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私の「冒険心」は「宝島」で、つくられている。 #海外文学のススメ

いままで【佐藤ゼミ】では日本文学作品ばかり紹介してきたので、私(佐藤)は日本文学ばかり読んでいる人という印象があるかもしれない。いや、実は(と、わざわざ強調するほどのことでもないのだが)子供の頃の私は外国文学を読んでいた。正確に説明するならば、実家にはあまり本がなく、本棚に並んでいるなかで子供の頃の私が読めた本が「宝島(ロバート・ルイス・スティーヴンソン著)」だったので、必然的にそれを何度も繰り返し読んでいたのが実際のところである。

初めて「宝島」を読んだのは小学1年生の頃だったと記憶している。それから時間がある時には、この本を飽きることなく繰り返し読んだ。ストーリーもすっかり頭に入っているし、主人公がピンチになる場面でも「助かる」ことはわかっているのに毎回ドキドキしながら読んだ。自宅の二段ベットの上に寝転がり夢中になって読んでいると、夕暮れの陽射しがレースのカーテンを通してページの上に落ちてきたことに気づく。そろそろ灯りをつけないと母親に怒られることもわかっているけれど、それよりも続きを読んでいたい。そんな子供時代だった。

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ざっくりと「宝島」のあらすじを紹介すると、主人公のジム少年は、父親が経営している宿屋にやってきた男との出会いをきっかけに宝島の地図を手に入れることになる。その地図をきっかけに、同じ宝を求めて島に向かう海賊たちとの「宝探し」が始まるという冒険小説である。

私がこの作品を読んだ時は、まだ小学生で子供だったので、ここに書かれていることが物語ではなく本当の話だと思っていた。作品の中に掲載されている宝島の地図を眺めながら、広い海とその先にある小さな島を想像した。ジム少年の父親が経営する宿屋(ベンボー提督亭)へ、いつか行ってみたい。ここに行けば、自分も元海賊と出会い「宝島の地図」を手に入れられるかもしれない。そんなことを夢想する子供だった。

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以前別のところにも書いたけれど、子供の頃に出会った作品(小説、映画、絵画、などなど)は、私たちが意識しているよりも価値観の形成に強い影響を与えていると思う。何かを選択する時に、自分が気がつかないところで大きく舵取りの方向を決める。子供の頃に出会った作品たちには、そんな影響力をもっていると思う。

私(佐藤)が大人になってから、会社勤めではなく起業することを選んだのも「新しい世界に挑戦してみたい。不安定な人生だしその先に何かあるかわからないけれど、何か面白そうなもの(宝島)があるならば行ってみよう」という「冒険」に対するあこがれがベースにあったように思う。なにせ、あのころの私は繰り返し「それ」を読んだのだ。心の奥に染み込むほどに、何度も何度も読んだのだ。

もしも今皆さんが「自分が本当にやりたいこと」を、探しているのであれば、子供の頃に出会った作品の中にヒントがあるかもしれない。その作品のテーマや、それに触れた時の感情に、もう一度出会いたい。できれば自分の手で創り出していきたいと言う意識が、どこかにあるのではないかと私は実体験を通してそんなふうに考えている。

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ちなみに宝島の中には、ラム酒が所々に登場する。作品の中に「ラムと卵かけ塩漬豚肉さえあればいい」というようなセリフが出てくるのだが、子供の時の私は「大人になったらラム酒を飲んでみたい。こんなに楽しく陽気になれるならば、きっとおいしいものに違いない。そして卵かけ塩漬け豚肉を食うんだ!」そんなことを考えていたことを覚えている。

残念ながら私はアルコールがダメなので、ビールいっぱいで「ご馳走さま」になってしまうので、ラム酒を海賊たちのようにガバガバと飲むことができない大人になってしまった。ラム酒はあきらめることにするが、それでも宝島は探し続けてみたいと思う。

その先に何かがあるのならば、今は見えない未来の中に可能性が見えるのならば、地図を片手に飛び出して行くのだ!

今回、宝島を読み返した時にそんな子供のころの気分が蘇った。そしてこのような気持ちを抱えていられるうちは、まだまだ現実の世界で頑張れるような気がするのだった。

【Youtube版】佐藤ゼミ

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