見出し画像

ドローイン・ブレーシング・腹圧について

アスリートのための身体の仕組み講座

前回、第1回のテーマは【体幹とは?】という事で、整理していきました。
『聞いたことある』『何となくわかる』
では自分自身のレベルアップに活かしにくい。
しっかりと活かせる学びをしていきましょう。

第2回のテーマは
【ドローイン・ブレーシング・腹圧について】

これらはスポーツをしている皆さんは聞いたことがあるかと思います。

しかし・・

『お腹を凹ませるだけで効果が出る』
『ドローイン!ドローイン!ドローイン!』
『ドローインはだめだよ。それだと逆に怪我をする』
『ブレーシングで腹圧を高めて・・』

などなど、このあたりは情報がありすぎて
・何が正解かわからない
・何をどうすれば良いのかわからない
・自分自身ちゃんと出来ているかわからない

という方がほとんどですね。

確かに伝えづらい部分ではあります。
が、それ以上に“伝えている側”も現場レベルに落とし込めていない方も多いんですよね。
理論的に、そして実際にどういった事なのか落とし込めるようにお伝えできればと思います。


Ⅰ.「呼吸」について

ドローインやブレーシング、腹圧など全て呼吸に関することなんですが、まずはそれらの説明をする前に
【呼吸時に、身体がどんな動きをするのか】
確認していきましょう。

人は1日に約3万回の呼吸をしています。
そのほとんどは安静時で無意識に行われていますね。

【安静時の呼吸】【意識的な呼吸】
同じ呼吸ですが、筋肉の反応は少し違ってきます。

【安静時の呼吸】

・空気交換がメイン
・空気を吸う時、横隔膜が収縮し下に引っ張られる。肺の下部が広がり、空気を取り入れることができる
・ゆっくり穏やかに空気を吐くことで、横隔膜が元の位置にもどる
・肺が元のサイズに収縮すると空気が圧縮され(肺の中の空気圧が高くなる)体外に押し出される(息を吐く)
【意識的な呼吸】

・多くの筋肉が組み合わさって働き、胸回りを3次元的に広げる
・空気は肺の色々な部分に送り込まれる
・呼気(息を吐く)をしっかり行うと「インナーユニット」の働きを活性化させる

こうして整理すると、トレーニングや機能改善系のエクササイズなど様々ありますが、どれも【呼吸】というのが入ってくる理由がわかりますね。

【意識的にしっかり息を吐くことでインナーユニットの活性化をさせたいから】

ですね。

風船や吹き戻しを使ったトレーニングをする方も多いですが、狙いはこういった部分にあります。

呼吸時に重要となるポイントが
・胸郭(肋骨など胸エリア)がきちんと動いていること
・腹筋群が順番通り収縮していること

となります。

胸エリアがかたく、呼吸が浅くなっていると、横隔膜の働きが悪くなるだけではなく、腰や首、肩などへのストレスも大きくなり、様々なトラブルの原因にもなるので、胸エリアの可動性はとても大切です。

そして腹筋群は
横隔膜の収縮後⇒腹横筋⇒内腹斜筋⇒外腹斜筋⇒腹直筋
の順番で働くのが正解です。

『腹横筋から』
と言われることが多いかと思いますが、まず横隔膜が収縮してから腹横筋の順番です。

この辺りを整理していくと呼吸のトレーニング、エクササイズでの注意点が見えてきますね。

Ⅱ.ドローイン・ブレーシング・腹圧について

ドローインというと
『お腹を凹ますだけで・・!』
とよく言われるものですよね。

腰痛改善、ダイエットや姿勢改善に効果的?で、スポーツ選手からも『ドローイン』という言葉が出たりします。
体幹=ドローイン
みたいな雰囲気さえあります。

しかし
『いやいや、お腹を凹ました状態って逆に弱いし良くないでしょ!』
『ドローインって意味なくて、やんなきゃいけないのはブレーシングじゃ!』
という、ブレーシング推進派の方も多くいます。

ここ最近は
『ドローインは間違っていて、ブレーシングが良いんだよ~』
という意見が多いですかね。

って

『ちょい待って!
ドローインとかブレーシングって何なん!?』
という方もいるかと思います。
ここで一度
“ドローイン”と“ブレーシング”
についてめちゃくちゃ簡単に確認しておきましょう。

【ドローイン】

腰痛の人は動き出す時に姿勢制御がうまくいかない事がわかり、『これは腹横筋の反応が遅いからだ。』という事で考えられたのがドローイン。
腹部をしっかりと凹ませる事で腹横筋をしっかり収縮させ、筋肉の活動を高めることで脊柱の安定性を向上させるというもの。

