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低身長上段のススメ~適性・基礎トレ編~

はじめに

 剣道やってる人にはお馴染みとは思いますが、剣道の構えの中に「上段の構え」というものがあります。竹刀を頭上に振り上げたあの構えです。
 上段は規則上、試合に使用できるのは高校生以上となっているので、高校進学等のタイミングで上段を始める人も多いのではないかと思います。(僕も高校から上段を始めた身です。)
 見た目も派手な構えなので興味を持つ人もいるかと思います。そんな上段を練習してみたい・チャレンジしてみたいと思った時によく言われる事として、「上段は身長が高くないと難しい」というものがあります。実際に指導者などに言われたことのある人も多いのではないでしょうか。

 「確かに自分は身長が低くて上段に向かないかもしれない。そうはいってもやってみたい。でも、どうすればいいのかわからない。」

 そんな人もいると思います。

 僕自身、170㎝以下の所謂低身長ですが、上段を初めて十数年、自分なりに稽古を続けて今もそこそこ、勝ったり負けたりができる程度にはやれています。
 上段の構えと聞く特殊な技量を要求されるかのように語られがちですが、剣道というもの自体がそうであるように、体格に大きく依存することなく、修練のポイントを押さえれば、大抵の人にも習得可能な技術であると僕は考えています(少なくとも僕以上の身長で中肉中背の人ならまず大丈夫と思う)。


 そこで、ここでは身長の必要性の話はひとまず置いておくとして、個人の経験則ではありますが、身長が低いけれど、これから上段に取り組んでみたい人のために、そこそこ上段が使っていけるのを目標に、抑えておくべきポイント、上段の技や稽古の解説、戦い方などを整理しておきたいと思います。自分の経験を基にまとめた箇所も多く、参考にしにくい部分もあるかと思いますが、上段に少しでも興味のある人であれば、低身長の人をはじめ、高身長の人や既に上段に慣れた経験者にも何かしら役立つかもしれないので、暇つぶしに読んでいただければ幸いです。

 長くなるので、今回は適性と基礎トレーニングについて説明していこうと思います。続きはまた別の機会に投稿します。





 1.上段の適性「上段に向く人・向かない人」

 「大抵の人にも習得可能」とは言ったものの、上段に手を出すにあたって、身体的特徴とは別に気質の向き不向きがあります。仮に身体能力が高く、体格が良くても、気質的に上段がやりにくく感じてしまうことがあるかもしれません。逆に、上段に向いてる人は、身体的デメリットよりも気質にあった選択ができる心理的メリット(気が楽になる・落ち着く・集中できる等)が上回る可能性があるので、自分適性があるかも…と感じる人は上段に挑戦してみてください。

 2.タイプ別「上段に向く人」

  (1)雑な人
  言い方があまりよろしくないんですが、「あまり悩まない人」、「難し
 いこと考えるの苦手な人」、「博打打ちタイプ」、「とりあえず攻撃全振
 りにしがちな人」がこれに当たります。上段は攻め重視の構えなので、守
 りに回ったり熟慮するタイプはかえって危険な場面が増えます。迷ったら
 動く、相手の思考なんか知らんってタイプの人は相性がいいでしょう。
  ちなみに自分はこのタイプです。
  
  (2)不器用な人
  器用な上段使いもいますが、器用ならそもそも技の選択肢が多い中段で
 活かした方がいいので、まぁこれは消去法的な選択方法です。
  「同じ技ばかり打つ人」、「得意技で勝負したい人」、「一点突破タイ
 プ」、「ハマれば強いし、ハマらなければ瞬殺されるタイプ」がこれに当
 たると思います。団体戦向きかも。
  
  (3)近間が苦手な人・遠間が得意な人
  中段の間合いが詰まった状態からの攻防が苦手な人、意外といるのでは
 ないでしょうか。上段の間合いを警戒して近間で勝負する人は少なくなる
 ので、そういう人にとってはやりやすく感じるかもしれません。身長が高
 い人が上段を勧められるのも、遠間でリーチが活かせるからなのが大きい
 のでしょうね。ちなみに低身長ならガンガン間合いを詰める近接型上段も    
 可能です。

  (4)中段がしっくりこない人
  「なんか中段やってもしっくりこない」という人がたまにいたりしま        
 す。中段と上段では体の使い方、竹刀操作、距離感覚が違うので、利き
 手・利き足・利き目の違いや骨格バランス・筋肉バランスなどなど複合的
 な理由で中段の構えと動きが体に合ってない可能性があります。「中段で
 伸び悩んでたけど、上段に変えたら自分に合っていた。」、「上段の稽古
 が中段の上達につながった。」という事例も聞くので、現状の打開策とし
 て上段を選ぶのも選択肢としてあるでしょう。初心者指導あるあるです
 が、中段からの一挙動より上段からの振り下ろしに足の動作を合わせるの
 が簡単なのかもしれないですね。
  ぶっちゃけ、中段飽きてしまったという人にも案外いいかもしれないで
 す。

