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"芸人"になるには

構成作家・放送作家・漫才作家の里村です。

前回は作家の仕事についてと、作家になるにはどうすればいいかについて書かしてもらいました。今回は芸人になるにはどうすればいいかというお話です。

芸人とは?


じゃあまず”芸人”ってなんだろうというと、前回の作家の時と同様で、自分が名乗った時点で芸人です。違うところは、作家は金にならんとやってられんのですが、芸人は金にならなくてもやっていけるというところです。

僕が、芸人と作家の両方をやって確実に言えることは、「芸人の方がお金を稼ぐのは難しい」ということです。作家は、ちゃんとしたプロセス(芸人から転向する、事務所に入るなど)さえ踏めば仕事はあるので、それさえこなしていれば1年目から毎月ある程度のお金は入ってきます。
若手芸人はいきなり仕事があるなんてことはありません。そしてあっても単価が安い。舞台によってはお金を払って出る舞台もありますし、祇園花月の前説なんて電車往復800円でギャラ500円でした。

それでも芸人をやるのは「金にならなくてもやりたいこと」なんだからだと思います。僕は”作家”が「職業」であるのに対して、“芸人”は「概念」や「信念」のようなものだと思います。もちろん作家にも「信念」はありますが、芸人ほど金にならなくてもやりたいと思えるものでは無いと思います。

この金の部分に担保を持っているのが、最近増えている社会人漫才師です。「職業」を別に持ったうえで「信念」を表現するという、今までではありえなかった形です。その中でもラランドは”芸人”を「職業」にした珍しい例です。

ですんで、面白いことをしたくて実際にネタをやってる時点で”芸人”と言っていいんじゃないでしょうか。

職業としての”芸人”になるには


では、ここからは”芸人”を「職業」にしたい人への話です。やはり芸人としてお金を稼ぐには、事務所に入るのが一番の近道だと思います(もちろんフリーの活動もあることにはありますが、今からの話とはだいぶ違う方向になるのでまたの機会に)。事務所に入る方法としては、以下の方法があります。ちなみにここで言う”芸人”はお笑いの舞台に立つ人のこととします(これからは最初からYouTubeなどネットを主戦場とする芸人も現れると思いますので)。

①養成所に通う
②オーディションを受ける
③スカウトされる

①のパターンは、今の時代一番多いと思います。吉本のNSCや、ワタナベのWSCなんかが有名ですね。僕も大阪NSC25期に通っていました。お金を払って1年間通い続ければ所属にはなれるので手っ取り早いです。

②のパターンは、大手事務所では無くなってきています。なぜなら養成所に通わないと、オーディションを受けられないシステムになってきてるんです。昔は、NSCに通っていなくてもオーディションを受けることが出来ました。ミルクボーイもそうですし、霜降り明星、NONSTYLEさん、チュートリアル福田さん、笑い飯哲夫さんもそうですね。こんだけM-1チャンピオンがおるんなら、NSC通ってなくても受けられるようにしたらいいのに。

③のパターンは、昔オール阪神巨人師匠がスカウトされて入ったそうですが、それ以外に聞いたことがありません。他にいるんでしょうか?

つまり99%養成所を出ないと事務所には入れないということです。時代ですね。

芸人が世に出るまで


さて、これで事務所所属になったものの、そこからどうやって世に出ていくのかみなさんご存じでしょうか?

ほとんどの事務所が、事務所内でのネタバトルライブによるヒエラルキーを構成していて、その上部に存在する人に仕事が与えられます。たとえば大阪吉本ですと、NSCを卒業するとオーディションメンバーに所属します。ここにはなんと約500組がいると言われてます。そのメンバーが2か月に1度のオーディションを受けて、上位40組ほどが次のバトルに進みます。次のバトルではお客さんの投票によりさらに20組ほどに絞られます。その次が吉本の若手の劇場(よしもと漫才劇場)で定期的に出番があるメンバーとの入れ替え戦になります。ここで勝てば晴れて出番がもらえるポジションになるわけです。逆に負ければまたオーディションからやり直しです。もちろんメンバーからの降格もあります。
そして、劇場のメンバーになるとテレビ番組のオーディションなどにようやく呼ばれるようになります。つまり、先ほどの厳しいバトルをまず勝ち進まないと話にもならないわけです。なのに、このオーディション組から10年以上勝ちあがれない芸人がゴロゴロいます。みなさんが普段テレビで見ている芸人さんたちの足下には、無数のリビングデッドが埋まっているのです。

他にも、賞レースで勝つことも仕事の有無につながってきます。しかし、M-1やキングオブコントのようなエントリー制の賞レースでない限り、劇場メンバーで無いと予選すら受けられませんので、賞レースに勝つ前に上記の戦いに勝つ必要があります。
そして、ようやくテレビに出てからも生存競争は続きます。そこで面白くないと水の泡。また一から出直しとなります。ここでも勝つことが求められます。

要するに「勝たなきゃダメなんだ!」です。カイジの利根川先生の言葉が芸人にすごく当てはまります。僕は、その勝つお手伝いを出来ればいいなと思っている次第です。
その第一歩として、次回から「ネタの作り方」について書いていこうと思います。

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