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耳を傾けて

生活に困難さを感じている人、私の仕事(介護職)で言えば利用者様がそうであるし、うちの家庭で言えば次男(うつ病、自閉スペクトラム症)がそうである。こういった人を支える際に必要になるのは周囲、特に家族の理解である。


認知症になった利用者様のご家族は、以前のシッカリした姿を基準としてみてしまい、認知症によって出来なくなった事がある事をなかなか受け入れることができずに、できない事に対して苛立ちや悲しみを持ち、キツイ言葉や態度になってしまう。

私も次男が学校に行けなくなった時には、何とか以前のように元気になって欲しいとの思いから、原因を追求したり、無理に学校に連れて行こうとした事もあった。テストが近くなると必死で勉強を教えたりした事もある。
しかしそれは私の自己満足であって、本人は辛かっただろうと今なら思う。

家族であるが故、何とかしなければとの思いが強く、こういった行動に出る訳だが・・・。
しかしこういった行動は本人の自尊心を奪い、より症状を悪化させてしまう。

仕事ではご家族様に「辛い時にはいつでも相談してください」と声をかけている。
要介護者を一人で支援するのは困難。無理をして支援者が先に倒れると要介護者は生活そのものが困難になる。
認知症では、中核症状と言って必ず出るような記憶の障害であったり、実行機能障害の他に、周辺症状(BPSD)と言って環境などによって出現する症状がある。暴力や暴言、帰宅願望や願望や物取られ妄想などがこれに当たる。
これらは支援者の関わり方で関わり方で随分変わってくる。

支援者が無理をしなくて良くするために必要なのは、生きづらさを感じている人の症状や今後の経過について大まかでも知っておく事。
知ったからといって状態が必ず良くなる訳ではないが、症状によっては出現しないものや改善する事もある。

認知症高齢者の場合では、周辺症状は格段に変わってくる。
認知症になったからといって、全て分からなくなるのではない。
嫌な事を言われると、言葉自体は忘れてしまっても、嫌な事を言われたという負の感情は残っていると言われる。

失禁すると不快感を感じるし、何とかしないといけないと思う。
しかし、片付ける方法が分からないからタンスに失禁した下着を隠したり、手についた便を綺麗にしようと思って壁に拭きつけたりする。

もし家族がそういう事を知っていれば、トイレに行ったらついて行くことで汚染を最小限度にとどめる事ができて、本人も家族も負担が少なくて済む。

精神疾患や発達障害などでも同様なケースはあるのではないだろうか。
息子は無理に学校に行かそうとする事をやめ、勉強も本人の意思に任せ、自分のしたい事、将来のビジョンを一緒に考える事で少しずつではあるが状態の改善が見られている。

焦って、すぐに良くなって欲しい気持ちは痛いほど分かる。
しかし、焦れば焦るほど状態は悪化する。
焦りが伝わり、プレッシャーになるからではないだろうか。
生きづらさを感じている人は、そういうセンサーは敏感だと思う。

慌てないで欲しい。
その人その人で困っている事は違うだろう。
だからその人に合わせて寄り添う必要がある。
その人を大切に思い、自尊心を守って行く必要がある。
自尊心が守られると、安心して行動が起こせ、ようやく先に進めるようになる。
自尊心が傷つけられた状態で進もうとしても、あまりに脆く、少しの出来事で傷が増えてしまう。
そうなると更に前進が難しくなる。

生きづらさを感じている人が親であれば、思い出して欲しい。
自分が子供で何もできなかった時にどれだけ助けてくれたかを。

生きづらさを感じている人が子供であれば、生まれてきた時のあの笑顔を。
子供は3歳までに親孝行をするという事を聞いた事があります。
ただ笑って側にいてくれるだけで幸せだったはず。

決して、支援者を責めているのではない。
大切な人を守るために自分なりに必死なんだから。
ただ、支援をする側も受ける側もお互いがしんどくないようにするために、
今一度、生きづらさを感じている人が笑顔だった頃を思い浮かべて欲しい。


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