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#48 いちばん向かない職業

誰にも職業の向き不向きがあると思いますが、僕が一番なれそうにない仕事は何かと考えると、それは公務員ではないかと思います。僕をよく知る人たちはきっと大きく頷くはずです。



自然に振る舞うと…

note でも「本当は〇〇したいけど、なかなかできない」という記事を見かけるのですが、「みんな日本文化に合わせて行動していて、すごいなあ」と思います。というのも、僕は次の通りだからです。

・社会人経験21年間、有給消化率は完全100%
・結婚記念日は有給 or 早退で必ず妻と過ごした
・周囲が「夏休み3日欲しい……」のところ、9連休『土日〜次の土日」取得
・直属の上司に話してもらちが開かなければ、迷わずすぐにその上の役員に相談
・研修会などで「質問ありますか?」と聞かれたら、たいてい最初に手を挙げる

自然にしていると、こうなる

上司を飛び越えてその上に相談するのはよくないと思われがちですが、そのやり方で問題を早期解決していたので、誰にも何も言われませんでした。会社にとっての利益は問題の早期解決であり、順番に話を上げることではないはずです。自然に振る舞っているとこうなるので、誰がどう見ても「日本の公務員は無理」ですね。


研究員の社会的立場

先日、今日9月1日からのダルムシュタット工科大学での研究員としての雇用契約書にサインをしました。大学事務の責任者から説明を受けたのですが、最初に釘を刺されたのが、

この大学は州立大学なので、研究員はヘッセン州公務員扱いとなります
(うそっ、何それ……)無言で驚く

その瞬間まで知らなかった💦

その後少し茶目っ気のある表情になった彼女は、

だから一般の人よりお行儀よくしなきゃいけないんですよ!
You should behave better than normal people!

彼女はドイツ生まれではなく英語ネイティブの方ですが、あまり使わない normal people という言い方をしたのが印象的でした。ということで、晴れて?今日からドイツ、ヘッセン州公務員です。公務員用の交通パスをもらったので、州内の交通機関はドイツ新幹線以外、すべて無料になりました。

宣誓の記録

ドイツでは(日本でもそうかもしれませんね)、公務員になるにあたって宣誓を求められます。本来はドイツ語のはずですが、僕の場合は英語のものが用意されていました。全文をここに載せることは控えますが、最後の部分は次の通りです。

……ドイツ連邦共和国憲法および法令を遵守することを誓います。

生まれて初めて「宣誓」した

と声に出して宣誓文を読み上げました。その確認は、「大学責任者との握手による」と書類に明記されています。「お行儀良くしなきゃいけないんですよ!」の彼女と握手をして宣誓を終え、無事契約が完了しました。文字にするとうまく伝わりませんが、実際にやってみると、重みを感じました。

厳しい服務規定

その後、服務規定についての説明を受けました。

そうそう、特にアジア出身の人には言っておかなければならないわ……日本では、贈り物をする習慣があるわね?ここでは、一切の贈り物は禁止。国に帰った時のおみやげもダメ。教授はお菓子1箱受け取らない人だから、決して何か持って行ったりしないでね!何か買ってくる時は、給湯室に全員宛におくこと。それも10ユーロ以下の物にするように。

釘を刺されたこと

そんなに厳しいのか……確かに、博士号が取得できるかどうかの最終判断は教授によるので、おみやげが贈収賄とみなされるというのも理解できる。さらに釘を刺されます。

学部生の卒論の指導をすることになると思うけれど……間違っても物を受け取らないように。

アジア人同士だと特に要注意

ダルムシュタットには日本人はほとんどいませんが、中国や韓国からの留学生はそこそこいるので、中国・韓国と日本なら、文化的に「よろしくお願いします」的な贈り物はあり得そうです。それも、周囲のドイツ人から見れば「これでいい評価をお願いします」に見えてしまうのだと思います。これは本当に、気をつけようと思います。「あなたは学生ではなく、大学の研究員」と繰り返し言われました。

お世話になる先生には、和菓子くらい持って行きたかったが……
多分「お世話になる」という感覚はなく「契約に基づいて勤務する」なのだろう

「お行儀よく」の中身

最後に、「お行儀よく」のもう少し深い意味を説明してくれました。ここは、少し感動した部分です。

週末はちゃんと休むこと。無理をして体調を崩したら、業務に支障が出ます。オフの時間はリラックスして楽しんで、常にクリエイティブなことを考えられる状態にいることが、研究員としての義務だと考えてくださいね。

遅くまで研究室に残っていると、仕事の能率が悪いという評価になる

同じくドイツに留学している人のブログなどを読むと、「週末はフリーパスを使ってお金をかけずに州内の他都市を訪ねてまわっています」というような記事を読むことがあります。そういうことか……少しだけ分かったような気がしました。説明してくれた彼女は、いつか日本の熊野古道を歩くことが夢だそうです。

*     *     *

こんな経緯で、日本では務まりそうのない公務員を、なぜか海外でやることになりました。今日はまだフィンランドにいて、勤務開始日が出張中とはなんだか妙なスタートではありますが、お行儀よく進んでいきたいと思います。

今日もお読みくださって、ありがとうございました🇩🇪
(2023年9月1日)

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