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ウルトラQとイングランド国教会の関係

ウルトラマンシリーズの原点、ウルトラQを現役でご覧になっておられた世代の方もおられるのではないでしょうか。1960年代、まだテレビも白黒の時代でした。2020年はウルトラQのケムール人が宇宙からやって来た年。当時は2020年なんて遥か未来のことに思われたのでしょう。2020年に放送されたウルトラマンzにケムール人が出てきたときはまさかと驚きました。令和の世にケムール人に会えるとは。

ケムール人のフォッフォッフォッと言う特徴的な声は後に初代ウルトラマンのバルタン星人の声に転用されました。さらに遡るとこの声は映画「マタンゴ」からの転用。転用の転用だったわけです。

マタンゴですが、ようはキノコの化け物の話です。海洋ホラーとでも言えばいいのでしょうか。実は原作があります。イギリスのウィリアムホープホジソン作「夜の声」。短編小説なのですぐ読めます。

この作家のお父様がイングランド国教会の牧師なのですよ。サミュエル・ホジソン牧師。二年に一度くらいの間隔で教区をいくつも転任しておられる苦労人で辺境の小さい教会で奉仕を続けました。アイルランドの荒れた海岸地帯が赴任地とか。ホジソン牧師は信仰上の理由で国教会側としばしば対立したようです。おそらくこの辺りの事情はビクトリア朝当時のイングランド国教会の状況となにか関係あるのかもしれない。

当然、一家は経済的には困窮し、エセックスで生まれたウィリアム少年も学校にいくのを断念し、13才で船乗りになります。しかし、その後、作家に転身。船乗り時代の経験を生かした海洋小説を発表するようになる。ちなみに、ホジソンの作品は「ナルニア国物語」で有名なCSルイスにも影響を与えました。

またアメリカのホラー作家、ラブクラフトにも多大な影響を与えました。ラブクラフトのクトゥルフ神話が元ネタになっているのが「ウルトラマンティガ」ですね。

我が国では映画の原作を公募していた「SFマガジン」で紹介されたのが最初。公募に思うような作品が集まらず、編集の福島正実が「夜の声」を翻案したのがマタンゴでした。当時は翻案小説の伝統がまだ生きていたのでしょうね。これが映画化されるわけです。福島正実と言えば、わが国にSF文化を定着させた立役者みたいな人です。ハイラインのSF小説「夏への扉」を翻訳した人ですね。

イングランド国教会から、マタンゴ→ウルトラQのケムール人→バルタン星人と言う繋がりです。そういえば、ウルトラマンタロウにマシュラというキノコの怪獣が出てくる。マシュルームからのネーミングでしょうね。子ども時代に現役で見ましたが、今にして思うとこれは、マタンゴのオマージュだったのだろうと思う。

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