見出し画像

カッコ悪い心

今思えば当時の担任の女教師は
何故あんな試みをしたのか…
小学5年の学年末
最後の学活の時間に
クラス全員の名前の書かれた
一枚の紙が配られた。

みんなの良い所悪い所
それぞれ匿名で書けと言うのだ。

書いた紙は集められ切り刻まれ
全員の自分宛ての細長い紙が渡される。
それをまた一枚の紙に糊で貼り付け
クラス全員の自分の評価が見せつけられる。


これは11歳のサティにとって
衝撃的な思い出となった。


良い所はまぁいいとして
悪い所の匿名性はいただけない。
まるでネットの書き込み…
人の悪い心を煽る結果となった。

自分の物を目にするまでは
そんな事実は想像もせず
サティも匿名性をいいことに
クラス全員の悪口を書いてしまった。

日頃快く思ってない子なんかには
我が儘だ自己中だ自慢話ばかりするだ
なんだかんだと
存在感の薄い子なんかには
存在感0だなんだかんだと
そりゃあ好き勝手に書いたものだった。


学年末の大荷物をぶら下げながら
サティ達は女友達4人と下校した。
学校横の公園の入り口でいつものように
立ち話をした。
自然と話題はその話となり
みんなそれぞれに
その衝撃にうちひしがれていた。

劣悪な言葉の羅列…
辛辣な書き込み…
人の心に潜む悪意…

そんな中
たった一人だけ
悪い所に『何もない』
良い所に『優しい』
と書いてる子がいた。

サティはその時
それを書いたのは
そこにいるミーコだと直感した。

他の子の紙を見ても一人だけ
『何もない』
がみんなそれぞれに一つだけある。

ミーコはいつもみたいにオチャラけて
お笑い芸人ばりに別の話をしていたけれど
サティはその時の彼女が光輝いて見えた。
まるで後光が差しているかのように
まばゆいばかりに輝いて見えた。
彼女はそんな紙など目もくれず
相変わらずの圧倒的言語センスで
公園の入り口で面白話を繰り広げている。


ミーコ超カッコいい!


彼女は悪い誘い水に煽られて
無用に人を傷付けることはない。
自分の確固たるスタンスを
しっかりと確立しているのだ。
サティは心の中で
そんな彼女を羨望の眼差しで眺めていた。

それに引き換えサティは
まんまと踊らされ悪い心を誘発された。
自分の書いたその時の思いを振り返り
激しい羞恥の念に苛まれていた。

消せるものなら今からでも
消して回りたい。
自分は楽しんで悪口を書いた。
その時の自分は紛れもなく
楽しんで人を傷付ける悪口を書いたのだ。


その出来事がきっかけで
その苦い思い出がきっかけで
サティは自分の心の奥に潜む
悪い心を見つめるようになった。
元々批判精神旺盛の反骨魂の人間だが
《正々堂々の批判》と《悪意ある陰口》
とは別のもの。


人の不幸は蜜の味

大人になってもそんな人間
案外たくさんいるもんだ。

悪い心は弱い心

言いたい奴には言わせておけばいい

悪い心は弱い心


とてもカッコ悪い心なんだ。





* * * * * * * * * * * * * * * *

最後まで読んでくれてありがとう(*^^*)♪

またサティに会いに来てねー(^з^)~.:*:・'°☆



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?