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「骨の髄まで」

適当に嘘をつき合いましょうか
おたがいに
軋んだ歯車も
油を垂らせばまた
滑らかに廻ってくれる かも

適当に逸らし合いましょうか
矛先を
射てしまったなら今空を
飛んでいた筈の鳥がこのテーブルに
ぽとり 堕ちて来るかも

そんなわたしもあなたも 最期は
ただの白く乾いた骨になるんだし

あなたが先に死んだなら
骨は隣家の犬にしゃぶらせよう
そうして骨に沁み込んだあなたの
嘘をすっかり喋らせよう

わたしが先に死んだなら
その時は仕方ない
三途の川を渡る手前でつらつらと
あなたへの恨み唄でも歌ってゆくよ

だから
油断めさるな
わたしが骨になっても
布団でぬくまってひとり眠る夜に
夢の中まで盗みにゆくよ
あなたのまやかし


―――詩集「生活Ⅰ.」より


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