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甘さも苦さも、それは自分を満たす栄養。


「バニラな毎日」 著:賀十つばさ


今日はもう何も食べたくない。

何を食べても同じだから食べても食べなくても同じ。


仕事も恋愛も上手くいっていなくて、不安で怖くて眠れない時期があり、そういう風にしか思えなくなっていた。

この頃、“好き嫌いがないから”  “こだわりはないから”と相手に合わせてばかりで、自分が何を食べたいのかも分からなくなっていた。

料理をする気力も体力もなく、コンビニで生存維持目的だけの食事をしているだけ。

混沌とした日が続いている時、スーパーで美味しそうな袋ラーメンが売っているのが目に入り、思わず購入した。

作るのは面倒だけど、お湯を沸かして、茹でるだけだから…。あ、乾燥わかめも入れようかな。どうせだったら卵も落としたいな。

作っているうちに少しずつ、自分のかけらを集めていく感覚になった。

自分が好きなもの、気に入っているやり方、何となく続いていた習慣、興味があったこと…。

少しずつ少しずつ、かけらを集めて、

少しずつ少しずつ、自分を許せるようになった。

そんな作業を繰り返して、今はまあ、何とか暮らしています。


「バニラな毎日」で描かれているのは、作り上げられた味の品評会ではなく、自分の手で作っていく過程と自分の味の部分。

成功とか失敗とかあるんだろうけど、今の自分が作った今の味を楽しめるのは自分だけなんだよ。

というメッセージが伝わってくる物語です。


私は読みながらお腹がとても空きました。

お腹が空くということはとても幸せな感覚なんだなと、今の私は知っている。

甘いだけの日常ではないけど、酸いも苦さも全部お腹に入れて、自分の栄養にしちゃおう。

あったかい飲み物ととっておきのお菓子をお供に、ぜひ。


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