だって今日はクリスマスだろ

昔、まだ私か小学生のときか。

ラストシーンで、中年の上司が部下の罪だかミスだかをそのセリフで不問にする洋画があった。とぼんやり記憶してる程度でタイトルすら覚えていない。

上司と部下なのか、先輩と後輩なのかもよくわからない。だが、そのセリフを言ったのは渋めの白人警官だったような気がする。

だとすると、刑事物だったのだろうか。
俳優さんの表情もすごく良くて、前半で憎々しい台詞を主人公に浴びせていた彼が、ラストで彼を認めたように笑うのだ。幼心に私は「か、カッコいい!」と思った。


なんだかんだで事件は解決したけれど管理者的には超困る(物壊しすぎ、とか所轄がでしゃばり過ぎ、的な?)案件で、

「今度やらかしたらお前クビ」みたいな事を言われていた矢先に、結局すったもんだあって、無事2時間で解決したラストシーンがこれだった。

「もうその件はいいよ。だって、今日はクリスマスだろ」
そう言って去っていく上司(か、先輩)。

それを見送り、降りだした雪を見上げる主人公。それがまたよかった。
何作品か、記憶がまぜこぜになってるかもしれないが。

テレビの金曜ロードショーで見たのだろうか。当時の私は、ストーリーよりド派手アクションより、このシーンにしびれてしまった。

「だって今日はクリスマスだろ」

なんてカッコいい許し方なんだろうか。

私も将来、こんな風に人の罪を許せる大人になりたい、と憧れたものだった。


だが私が青春を過ごした平成初期は、なんといっても「トレンディドラマ」ど真ん中。
「クリスマス」といえば一年でいちばんの晴れ舞台である。

クリスマスは彼氏と過ごさなきゃダメ、
ひとりで街を歩くのは寂しいこと。
仕事ばかりしてるのは彼氏いないって言ってるようなもん。

有名店のディナーを食べたあと、夜景を見に行ってドライブするのがいい過ごし方。
それが、彼氏に大切にされてる証拠!

それが、充実してるってこと!

みたいな時代で、正直私はそこに自分をもっていくのにせいいっぱいで、クリスマスはそのイメージに塗り替えられてしまった。

今年のクリスマス?もう半年前から予定埋まってるんですぅ、彼が イタリアン予約してくれてぇ、みたいな。

いかにも夜遊びしますよ、という洋服で出勤し、同僚が付近にいないのを確認してからまっすぐ帰宅するということもやった。
ホント、いま振り返ってもお恥ずかしい若気の至り時代である。

今書いててもかなり恥ずかしい。

そんなアホな私も、48歳になった。

あの頃の私からすると、もうお局様もとっくに通り越して、想像もつかない年齢だ。
もうそろそろ、あのセリフを誰かに言ってみてもいいかもしれない。

「だって、今日はクリスマスでしょう」

仕事はちょっと横においといて。
眉間に皺寄せなさんな。
1日や2日休んでも、長い目で見れば変わんないよ。

会社にもどったら、そう言って若者たちの背中をぽん、と押してあげたいと思う。

その時私は、どんな顔をしているだろう。
あの映画の警官みたいに、いぶし銀の魅力が出ていればいいけれど。


                                   🎄

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