【ブレーシング】

ドローインが生まれて数年後。
『日常生活とかスポーツする時、お腹を凹ませてって・・無理じゃない?』
『そもそも姿勢制御の方法としてそれってどうなん?』
という事から考えられたのがブレーシング。
姿勢制御のためには腹横筋だけじゃなく、腹直筋・内腹斜筋・外腹斜筋・多裂筋・脊柱起立筋群も一緒に働くことが必要とわかり、凹ませるのではなくグッと力を入れることで、それらをしっかり収縮させるというもの。

※言葉が誕生した時と今とで、少し変わってきていますが、元祖ドローインとブレーシングです。

ドローイン⇒お腹を凹ます
ブレーシング⇒お腹にグッと力を入れる


という感じですね。

で。
ドローインvsブレーシング
の争いがある中。笑

『てか、横隔膜もめっちゃ重要じゃない?』
とか
『多裂筋、骨盤底筋群も一緒に働かんとダメやん!』
という事も言われてきました。

どんどん新たな言葉が出てきますね。笑
確認しておきたい方は第1回の記事を確認していただけたらと思います。

『えっ、結局なにがいいん?』

って突っ込みたくなりますね。

どっちが良いとか悪いとか言う方が多いですが・・。

そもそもですよ。

別々に考えていること自体がオカシイ!

って個人的には思います。

ヒトの身体って
『これやれば良い』
っていうもんじゃないですよね。

この地球上で生きていく、生活していく上で、必要な機能があります。
『それが機能しているか?』
ですよね。
機能低下や機能不全があれば、その機能を改善していくんです。

腹横筋に刺激を入れればいいってもんじゃない。
とにかく腹圧をかければいいってもんじゃない。

腹横筋だけじゃない。
横隔膜、骨盤底筋群、腹筋群、背筋群・・。
様々な部位が一緒に働くことが大切なんです。

『腹圧をかける』
というのも、本当によく言われますが、腹腔内(お腹の中)の圧力は制御されていることが大切で、負荷や状況によって適切な安定性を発揮できなきゃいけません。

腹圧についても誤解が多いので整理しておきましょう。
難しくなるので簡単に・・。

腹圧(腹腔内圧)

・腹腔内圧を上昇させるためには腹腔壁(その主力は横隔膜・腹横筋・骨盤底筋群)をすべて緊張させないといけない
⇒壁のどこかに弛みがあると圧の上昇はうまくいかない

・腹筋たちの緊張上昇(腹筋運動とかも含め)と腹腔内圧は相関しない
⇒腹筋群を緊張させていても(ドローインやブレーシング含め)呼吸をしている場合は腹腔内圧の上昇は生じない
※インナーユニットが正しく機能すると、腹圧を高め骨盤と背骨を正しい位置関係に保つ

・腹壁の筋肉が緊張が高い状態を『腹圧上昇』は間違い

・息を吸うと必ず圧は下がる

・息を止めて『いきみ』で腹圧は上昇する

・背筋運動と腹腔内圧は相関する(全てではない)

『腹筋たちが緊張している=腹圧上昇』ではない!
これは意外な方も多いですかね。

ドローイン・ブレーシング・腹圧
これらがどんなものなのか整理していきました。

では、
『実際に何をどうすれば良いのか』
という所に入っていきます。

Ⅲ.実践のポイント

色々と整理してきましたが、
実際にどのような事をやっていく必要があるのか
現場レベルな話に入っていきます。

やっと。笑

どんなトレーニングを行うにも、まずは
【骨盤帯と腰椎の安定性】
ここから獲得していく必要があります。

その為に、【呼吸】を使って筋肉の反応を引き出していきます。

【やり方】

仰向けになる

両膝を立てる
※足の幅はこぶし1つ分
※腰と床の隙間は手のひらが入るかな?くらい

鼻から息を吸って、口からフーーーーと長く吐く

吐き切ってから下腹部に力を入れる

※息を吐く時『お腹に力入れよう』としすぎない。
※様々なポジションで行う必要がありますが、仰向けで両膝を立てた状態が一番やりやすいので、このポジションから行います。

以上。
やり方はとてもシンプルです。

やり方はシンプルなんですが、
きちんと出来ている人がとても少ないんです!

そもそも
『出来ている』
ってなにが?

という感じですね。

ポイントとなるのが
・インナーユニットの働き
・腹筋群の収縮の順番

となります。

ドローイン、ブレーシング、腹圧など色々言われますが、これがきちんと出来れば良いわけです。

これが簡単そうで小難しい。
実際、なかなか出来ない人が多いんです!