 3.上段に必要なフィジカルと基礎トレーニング

 上段習得にあたって必要なフィジカルというものがあります。なんだ結局体格じゃんと言われるかもしれませんが、上段中段関わらず、そもそも基礎体力、基礎筋力が不足している為に足踏みしている人も多く見受けられます。低身長とはいえ、フィジカルで解決できる問題はやはりフィジカルで解決しましょう。それだけでも身長の不利を埋められる可能性が高くなります。
 とはいっても、無茶なトレーニングは禁物です。アスリートレベルの筋肉は要らないので、ちょっと意識して鍛えるくらいのトレーニングと思ってください。当然、これらのフィジカルトレーニングは中段にも有用だと思います。


  (1)手首・上腕・前腕
  上段を習得するにあたり、竹刀を振り上げた状態をキープし振り下ろし
 て攻撃するので腕の力はそこそこ必要です。こまめにトレーニングしてい
 きましょう。
  ブッシュアップ(腕立て伏せ)に代表される自重トレーニング、ダンベル
 を使ったアームカール、リストカール、手の空いた時間にできるハンドグ
 リップなど、自分に合った回数、負荷で行っていきましょう。YouTubeに
 トレーニング動画がたくさんあるので検索してみるのをお勧めします。(参
 考に置いておきます。)

  重い木刀や竹刀を何百本も振る素振りも有効だとは思いますが、負荷が
 かかりすぎる上に時間もかかるので、基本的に素振りは打突動作の正確性
 や再現性を高める目的で留め、筋力は筋力トレーニングで補うようにして
 いきましょう。(僕はそこそこ上段ができればいい程度にしかやっていない
 ので、肘や手首の怪我とは幸いにも無縁です。)

  (2)下腿、大腿、足首のトレーニング
  剣道において脚力は必須の要素ですが、上段は左右どちらの足でも飛び
 込み、踏み込みをするようになるので、両足をバランスよく鍛えましょ
 う。ふくらはぎを鍛えるカーフレイズ、大腿にはスクワット、ランジは踏
 み込み足の要領で行えるので、素振りとも並行して行えます。それぞれ自
 重、ウエイト付きなどで負荷を調節して行うのをお勧めします。中段に慣
 れた人は、右足の脚力が左足に比べて弱いことが実感できるのも上段習得
 の意外な効果かもしれません。(参考動画の一部です。)

  (3)体幹トレーニング
  上段の片手技は、打突後に姿勢が崩れやすいので、腕力だけでなく体幹
 で支えることが重要になってきます。残心を取るのも、この体幹がしっか
 り鍛えられているのとそうでないのとでは、見栄えが変わってくると感じ
 ています。打突後の姿勢が綺麗な選手は、やはり体幹も重点的にトレーニ
 ングしているのではないでしょうか。
  代表的なトレーニングのプランク系メニューは、自宅でできるトレーニ
 ングなので家にいる間の暇つぶしにお勧めです。普段の稽古ではなかなか
 鍛えられないお腹や腰周りを意識してトレーニングしましょう。(参考動画
 の一部です。)


  (4)スタミナ(全身持久力)
  上段の特徴である攻めの姿勢を持続させるためには、スタミナも必要で
 す。というより、剣道全般においてスタミナが必須なので、ジョギング、
 自転車、水泳など、自分にできるものから手を付けてみましょう。最初の
 うちはウォーキングからでも結構です。無理のない量を何度か繰り返した
 後、少しづつ距離やペース上げていきましょう。一般的な剣道の稽古だ
 と、瞬発的に動いては元立ちに替わったり相手を替えるトレーニングなの
 で、長時間動き続けるような内容のトレーニングを意識的に組み込んでお
 いた方がいいと考えています。(ジョギングの記事などはnoteにも多いので
 検索することをお勧めします。)
 
  

 


 4.あとがき的なもの

 ずいぶん前から「身長の低い自分でも上段できるから、そのことについてなんか書いたろ」と思いながら数か月経過してました。
 下書きは進んでたんですが、いざ記事としてまとめるのが億劫で放置しておりました。反省してます。
 続きを投稿すると言った手前、責任をもって最後まで書ききろうと思います……
 ……あと構えとか足さばきとか基本打ちとか応用技とか試合の仕方とかけっこう残ってるんだけど、まとめきれるのかな、これ。まぁ、細々と継続していけるように頑張ります。

 ところで、「上段は高身長でないと」とは誰がいつ頃言い始めたんでしょうかね。上段をやっていて個人的にはそういう事は言われたことがなかったものでピンとこないんですが、なんかいつの間にか剣道経験者の中に共有されてるみたいなんですよね。やはり体の大きい人が上段を取るとそれだけで目立つし、実際立ち合ってみても有利なのは間違いないんでしょうね。
 ただ、当たり前の話なんですが、「上段の構え」自体は、高身長の人のために用意された構えではないので、昭和以前の剣道家は小柄でも各々かなりの自由度で構えを取ったり、技を打ってたみたいですね。現代人より明らかに小さい人が片手技バンバン出すような時代ですから。
 対人競技である以上、体格による有利不利は絶対に存在してるわけですが、それ以外の要素も多く絡むのが剣道の競技性なので、そこをどう理解して自分の剣道に落とし込むのかも、稽古や試合の面白さでもあるんじゃないかなと思っています(体格が決定的な要素なら、階級制にでもした方がずっと公平でもありますし)。
 次回は、構え方や基本的な技の出し方なんかを書けたらいいなと思っています。また準備に時間がかかるかと思いますが、気長に待っていただければありがたいです。それでは。
 
 
 

 


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