メタモルフォーゼ：変容

青梅をすりおろし、絞り、
絞ったエキスを煮詰めた果に現れた梅エキス。

黒く、強い粘り気があり、
状態は、飴みたいな感じ。
常温では殆ど固まってしまっているものの
ちょっと熱を加えると溶ける。

ひとり、途方もない数の梅をすりおろしていると
色々なことがわかってきた。

梅の表面の状態と、中身の状況の関連性。
一見青い梅でも、黄熟が始まっている梅は水分が強く
簡単にはすりおろせない。

といって、梅の状態だけが
すりおろしに影響を与えたのではなかった。

一つ一つの梅に
「ありがとう」と声をかけてからすりおろすと、
驚くほどスムーズに、かつキレイにすりおろすことができた。

１年の年月をかけて育ち、私の手元にやってきた梅たち。

まさかその最後が、梅干でも梅酒でもなく
すりおろしの刑（笑）になるなんて
想像もしていなかったろうに・・・。

そんな事を考えながら、すりおろしていると
梅たちの健気さに、目頭がうるんでしまい、
「あなた達の命、たしかに受け取ります」
そんな気概が湧いてきた。

梅と火と人間と

この梅仕事は錬金術のようだった。