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吾輩もベッドで寝る。

吾輩はポッキーである。この家に来て、二ヶ月になる。

吾輩の家には、二階というものがある。階段があり、そこをのぼると部屋があるのだ。吾輩はたまにその二階に連れて行ってもらうことがある。吾輩は家の中の階段をうまく上ることができないので、必ず抱きかかえてもらいのぼることになる。

二階になにか特別なものがあるのか、と聞かれるとそうでもないようである。どうも二階は人間たちの寝床になっているようである。吾輩は毎日、檻の中で眠るが、人間たちは夜が更けると二階に上がっていく。そして朝になるまで降りてこない。きっと二階で寝ているのだろうと、吾輩は推測する。

二階にはベッドというものがある。少し背の高いふわふわとした布団のようだ。

つい先日、おとんが吾輩を抱えて二階に行った。おとんはかねてより吾輩と一緒に寝たいと言っていたが、おかんがそれを断固阻止していた。おかんは色々な理由をつけては、おとんを説得し吾輩を寝室に入れまいとしていたようだった。しかし、その日は違った。おとんが吾輩を強制的に二階に連れて行ったのだ。

おとんはそのまま吾輩を二階のベッドで寝せた。ベッドはふわふわとして暖かかった。常に人間たちの寝息がしており、吾輩はゆっくりと眠ることができた。いつもであれば、吾輩はひとりなのだ。一晩中ひとりで寝て、朝少しだけ遊んでもらって、昼間もひとりになる。夕刻から夜はみんなと一緒にいることができるが、また再び朝までひとりで眠ることになる。

そんな状況だから、吾輩は朝、物音がすると早く吾輩の元に来てほしいと、必要以上に吠えてしまう。何せ、吾輩はまだ子犬なのだ。構ってほしくて仕方がないのだ。そんな吾輩が人間たちと一緒に寝るというのは、幸せな時間だった。

非常に安堵することができたのだ。そばに誰かがいるということが、こんなにもあたたかいと吾輩は知らなかった。朝起きてもすぐそこに誰かいる。吾輩が吠えずとも、誰かが吾輩を撫でてくれる。

吾輩は誰かのぬくもりが恋しかったのだと知った。

この家に来て二ヶ月になる。まだまだ経験していないことがたくさんあるのだろう。吾輩はこれからもみなと一緒にベッドで寝るのである。





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