見出し画像

日記と「ベートーベンがもしも無人島に生まれて一度も音楽を聴いたことがなければ」という問い。

 日記を毎日書くことは難しかった。
 正確に言うと、今の僕の日常の繰り返しの中だと毎日パソコンに向かって文章を書くことがまず難しいのだと気づいた。

 通勤時間が往復で四時間弱。部屋に帰ってからご飯やお風呂、家事をもろもろやっているとパソコンの前に座れても一日一時間から二時間が関の山だった。
 それでも座って文章に向かうべきなんだろうと分かりつつ、その前にしておくべきことがあると思い始めました。
 後半でこの「しておくべきこと」について触れさせてください。

 まずは、挫折した日記を。
 
 ●●

1月9日

 連休が明けての初出勤。
 睡眠は十分にとれた気がする。
 朝の電車の中でシラスのゲンロン完全中継チャンネルにて放送された「魚豊×小川哲 司会=渡辺祐真(スケザネ)「人は陰謀論に抗えるのか──『チ。』作者と直木賞作家が語り合う」」のアーカイブを聞き始める。

 イベント概要には「マンガ『チ。-地球の運動について-』作者、魚豊氏が新たに挑むのは「陰謀論」について── 注目の新作『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』をめぐって、直木賞作家の小川哲氏と語り合います!」とある。
 個人的に令和に注目すべき作家の一人に小川哲がいると思っている。なので、彼が登壇するシラスのイベントは基本的に見るようにしている。
 今回のイベントの冒頭から小川哲は最新の「陰謀論」を勉強してきたと会場にいる人の笑いを誘った。上手い掴みだ。

 イベントを聞きながら「毎年正月10日に行なわれる初えびす」に行こうと連絡した友人たちに最終確認のLINEを送った。毎年、僕らは大阪駅から歩いていける堀川戎神社に参拝するのが恒例になっていた。
 コロナでいけない年が続いたが、落ち着いた今みんなで行こうと僕から誘った。
 有難いことに毎年一緒にいたメンツ全員が揃って参拝できそうだった。

 ●

 仕事は三日の休日に溜まっていた分があって忙しかった。
 そんな中で、隣のスタッフと雑談する隙間があった。

 倉木さとしとする予定の往復書簡のテーマを「ヤンキー漫画」にしたので、隣の席にいるスタッフ(二十一歳の女の子)に面白いヤンキーエピソードはないか? と聞いてみた。
「うーん。私の弟がヤンキーなんですけど、ある日、警察と一緒に朝帰りしてきたんですよ」
 なかなか面白い導入である。
 それでそれでと話を促す。
「話を聞くと、弟が同級生のカノジョと仲良く喋っていたのを見られて、浮気相手だと勘違いされたらしく、公園でリンチに遭ったらしいんですよ」
 ほう。
「弟は途中で勘違いされているって気づいたらしいんですけど、やり返さず、やられっぱなしで公園でのびているところを警察に保護されて家に帰ってきたんです」

 実に興味深い話だった。
「ヤンキーの関心ごとって恋愛が中心だよね」と僕が言うと、
「え、みんなそうなんじゃないですか?」と返された。
 21歳女の子の関心とヤンキーの関心は共通するのかも知れない。

1月10日

 十日戎を調べると以下のように出てくる。

 十日戎とは、漁業の神、商売繁盛の神、五穀豊穣の神として有名な「七福神」の戎(恵比寿)様を祀るお祭り

 僕が初めて十日戎を知ったのは「商売の神様」へ参るイベントだということだった。
 いつも一緒に行くメンツの中に個人で商売をしている人がいる訳ではないけれど、新年のやりとりの中で友人の一人のお母さんが入院されていると知ったので、個人的にみんなで神様に祈っておきたかった。

 仕事が終わり最初に合流したのが、お母さんが入院している友人だった。顔を合わせた瞬間、疲れているのが分かった。
 話を聞くと職場に無理を言って毎日、中抜けさせてもらって病院に通っているらしかった。
「昼食とか取る時間ないんよね。移動と病院でさ」

 コンビニ前で友人とハイボールを買って乾杯し、他のメンツを待った。一人は残業ということだったので、もう一人と合流してから神社へ向かった。

 ●

 話は前後してしまうけれど、僕は友人たちと合流する前にすべきミッションが存在した。
 一つは14日に彼女の妹さんを交えた食事会をする予定だったため、手土産としてチョコレートを買うこと。ついでに彼女の分も買った。
 もう一つは次の日も仕事なので、夕食を手早く済ませておくこと。職場の近くにあるカレー屋に入った。

 最後に酔わないこと。
 今回の集まりで僕は酒を三杯までと決めていた。

 ●

 最後の一人と合流した。
 その時点で僕は缶ハイボールを一杯飲み、コーンポタージュを挟んでいた。寒い日だったのでコーンポタージュはひときわ美味しく感じた。
 最後の友人が登場した時、彼はすでに缶ハイボールを手にもっていた。そして、僕が酒を持っていないことに気づいて、鞄から缶ハイボールを差し出した。
 二本目である。

