セルフコンパッションを構成する3つの要素

セルフコンパッションの定義

 セルフコンパッションの第一人者としてクリスティーン・ネフ博士がいます(博士が著した本「セルフコンパッション」はオススメです)。https://www.amazon.co.jp/dp/4772413960/

 テキサス大学オースティン校の准教授であるネフ博士はセルフコンパッションを以下のように定義しています。

困難に直面した時、自分自身を肯定的、否定的側面の両方を優しく理解し、受け入れ、その苦しみが人類に共通していることを認識し、感情のバランスをとれる特性

わかりにくい言い回しなので、今回は別なアプローチをとりたいと思います。ネフ博士はセルフコンパッションには大きく3つの構成要素があると言っています。

1.自分に優しくすること

2.私たちは世界を共有していることを認識する

3.ありのままの世界に対してマインドフルになる

こっちはわかりやすいですね。なのでこの3つを軸にセルフコンパッションを説明してみます。

1.自分に優しくすること

 わたしがセルフコンパッションについて説明する際につまづくのがここです。「セルフコンパッションはまず自分に優しくすることで・・・」から「でも、それって自分を甘やかせってことだよね」という返しに大抵つながります。ですので、あなたも自分に優しくすることに抵抗があるかもしれません。

 でも考えてみてください。例えば、あなたは毎日投稿することを目標としています。そして、来る日も来る日も欠かさず投稿を続けてきたとします。ですが、ある日その連続投稿が途切れてしまいました。それは外せない用事が出来てしまったからかもしれません。もしかしたら体調を崩してしまったからなのかもしれません。あなたは思うでしょう「やってしまった!!せっかく続けてきたのに途切れさせてしまった!(自分はダメなやつだ)」

 そんな時、ひとかけらの優しさを自分に向けてみてください。たしかにあなたは欠かさず投稿し続けることを目標としていました。それが途切れてしまって自己批判をしたくなるかもしれません。ですが、

「あなたが続けてきたことは全くの無駄だったのですか?」

 継続することを目標としていたのに途切れさせたのは否定されるべきものです。一方、これまで欠かさず続けてきたことは肯定されるべきものです。しかも、ずっと続けてきたことであなたの文章力、表現力、感性は始めた頃とは比べ物にならないほどになっているはずです。

 どうかあなた自身のために「失敗した!?」と感じた時はネガティブな面だけでなく、ポジティブな面にも目を向けてあげてください。自己批判では「自分が悪かった。次は起こさない」で思考停止してしまいますが、ポジティブな面にも目を向けてあげるとより客観的に考えられます。例えば、「今回は途切れてしまったが、これまでは続けてこれた。それに、時間当たりの文字数も増えてきてる。だったら余裕がある時に書き溜めておこう。予約投稿もいいかもしれない」みたいにより建設的になれるはずです。


2.私たちは世界を共有している

 私達は世界を共有していることを認識する。あるいは「共通の人間性の認識」とも表現されます。

 あなたは苦痛、挫折を味わった時「なんで僕がこんな目に」と思うでしょうか。もしくは鏡を見て「なんで私はこんな顔なのかしら」と恥じ入るかもしれません。その様な、まるで世界から自分が切り離されたような孤独感に襲われたことは無いでしょうか。この時私達は自分の置かれた苦境や自らの美醜に注目しています。そして人間はいったん一つのことに注目してしまうと視野が狭くなり、他のことに目を向けることが難しくなってしまいます。

 孤独感を感じたら一度自分に優しさを向けてみてください。そして世界には自分以外にも人がいて、皆がそれぞれ悩みを感じていることを感じてください。きっと世界がクリアになるはずです。

 例えば、仕事で失敗が重なり、うまくいくイメージが持てないとしても、いったん立ち止まって自分をいたわってみませんか?

「失敗は誰にでもある(失敗しない人間はいない)」

「契約は取れなかったがそもそも相手もビジネスをやっているんだから取引先を選定するのは当然だ(相手にも相手の理由がある)」

「なぜ失敗したのか?その原因を知ることはなぜ成功したのかを問うことの何倍も大事だ(僕らは失敗した悔しさからしか学ぶことはできない)」

みたいに考えてみませんか?だんだんと自分ひとりで世界が完結しているのではなく、他人とつながっていることが感じられ孤独感がやわらぐはずです。そして、「この苦しみは自分のものだ。だけど、同じような苦しみを味わっている人もいるはずだ」と思えるようになるでしょう。そして、苦しみを乗り越えた時にはより良い自分を目指そうとするモチベーションがわいてくるはずです。


3.ありのままの世界に対してマインドフルになる

 マインドフルあるいはマインドフルネスは状況をありのままに見つめることです。いろんな企業がマインドフル瞑想を研修に取り入れたりと近年何かと話題になっているので知っているかもしれませんね。

 マインドフルネスとは苦痛を感じている時に「ああ、私は今苦しいんだ」と、怒っている時には「私は今怒りを感じている」と自分の状態をモニタリングするように善悪の判断を介さずに中立的に受け入れることです。あるいは意識していることを意識するとも説明されます。自分に優しさを向けるにはまず、苦しい時には自分が苦しんでいることを、怒っている時には自分が怒っていることを認識しなければなりません。自分に優しさを向けようとすると「優しさを向けようとしている自分」と「優しさを向けられる自分」を認識するのでマインドフルな状態になります。先に紹介したネフ博士はマインドフルの反対として抑圧された感情を爆発させるプロセスを過剰な同一化と呼んでいます。このような状態は感情を感じている自分と自分自身との間に差がなくなってしまっているので、「もっと別な角度から見ることはできないだろうか?」と考える余裕がなくなっているのです。

 例えばあなたはホラー映画を見ますか?マインドフルは映画に例えられたりします。ホラー映画でこんなシーンはありませんか?

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ヒロインが薄暗い廊下を歩いている

ヒタ、ヒタ、ヒタ、ひた


違う足音が背後から聞こえる? だけど私一人しかいないはずだ

立ち止まると音がやんだ。自分の足音が反響していたのだろう、そう思ってまた歩き出す

ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ(ひた)、ヒタ(ひた)

いや、絶対に違う!自分の足音と重なるように!でも確実に自分の足音ではない!!

恐る恐る、後ろを振り返り、そこには・・・


廊下しかない。

切れかかっているのだろう蛍光灯がさびしそうに黄ばんだ光をときどき明滅しながら照らしている。壁や窓も古く、不気味な印象を放っている。だがそれだけだ。

やはり、気のせいだったか。そう思い、再び進んでいた方を向くと

!!!!!!

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 その時、隣からむしゃむしゃとポップコーンを食べる音が聞こえてきた。「ああ、そうだった。私は今映画館で映画を見ていたんだ」と、映画に没頭して恐怖を感じていたのに現実に引き戻された経験はありませんか?マインドフルネスはこれと似た方法で機能します。映画のヒロインと私を同じものとして見ていた意識が「映画のヒロイン」と「映画を見る私」をわけて見るようになります。

 私達が映画を見つめるように自分の感情を意識すると自分自身を客観的に見ることができ、感情に支配されて自分を見失うことも少なくなるでしょう。そして、その時あなたは恐怖に震えるあなた自身にそっと「大丈夫だよ」と言えるでしょう。

最後に

 いかがでしたでしょうか。私なりの解釈クリスティーン・ネフ博士が唱える3つの構成要素をもとにセルフコンパッションを説明してみました。もし興味がわきましたら是非ご自身でもセルフコンパッションを調べてみてください。

”何よりもあなたが努力して幸せになれますように。あなた自身のためにセルフコンパッションを持てますように”

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