マガジンのカバー画像

書評

15
運営しているクリエイター

記事一覧

消せない街の記憶:書評 Louisa Lim 『Indelible City: Dispossession and Defiance i…

いい本に出会えた気がするので、まだ精読の途中だけれども、紹介したい。 2022年に出版された…

阿栗
8か月前
11

香港が香港でなくなるとは私たちにとってどういうことなのか 【書評『辺境の思想』】

半年前に依頼されて書いた書評が、このタイミングで公開になりました。 福嶋亮大先生と張彧暋…

阿栗
3年前
3

写真は「真相」を伝えてくれるのか 【書評:『The Cruel Radiance』】

このところの香港の状況に、何も言葉が見つからないでいる。 「暴徒」たちの写真と「香港の真…

阿栗
4年前
9

香港全土をキョンシー化する陰謀の話:『廟街有殭屍』 【シリーズ 香港広東語文学の世…

こんな時期なのに、と言うかむしろこんな時期だからなんだけど、香港の掲示板で連載されたネッ…

阿栗
4年前
5

精霊につかまった子ども:文化と医療を考える 【書評『The Spirit Catches You and Yo…

自宅に篭って読書する中で、また素敵な本に出会えた。 1997年にアメリカで出版された『精霊に…

阿栗
4年前
13

小さな次元:危機の中の香港文化研究 【書評『Myself a Mandarin』】

こんなご時世なので、普段は時間がなくてなかなか読めないような、本来の研究とは少し外れた本…

阿栗
4年前
4

[書評] 最強の香港問題入門? 『香港第一課』

最近香港で(正確には台湾で)出版された『香港第一課』という本を手に入れた。 タイトルの通り香港を理解するための入門コースのような一冊で、翻訳されて日本語で読めるようになるといいなと思う本だった。ちなみに中国語版は電子書籍が日本のAmazonでも購入できるみたい。 人文地理学者・評論家の梁啟智が、WebメディアのMattersで連載した記事を書籍化したもので、昨今の香港情勢についてのありがちな疑問に答えている。 参考までに目次を訳すと、以下のような感じになる。 第一部:

危機の中の地域研究、あるいは文系の院生はどう「役に立つ」のか——『香港危機の深層…

『香港危機の深層』の発売直前に、この本は「現実の危機に際して、役に立たないと思われがちな…

阿栗
4年前
10

好評発売中『香港危機の深層』を読むために

昨年末に緊急出版された『香港危機の深層』、年末年始に重なってしまい流通が行き届かなかった…

阿栗
4年前
7

たいせつな言葉で読む、たいせつな物語:『星の王子さま』広東語版  【シリーズ 香港…

広東語文学というものがあるのであれば、広東語翻訳文学というものもあっていいはずだけど、実…

阿栗
4年前
13

中古のiPhoneを買ったらSiriが呪われてたけど彼女のおじいちゃんが凄腕霊能者だったか…

昨今の香港で出版されている広東語口語本には、 (1)セリフ部分だけ口語 (2)地の文もすべ…

阿栗
4年前
4

日本企業に就職してウキウキだった香港人女性が田舎の工場で夜勤をするはめになって四…

「香港広東語文学」とわたしがこっそり呼んでいる香港の口語出版物は、厳密に言うと二種類にわ…

阿栗
4年前
4

橋本環奈と新垣結衣が出てくる香港の小説の話:『降頭師之日常』【シリーズ 香港広東…

香港の小説を読んでたら橋本環奈が出てきてびっくりした。 と思ったらなぜか陰陽師もガッキー…

阿栗
4年前
4

書評:門小雷 Little Thunder 『Sisterhood』

香港の漫画家、イラストレーターの門小雷(Little Thunder)の作品集『Sisterhood』を買った。イラストと漫画と、インタビューがおさめられている。知らなかったけど、日本でもこんな作品集が出るくらいアート界隈でら注目の人らしい。 6月からの香港の一連の抗議運動の中では、SNSを中心に活躍する香港人絵師たちが印象的な場面(主に警察の不適切な対応を描くもの)やスローガンなどをイラスト化して拡散する様子が目立っている。それをパラパラと眺めている中で、政治関連の投稿数