 あまり好みではない缶ハイボールをちびちび飲みながら、神社へ向かっているなか、友人の一人が立ち止まった。
 彼の視線を追うと不動産のテナントにでかでかと「トイレ貸し出し無料」という文字が並んでいた。
「トイレ行ってきて良い?」
 と言うことで、彼は不動産のテナントへと近づいていった。
 そこで不動産の方が「これ見てください」と言い看板を指さした。

「ビール、ハイボール、無料!!」

 なんじゃそりゃあ。
 友人たちは色めき「じゃあビールで」とか「俺はハイボール」と言い出した。
 僕はノンアルでと言える雰囲気ではなかったので、ハイボールを頼んだ。
 サーバーで注がれたハイボールはコンビニに缶より濃かった。

 ●

 本日のお酒の摂取量はハイボール四杯。
 電車は終電。
 友人のお母さんの入院に関して手を合わせることもできたし、久しぶりの集まりもあって良い夜だった。

 日記終わり。

 ●●

 日記を書いて思うことは、自分は何を書きたいのかという基準が必要ということでした。その基準に即して不必要なエピソードを削っていけます。
 けれど、僕はこの日記でどのような基準を持って書くかを自分でも掴めないまま進めてしまいました。そのため、エピソードの取捨選択ができず、結果なにを書きたいのだろうと思いながら手を動かす結果となった。

 最初は「能登半島地震」などの大文字のニュースがありました。けれど、それらを追い、何かしら文章にすることが僕には難しいのだと気づいた。
 その瞬間、報道されていることの予測や過去との比較ができる訳でもない。僕はニュースを語るほど確かな知識や自分なりの考えがある訳ではありません。
 分かっていたことですが、自分なりのリズムができるかなと期待していた僕が甘かったです。
 そんな自分の不甲斐なさを受け止めつつ、今年の目標を決めてみました。

・1日100ページチャレンジ。

 結局、僕は圧倒的に本を読んでいないんだなと実感したので、本を1日100ページ読むというシンプルな目標。
 イアン・レズリーの「子どもは40000回質問する~あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力~」が新年最初の読書でした。その中で発明家ジェイコブ・ラビノーの言葉が引用されていた。

「たとえば音楽家は、音楽について多くのことを知らなければいけない……もしも無人島に生まれて一度も音楽を聴いたことがなければ、ベートーベンにはなれないでしょう……鳥の鳴き声は真似できたとしても、交響曲第五番は作曲できないはずです」

 その通りだと思う。僕は無人島に生まれたわけではないし、多くの本を読める環境にいるのだから色々読んでいきたい。
 少しやってやってみた感じ平日はいける。けど、その分映画やアニメは見れないし部屋に帰ってからも読むのでパソコンの前には座れない。
 文章はすべて土日の休日に詰め込むことになりそう。
 読むのが早くなれば仕事から帰ってきた時点で100ページを読んで、部屋で他のこともできそう。というモチベーションで頑張りたい。

・日本史の勉強。

 オードリーの若林正恭が家庭教師をつけて勉強していた。今の世の中いろいろだから、と言った旨のことをラジオで話をしていました。おそらく若林は世間における正解を掴んでおきたい、という趣旨だったのだと思います。
 言い方を変えれば自分の物差しだけじゃない物差しを勉強して作る。そんなイメージで僕は彼の家庭教師の話をラジオで聞いていました。
 僕も僕の物差しだけじゃなく別の物差しをちゃんと持っていたいと思うし、何かを勉強するならこのタイミングだと思った次第です。
 一緒に住んでいる彼女が日本史の教科書を持っていて借りれたのもきっかけの一つではあります。ありがたや。

・月一でミニシアターで映画鑑賞。

 僕は姫路から大阪まで今通勤しています。電車で一時間。この副産物として姫路から大阪までの定期があります。
 この定期を有効活用したいと考えたところ、神戸にあるミニシアターで映画を月一くらいの頻度で見ようと思い立ちました。
 なんとなくの感触ですが、みんなが見ているものだけを見ていても面白くない。多くの人が見ていない領域に片足だけ突っ込んでおきたい。
 逆張りと言われると、その通りですが去年に一度行ったミニシアターの雰囲気が良かったのもその要因の一つです。

 ●

 ということで、今年のnoteでの目標はこの三つを中心にしたいと思います。今後、日記を書く際はこのどれかに触れつつ、僕の日常的な出来事を書いていきます。
 多分ですが。

 往々にして、この手の計画は上手く行かないのですが、僕は今年三十三歳になる良い大人ですので自分で立てた目標や計画は遂行していきたい所存です。
 これは僕が大人になるための一つの儀式なのかも知れません。
 自分が立てた目標や計画をちゃんとできると実感することで、お前って大人じゃんと自分に思いたい、みたいな。

 とても個人的な思惑が中心にあるコンテンツですが、今後もたまに覗きに来てくださると嬉しいです。本とか映画とか、いろいろ紹介したりしますので。

サポートいただけたら、夢かな?と思うくらい嬉しいです。