お腹を凹ますとか、グッと力を入れるとかじゃないんですね。

“インナーユニットの働き”“腹筋群の収縮の順番”
このふたつは分けて話されることが多いですが、絡めて考える必要があります。

【インナーユニットの働き】

・横隔膜
・骨盤底筋群
・腹横筋
・多裂筋

これらが連動、協調して働くことが大切。

【腹筋群の収縮】

横隔膜⇒腹横筋⇒内腹斜筋⇒外腹斜筋⇒腹直筋
この順番で収縮する。

かぶっている筋肉もありますし、冷静に考えると当然なんですが・・

インナーユニットの働き

腹筋群を正しい順で収縮させていく

という事ですね。
どっちかではないんです。

このように筋肉が働く事で、骨盤帯、腰椎はとても安定し、姿勢はもちろん、様々なトレーニング、動作にスムーズに繋がります。

では、
正しく出来ているかどうやって確認するのか?
ですね。

ざっくりとですが・・

お腹の動きとしては
お腹全体が少し細くなる+下腹部が凹む
⇒肋骨が内側に絞られてくる
⇒お腹が少し薄っぺらくなるイメージ

という感じになります。

他には触って確認することも出来ます。

腰の全面にポコッとした骨(骨盤)を触れるポイントがあります。

画像1

この赤い丸の所です。
そして、この骨の少し内側↓

画像2

黒い丸のあたりに指をグサッと突き刺します。

指をさしたまま、仰向けで呼吸を行っていくと
息の吐きはじめ
⇒勝手にスーッと落ちる(凹む)
⇒吐き切る前くらいに勝手に筋肉がかたくなる(深い所)

※これが腹横筋の収縮
⇒そこから更に息を吐いて力を入れていくと表面の方の筋肉もかたくなる
※腹斜筋たちの収縮

という感じです。

こうして文字で見ると簡単なんですが、実際にやってみると
『えっ、これで合っとん?』
『筋肉がかたくなるって、これなん?』
『どこまで力入れたらいいん?』
など、正解がわからないかと思います。

実際、トップアスリートの方でも
・肩まわりや首に変な力が入る
・肋骨の動きがきれいに出ていない
・表面の筋肉が先に出しゃばってしまう
・下腹部ではなく上部ばかりに力が入ってしまう
など、最初はなかなかうまくできません。

実は、トレーナーさんやインストラクターの方でも、キレイに出来る方って意外と・・だったり。

更に、これだと肋骨の動きと腹筋群の収縮はわかりますが、骨盤底筋や多裂筋など、そういった部分の働きはわかりません。

現場では、そういった部分の確認をし、働きが悪ければアプローチをしていきます。

細かいポイントや求めることをあげるとキリがないですが

インナーユニットの働き+腹筋群が正しい順で収縮する
そして、それをキープしているけど呼吸は止まらない

これは絶対にマスターしてほしいものです。

【呼吸】って当然のようにしていますが
めちゃめちゃ奥深いんです!

最初は動画を貼り付けようかと思いましたが、動画でも正しく伝わらない、伝えられないんです。

選手には僕の身体を触ってもらって、解説を入れながらお伝えしています。
みなさん
『えっ!こんな動きするん!?』
『ここの筋肉こんなに・・!』
って驚きます。

そこから、選手の身体を一緒に確認しながら
『あっ、今かたくなったのが○○ね』
『あっ、先に○○が働いた』
『そうそうその感じでここに・・!』
など、言いながら修正していきます。

ここが出来るようになると
トレーニングの質、めちゃめちゃあがります!

当然、○○痛的なものも予防できますし、変な自爆的な怪我はかなり予防できます。

ですので、スポーツをしている方たちには
『ドローイン、ブレーシング、腹圧』など言葉だけではなく
本当に必要な事をお伝えしたいんです。

簡単なやり方と確認ポイントは書きましたので、何となくからでもやってみて下さい。

しかし、正直こうした文字だけで完璧にお伝えするのは無理です。
動画でも伝えられない・・。

『スポーツ本気でやってるし、ちゃんと知りたい!』

そんな方は是非一度ご連絡ください!

本気の方には全力で対応しています!

という事で、第2回は
【ドローイン・ブレーシング・腹圧について】
お伝えしていきました。

何が良い悪いではなく
実際、筋肉がどのように働かなければいけないのか?

ここを整理してトライしてもらえたらなと思います。

第3回は
【インナーマッスルとアウターマッスル】

というテーマで書いていきます。

お読みいただきありがとうございます😁 “スキ”してもらえると嬉しいです😍✨ SNS等でシェアしていただけると最高に嬉しいです😭✨