曲や編曲、収録などを担当する各クリエイターとの契約が、全ての曲で必要になります。さらに楽曲を作った後の配信や販売、プロモーションなども含めると、一枚のアルバムを作る上で30件以上の契約締結業務が発生することもあるのだそうです。

ミートアップ参加者の多くは、これまで契約書の管理をエクセルで行っていました。作品が増えるにしたがってエクセルの行数が膨大になってしまい、管理が複雑になってしまったという声が多く聞かれました。

例えば映画のタイトルは作品の製作過程で変更されるケースもあるため、契約当時と異なることも多く、過去の契約書から著作権の権利内容や範囲を確認したいと思っても検索するのは至難の業です。担当者の退職により、契約書を見つけられなくなってしまうこともあるそうです。

口頭発注が当たり前、
契約書を結ばないまま10年近くの付き合いに

最も盛り上がった話題は「口頭発注」でした。エンタメ業界では契約管理が重要だという共通の認識がある一方で、口頭発注が多用されていて、そもそも契約書が存在しないことが多いそうです。

特に製作期間が短い場合は、現場の担当者が親しいクリエイターさんに口頭で仕様を伝え、そのまま発注してしまうことも多いのだそうです。いつも一緒に仕事をしている、お抱えのフリーランスの方がいて、都度、契約書を交わさないこともあります。過去からずっと付き合いがある個人や会社と「一度も契約書を結んだことが無かった」ということに最近気が付いた、という話は業界の「あるある」のようでした。

再認識したエンタメ業界での契約業務の複雑性

今回のミートアップを経て、エンタメ業界では、口頭発注をはじめとする古い慣習が未だに残っていることがわかりました。厳格な締め切りが存在する業界の特性と言えるのかもしれません。著作権や肖像権、さらには下請け法など、関連する法律も多いことから、契約の締結や管理の全体像を把握するのはきわめて難しいと感じました。

また、日本のエンタメは世界的な評価も高く、海外との取引も増えています。今まで付き合いのない新しい企業との契約が増え、権利関係が複雑になる中で、海外での作品の盗用を防いだり、新しい法制度に対応したり、契約担当者の仕事の重要性は増し、多忙化しています。直近のコロナ禍では、立ち上がったプロジェクトの進行が止まり、確保していた人件費の折衝業務などを、契約担当者が負担することもあったそうです。

契約の締結から、契約管理、さらに目まぐるしく変化するリスクへの対応まで、担当者の負担が大きくなる一方で、すべてを何とか人力で対応しようとしているのが実態です。人力でなんとかしようとするほど、属人化が進んでしまう。こうした、負のスパイラルに陥っている企業が多いのではないかと思います。

本来、契約内容は法務部門だけでなく、営業部門や製作現場などにも密接に関連するため、全社で管理すべき重要なものだと考えています。

今後もカスタマーサクセスとして、孤独になりがちなシステム導入の推進責任者と共に、社内の調整や業務フローの再構築はもちろん、契約書が効果的に管理・活用され事業に貢献できるようになるまで伴走していきたいと思います。

【もっと「Contract One」を知りたい方へ】
他にもContract Oneに関わるメンバーのnote記事を公開しています。ぜひご覧ください。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!