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あ。そういうところ

好きだったよね。

そういえば…

これは大好きだったアーティストのファンクラブを辞めようと思っていた頃の話である。

珠希には大好きなアーティストがいた。

長い間ファンクラブに入っていた。

本当にその人たちの音楽が好きだったし、パフォーマンスも好きだった。

最初は未成年だったので親の同意が必要だった。

父親はエンタメに対してライブとかお笑いとかそういうのに本当に理解を示さなかった。

拝み倒してなんとか母親だけが仕方ないという感じで珠希のお願いを聞いてくれた。

自分でバイトをしてお金を稼ぐようになったら払うことを前提に。。。

その頃の気持ちからすれだいぶ…だいぶ色褪せて遥か遠くまで来てしまっていた。

やっぱり【持続】ということががいちばん儚いのかもしれない。

グループは卒業もあれば解散もするしその瞬間そこにいるメンバーが奇跡なのだ。

気持ちもそうだ。

そんなに好きだったのにファンクラブ『もういいや』と思って更新時期が来てもほったらかしていた。

更新しなければ退会手続きをしなくても自動的に退会になるからである。

更新のお知らせメールが来る中、気にもしなかった。

気にもしなかったというとウソになる。

どこかで…

どこかに…

頭の片隅か

気持ちの片隅に

引っかかっていた。。。

のかもしれない。

更新月も過ぎて翌月の猶予期間になってもほったらかしていた。

猶予期間というのは今月更新しないと本当に退会になっちゃいますよー!という期間である。

やはりお知らせが来ても気にとめてはいなかった。

それでも珠希のどこかにその音楽との最後のつながりがあったのかもしれない。

何気なくテレビを見ていたときのことだった。

予想外にその好きだったアーティストが突然画面に映し出される。

それは音楽映像でもないしインタビューなどでもない。

密着取材されているメインの人の《交流のある方》という事で真面目な話をしていた。

とても短い時間だった。

アーティストの時の華やかな感じでもないしメイクもしていなければ、いつもの存在感も消している。

そういうのが全て計算されている。

計算というのは周りにいる人の映り方自分の映り方、相手の立たせ方テレビの撮れ高とか全部。

これは全部、珠希の勝手な想像だ。
それでもあながち間違っていないと思っている。

そこから何かが
一度止まった歯車が
ちょっと錆びた歯車が
微かに動いた。

そういえば今どんな音楽を歌っているのか?

YouTubeを見る。

最近は歌も聴いていなかったので知らない曲が流れ出す。

変わらず斜め45°からくる歌詞は変わらない。

耳残りするループするメロディー。

繰り返す繰り返す。

ふ〜ん。←感想は偉そうだがこんな感じだった。

微かに動いたギシギシの歯車はやはり音を立てては回らなかった。

何かもう一つくらい見てみようと動画をスクロールする。

すると桁違いの時間の動画があった。

間違いかと思って開く。

一般的にMVやPVなどは長くてもだいたい10分前後くらいと思っている。(珠希感覚)

するとその動画は短い1曲をひたすら繰り返していた。

それは見るという行為を誘う。

全てが仕掛けなのだ。

全部同じ繰り返しかと思いきや、1時間に一回くらいかおそらくもっとあって見逃していると思われるが…(笑。

同じ物語の中で微かに移り変わりがある。

あーこういうところ

好きだったの。

そういうところだったよね♪と

油を刺さないと回らない歯車がまた

錆びついた破片をポロポロ落としながら

ゆっくりゆっくりガリガリと回り出した。

音楽ってその表現てすごいね。

アートだ。


珠希はきっと…

この人の事、ずっと好きだと思った。






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