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限界集落の富山県利賀村でランニング合宿をやります

先週、生まれ故郷の富山県利賀村へ1泊2日で視察へ行ってきました。なぜ視察かというと、利賀村でランニング合宿を開催するためです。地域活性化のために何かできないかと模索していた兄が企画し、トレイルランナーでもあるHISの来住さんが全面的にバックアップしてくださっています。日程と予算は下記の通りで、その他詳細については須河宏紀or来住さんに直接ご連絡ください。トレイルランやロードが好きで、けっこうガッツリ練習したいという方には気に入っていただけるコースがたくさんあると思います。

"TOGA SUMMER CAMP"のご案内
富山県利賀村にて7/31(土)~2泊3日で開催します。
土曜日 or日曜日の1泊のみでも、ご参加可能です。
1泊2食、岩魚掴み取り体験付きで、1泊あたり12.500円を予定しています。

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富山県内でも孤立した地域

簡単に説明しておくと、利賀村は人口500人弱の小さな村です。2004年に8つの町村と合併して南砺市となりましたが、合併後も「南砺市利賀村」としてその名を残しています。地域住民の「利賀村」を想う気持ちが汲み取れます。森林占有率は約97%と言われており、冬には家の2階まで雪が積もるほどの豪雪地帯です。利賀村にアクセスするためのルートは3つありますが、いずれも急な崖とダムの横を通過しなければならず、かなりの運転テクニックが必要です。

雪山

そんな地形からも、利賀村は他の地域と孤立していて、ちょっと異次元な世界観があると個人的には思っています。同じ富山県民からも「利賀村いいところだけど、生活できるの?」と心配されたりします。村内に信号は1基しかなく、最寄りのコンビニ(お隣の砺波市)までは車で30分くらいかかります。

少子高齢化については大きな課題で、人口減少には歯止めがかかっていない状況です。年に数回実家に帰省していますが、その度に空き家が増えたり、取り壊されている様子を見ています。今回も、小さい頃からよくお世話になった近所のじいちゃんとばあちゃんが家を引き払って、町の老人ホームへ行ってしまったという話を聞いて底知れぬ寂しさを覚えました。長年住み慣れた土地とは言え、交通アクセスも悪く、冬になれば毎日除雪が必要で、高齢者にとってはとくに大きな負担となります。住みたくても住み続けられない理由がどうしても出てきてしまいます。村と村外を結ぶバイパス工事も進められていて一部開通していますが、人々の生活基盤となる道路については完成がいつになるのかちょっと先が見えません。

私が小学校低学年くらいのときに、トンネル工事をして新しい道路を作っている様子を眺めながら「あれはいつ通れるようになる?」と隣にいた父に聞いたことがあります。「君たちが大人になる頃には通れるよ。便利になるよ。」と言われて、まだ遠い未来のことだけど、これでアピタまで近くなるのかーと心躍らせた記憶があります。それからもう20年以上の月日が流れてしまいました。(道路はまだできていないし、アピタは閉店したし、私は20歳どころか30歳手前だし、いろんな意味で悲しい。)

山

また、新型コロナウイルスにより、毎年3日間で2万人以上の人が訪れる「南砺利賀そば祭り」や、スポーツツーリズムで初のスポーツ庁長官賞を受賞した「TOGA天空トレイルラン」など、村をあげて取り組んできた行事が軒並み中止に追い込まれました。

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一方で、近年は慶應義塾大学の学生による「牛島ゼミ利賀プロジェクト」の活動が定着してきていたり、「TOGA森の大学校」の開設によって移住者が増えるなど、県内外の方々が利賀村を盛り上げてくださっている印象を受けます。昨年12月にはミシュラン一つ星シェフの谷口英司氏が利賀村にレストランをオープンしたり、この4月からは「南砺利賀みらい留学」がスタートしたりと、県外に居ても、明るい話題が耳に届くようになってきました。

慶應義塾大学の学生が作成した利賀村紹介のパンフレット↓
「今の学生は遊んでばっかりおらんと、こんなのも作ってくれるんぜ。ありがたいっちゃ。」(by地域住民)

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そんな中で、今回のランニング合宿。利賀村出身の自分たちがやるからこそ意味があり、村にとっても、参加者の方々にとっても、有意義な時間となるように努めたいと思っています。もちろんこんな情勢ですし、状況によっては中止も視野に入れつつ、感染対策をしっかりしながら準備を進めていきます。(7月までには今より収束していてほしい!)

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1回やってみて「ああ良かったね」で終わるのではなく

南砺市商工会利賀村事務所の所長さんや、 利賀地域づくり協議会の副会長さんにもご挨拶させていただき、村のリアルな声を伺うことができました。一番印象的だったのは、「やるからには継続させたい」「日帰り観光だけでなく宿泊もしてもらって良さをもっと感じてもらいたい」という言葉です。2014年から開催されているTOGA天空トレイルランは、お年寄りの方も沿道に出てきて応援したり、エイドで地元の特産物を振舞ったりすることで、1人1人が大会に関わっているという意識を持つことができたといいます。「また応援したいねえ。来年まで頑張って生きんなんね」とおばあちゃん達の笑顔がひときわ輝いていたそうです。

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トレイルランの開催が地域住民の活力になっていることは間違いないと思います。しかし、観光資源に乏しいため、昼間に利賀村で遊んで目的を達成したら、近隣の砺波市、富山市、金沢市などに宿を予約して帰ってしまうケースが多いそうです。1泊でも2泊でもして、もう少しお金を落としていってもらいたいというのが正直なところだと思います。そして、利賀村を好きになって移住する人が増えたり、若者がUターンで戻ってきたりすることが最終的なゴールではないかと思います。今回の合宿も1回開催して終わりではなく、継続して根付かせることが村の将来につながるはずです。

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最後に

ここまで、さぞ自分が兄とともに合宿を企画してようやく開催まで漕ぎつけたぞ風に書いてきましたが、この企画を知ったのはつい最近のことでした。兄から、視察するから車を運転してくれと頼まれたため、ひょこひょこと同行した次第です。その中で、利賀村の「いま」を良い意味でも悪い意味でも改めて目の当たりにしました。私にできることはごく限られたことだと思いますが、好きな場所で好きなことができる喜びを形にしていけたら幸せだなと思います。

まずは、はじめの一歩ということで、利賀村のありのままを発信して、一人でも多くの人の目に留まっていただけたら嬉しいです。

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