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必ず合格させます|信頼を得る言葉とは

某大手予備校では入塾の相談に来た受験生とその保護者に対して「必ず合格させます」と明言することで、多くの生徒を入塾に導いていると噂で聞いたことがあります。

受験という厳しい世界に対して不安を抱いているところに「必ず合格させます」と伝えられたら、確かに心を掴まれてしまうかもしれません。

「合格/不合格」という「オン/オフ」で結果が返ってくるものに対して「必ず」と明言しているその姿勢は余程の自信があるのでしょう。

ましてや、その受験結果に対して予備校ができることは「サポート」であり、主体的に合格を目指して勉強するのはあくまでも顧客である生徒です。その結果に対して「必ず」と付けるのは凄いことだと思います。

もちろんこれは「表現」なのかもしれませんし「必ず合格させます」と伝えてはいるが、資料の片隅に小さな文字で「結果に対して一切の保証はいたしません」の様な注意書きがされているのかもしれません。

何かしらのリスクヘッジはしているはずですが、それでもこの直球の表現は予備校としての顧客に対するひとつの姿勢なのだと思います。

「結果はどうしても自分次第にはなるけれど、合格できるようにできる限り一緒に頑張っていきましょう」と言われるよりも「必ず合格させます」と言われた方が勇気づけられる人は多いのかもしれません。

人を勇気づけるためには、様々なアプローチ方法が存在するのです。

僕はどちらかと言うと「必ず合格させます」の様なことを言われた時に「本当だろうか」とか「その根拠は何だろうか」とか、斜に構えた反応をしてしまうタイプなので、現実的なスタンスで一緒に模索してくれるような姿勢を好みます。

受験の経験では特にこれといったエピソードはないのですが、過去に手術をする前に医者から言われた言葉で印象に残っている言葉があります。

当時23歳と若い年齢の時に胃が痛くなり通院して検査をした後のことです。主治医からがん告知をされてしまいました。

胃がんが進行しており、治療法は胃の全摘出手術で、手術の結果次第では抗がん剤治療をすることになると説明をされました。

この時に医師から今でも印象に残っている勇気づけられた言葉をかけてもらいました。

「今は治る時代です」と言われたのです。

この一言が、がん告知をされてショックを受けている僕に勇気を与えてくれたのです。

淡々とした説明であり、尚且つシンプルで客観的な一言だと思います。また「必ず治ります」とか「私が治してみせます」といった言葉ではなかったことで、患者である自分こそ頑張らなければいけないという自発的な気持ちを抱くことにも繋がりました。

最善な状態で手術を迎えられるよう準備できたのも、手術後に再発を恐れながらもリハビリをした苦しい時期を耐えられたのも、あの言葉を信じることができたおかげです。あれから10年以上が経過した今でも当時の医師には感謝の気持ちでいっぱいです。

人の心を動かす言葉というのは、その時のシチュエーションや言われた側の心境など、複雑な環境において効果を発揮したりしなかったり、非常に難しいものだと思います。

婚約者に対して「必ず幸せにするよ」と言って、その後しばらく経って別れてしまったカップルも多くいるでしょう。だからと言って「幸せになれるかどうかは僕たち次第だけど少しずつ頑張って云々」と言って心を掴めるかどうかも微妙なところです。

「私が当選した暁には必ず○○を実現させます」という政治家のマニフェストも守られていないケースの方が多い印象があります。だからと言って「これからは○○な時代になります」とだけ言ったところで、その政治家の実行力をアピールすることにはなりません。

こういった例を考えてみると、医師が言ってくれた「今は治る時代です」という絶妙な言葉のチョイスには脱帽せざるを得ません。

人の心を動かす言葉というのは奥が深いものです。

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