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大学教員@香港のつぶやき:オックスフォード時代を振り返る

香港からこんにちは、代表の荒木です。一昨日、サルタック理事の畠山が博士課程最後の試験(口頭試問)を見事パスし、Dr. Hatakeyamaになりました!コロナ等の影響で、当初の計画を大幅に変更しなければならなかったにもかかわらず、きっちりと博士論文を書き上げて修了するとは、さすがサルタックが誇るガチムチ筋トレ隊長だなぁ、と感心しているところです。

そんな朗報を目にしながら、ふと自分が書かなければいけない記事があったことを思い出しました。それは、、、「オックスフォード留学を振り返る」シリーズの続きです。タイトルのとおり、オックスフォード大学での博士課程で経験したあれこれをご紹介する連載で、「出願編」や「ファンディング編」、「カレッジ編」などを公開していましたが、改めて確認すると最後のシリーズ記事は2020年3月に執筆した「博士号取得までの道のり(制度編)+新型コロナウイルス」。。。

そこで今回は、2年超ぶりの続編として、博士課程1年目の最後に経験したTransfer of Status(ToS)について少し紹介したいと思います。

先述の過去記事で解説したように、オックスフォード大学の博士課程では、修了するまでに原則として3段階の試験をパスする必要があります。第一段階がToSで、1万語程度のペーパーを執筆して2人の試験官(指導教員以外の教員)に提出し、その内容に基づいて口頭試問が行われます。ToSは、博士課程の正式な学生とみなされるためにパスしなければいけない関門で、これを終えるまでは「Doctoral Student(博士学生)」を名乗ることができず、「Probationer Research Student(見習い研究生)」と呼ばれます。

私がToSにチャレンジしたのは2017年4-5月。当時取り組んでいたテーマは「日本における教育とウェル・ビーイング(特に幸福度)の関係」で、日本研究を専門とする先生とウェル・ビーイングに詳しい社会学の先生が試験官でした。博士論文の全体構成を整理したペーパー(5000語程度)と、先行研究レビューに少し実証分析を織り交ぜた別のペーパー(5000語程度)を用意して口頭試問に臨みました。久しぶりの「試験」ということもあり、前夜からあまり寝られず、緊張しながら指定された部屋に向かいましたが・・・まず試験官の一人が天気の話を始めて緊張感をほぐしてくれました(天気の話をするあたりが超イギリス的・・・笑)。

その後も、ふるい落とすための試験というよりは、今後の研究をどのようにより良くするか、という観点から質疑応答が行われ、理論的なフレームワークから実証分析の細かな設計に至るまで、建設的なアドバイスをたくさんもらいました。今から読み直すと、当時書いていた論文はレベルが低く、「どうしてこんな書き方してるんだろう・・・」と思う箇所がたくさんありますが、とにもかくにもパスすることができました。(一通り質疑応答が終わったタイミングで、すぐに結果を教えてくれました)

ToSの直後、指導教員の研究室を訪れて結果を報告していたところ、試験官の一人が別件で同じ場所へやってきました。貴重な時間を割いて私の拙いペーパーを読んでくれ、色々とアドバイスをくれたことに対して改めて感謝の気持ちを伝えたところ、日本語が流暢なその試験官は「晴れ晴れした?」と日本語で聞いてくれました。全く予期していなかった質問だったので一瞬きょとんとしてしまいましたが、何となく一つのステップをクリアしたことを実感できる場面でもありました。ちなみにこの試験官は、研究者として素晴らしい実績があるのはもちろん、とても気さくで素敵な方で、ToSの後に私の妻と会った際には「Satoshi was well prepared.」と言ってくれたようです(その時は、日本語ではなく英語だった模様)。

こうしてToSをパスすると、通常はそこで議論した内容を踏まえて研究を進めていくことになりますが、私の場合は違いました。というのも、ToSの段階では、上述のように日本を対象とした研究をする予定で、大規模アンケート調査なども計画していたのですが、その後に非常に有用なデータとフレームワークに出会い、違うテーマへと方針転換したからです。それだけ聞くと、一年間を無駄にしたようにも思えますが、個人的には非常に有用な経験で、その後の研究者生活にとっても大きな財産となりました(論文執筆はもちろん、自分の学生に対する研究指導にも役立っています)。

この詳細については、書き始めると長くなってしまいますので、、、オックスフォードでの第二段階、第三段階の試験とあわせて、稿を改めてご紹介したいと思います。

サルタック代表理事 荒木啓史

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