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茶湯者覚悟十躰

千利休に一番近い弟子であった山上宗二が書いた茶の湯の秘伝書「山上宗二記」にある、茶人を志ざす人の心得をまとめた文章。

原文
一、上を麓相、下を律儀に信在るべし
一、万事にたしなみ、気遣い
一、心のうちより綺麗数奇
一、朝起き、夜話会のときは、
  寅の上刻より茶湯しかくるなり
一、酒色を慎む
一、茶湯は、冬春は雪を心に昼夜すべし
  夏秋は初夜すぎまでしかるべし
  月の夜は独りなりとも深更まで
一、我より上なる人と知音するなり
  人を見知りてともなうべし
一、茶湯には座敷、露路、境地
  竹木、松在る所、並びに畳じかに敷くこと
一、善き道具持つの事
  ただし、珠光、引拙、紹鷗、宗易などの
  心がけられし道具なり
一、茶湯者は無芸なるが一能なり
  紹鷗の弟子どもに伝われしは、
  人間六十定命と云えども、
  身の盛りなること二十年、
  不断茶湯に身を染めるさえ、
  何の道にも上手なし
  芸に心をかければ皆々下手なるべし
  ただし、書と文学は心にかくべし、
  と云われしなり

現代語訳

1 権力におもねらず、
  下の者を大切にすることに
  信念を持つべきである
2 全てにおいて重要なのは、
  好みと気遣いである
3 身の回りだけではなく、
  心の中から綺麗好きに
  ならなければならない
4 夜の茶会の準備を、早朝、
  早起きして始めるぐらい
  準備は早めに行うこと
5 酒と色事は慎んでおいた方が良い
6 冬と春は、心の中に雪を思い浮かべ、
  昼も夜も茶会を行う
  夏と秋は、夜8時ぐらいまで茶会をする
  月の夜は、たとえ一人でも
  夜中まで釜をかけておく
7 自分よりも能力が高い人と知り合い、
  積極的に仲良くなるべきだ
  人脈があってはじめて自らの評価も固まる
8 茶湯は茶室と路地が置かれている
  環境が重要になる
  野点では、竹や松がある場所に、
  畳を直に敷くのが良い
9 良い道具を持つべきだ
  但し、珠光、引拙、紹鷗、宗易など
  侘び茶の先人たちが認めたものに限る
10 茶湯者は得意なことは無くても良い
  武野紹鴎が言っていた
  人生は60年足らずで、
  自由に生きれるのは20年
  短い時間の中で茶湯に打ち込んでも、
  そんなに上達するわけではないのに
  茶の湯以外にも手を出し始めたら
  ただ下手が増えるだけだ
  ただし、書と歌は嗜んでおいたほうが良い

解説

山上宗二 1544−1590

武野紹鴎や千利休と比べると、文章全体にロジカルさがなく、雑然とした印象を受ける。山上宗二が時の最高権力者に成り上がった豊臣秀吉と事あるごとに対立し、逃げ回る人生であった事から考えると、秀吉に殺される前に自分の生きた証しを残したいという、あせる気持ちが先に立ち、全体を整理することに気が回らなかったのかもしれない。
特に一つ目の文章「上を麓相、下を律儀に信在るべし」は、秀吉に逆らった自分の考えが間違っていないという主張しているようにも見え、後々、秀吉によって処刑される原因の一つにもなっているように思える(ただしこの文章の「上」や「下」が何を指しているかは明確では無いので、必ずしも、今回の解釈が正しいとは限らない)。宗二の頑固さが垣間みれる一文である。

茶湯者覚悟十躰で全体的に違和感を感じるのは、なぜ「珠光、引拙、紹鷗、宗易が認めたものは良い」のか、なぜ「心のうちより綺麗好き」でなければならないのかなど、宗二自身の美意識や、茶の湯への気付き、悟りがあまり感じられないという点にあるが、この時点での宗二は、珠光、紹鷗、利休など、大成者の考えを学んでいる最中であり、あくまでも大茶人たちの思想をまとめることが目的だと考えれば納得することができる。

やはり利休に一番近い場所にいた人物が書いたということもあり、当時の茶の湯の実情を知る文章としては重要である。

超訳

“ 猿面ディストーション
ーKiller Ape Never Diesー 利休高弟宗二 ”

猿猴取月 積もる歳月
豊臣秀吉 逝ってよし
頑固一徹 初心貫徹
それが利休高弟宗二のプライド

振り返る Young and shining days

趣味燦然の服着て 颯爽とエスコート
綺麗数寄の面もちで 粛然としてねぇと
今宵新品の脳味噌で 早朝コーディネート
酒池肉林を遠ざけて ただ妄想チェックメイト

だが Don't go back to the past

茶湯者よ 覚悟決めとけ 躰削がれようとも
茶湯者よ 悲しき運命 共に釜をかけよう
マイフレンド

意馬心猿 積もる怨念
豊臣秀吉 逝ってよし
頑固一徹 初心貫徹
それが利休高弟宗二のプライド

思い出す Young and shining days

春夏秋冬茶会日和 きらめくエブリデイ
月夜待人夜中過ぎても 釜かけロンリーナイト
尊敬と情熱満たす友情 二度といやしねぇ
思い出の場所松の木陰 野掛けした風景

だが Don't go back to the past

茶湯者よ 道具揃えろ 認められし物を
茶湯者よ 不器用でいろ 書歌学びし友よ
マイフレンド マイフレンド

仰げば尊し我が師の利休
今こそ別れめ我が友利休

Killer Ape Never Dies
Killer Ape Never Dies

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