ゴールディー(恵良五月)

ファーマー&ローカルライター&ビブリオテラピストの私がみなさまをワクワ…

ゴールディー(恵良五月)

ファーマー&ローカルライター&ビブリオテラピストの私がみなさまをワクワクに満ちた本の世界へといざないます。子どもの本があなたの道を照らしてくれますように。 音声配信 https://stand.fm/channels/5f6020aef04555115dd7c28c

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私だって、誰かの「すきとおったほんとうのたべもの」になることを願って書きたいんだ

なぜ書くのか。好きだから書く。 でも「好きだから」という理由だけで書いているなら、それは趣味です。 書いたものが誰かの心に届いて、その誰かに何かしらを与えられるものでなければ。 ときどき、「好き」だけを追求して創作したものが、結果としてみんなのためになってしまような、”天才”と呼ばれる方たちもいますけれど、まずもって、私はそれに当てはまらない。 だから、いつも読んでくださる人のことを頭に置いて、書いています。 今日は、歯みがき中に宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読んでいました

    • 石の歌う森(第4回)~星は風にそよぐ イシアス篇~

       「森の生活」の著者であるソローは、イシアスが一極集中の道を選択する100年ほど前に、経済原理に取り憑かれ始めた社会の枠組みから離れ、森で生活することを実践、記録したアマリア人だ。  これから森を目指すセシルにとって、ソローが森で暮らした目的を知ることは、とても興味深いことだった。  彼が森で暮らしたのは、深く生きて生活の精髄を極めるためだった。彼は、生活でないものは生きたくない、と言う。また、死ぬときになって、自分が結局生きていなかったと思い知るのはご免だ、と言う。 「生き

      • 石の歌う森(第3回)~星は風にそよぐ イシアス篇~

         セシルは、兄の部屋のドアをそっと開けた。カーテンレールに掛けられたサンキャッチャーが、セシルを歓迎するように、朝日を受けてキラリと光った。白い壁に小さな虹がたくさん映っている。光の精霊たちが奏でる微かな微かな旋律が聞こえている。明らかに、セシルの部屋よりも精霊たちの密度が高い。  セシルは兄のベッドに腰を下ろした。兄の部屋は、セシルが旅立ったときと何も変わっていない。あのときは、精霊を感じなかったけれど。 「ここしかないな」  セシルは、精霊術の基本の鍛練を続けるための自分

        • 石の歌う森(第2回)~星は風にそよぐ イシアス篇~

           セシルはまた玄関に飛んでいって、バックパックの底から、止め金のついたトランク型の小さなバスケットを取り出した。それから、スーツケースを開いて床に広げ、片側全部にぎっしり並んでいる瓶詰めや缶詰めをうれしそうに眺めた。 一だけど、これだって、食べ尽くしてしまう日はそんなに遠くないよな。 そう思うと悲しくて、セシルは顔を曇らせた。 「よし!今日はヤギのリエットを開ける!」 悲しい気持ちを振り切るように、セシルは元気な声で宣言した。  セシルは、ダイニングテーブルの上にバスケット

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        • 星は風にそよぐ/石の歌う森
          17本
        • 世界を照らす本
          8本
        • 文章修行 ~好きこそものの上手なれ、を信じたい~
          15本
        • 投稿でご紹介いただきました
          5本
        • みのりの会活動記録
          11本

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          石の歌う森(第1回) ~星は風にそよぐ イシアス篇~

           自動運転の車が低空飛行に入ると、眼下は深い森。見渡す限りの木々。磁石の同じ極を近づけたときに反発する、そんな力をセシルは下から感じた。 一これがイシアスの精霊たちのエネルギーなんだ。  イシアスを出ていくためにこの上を飛んだ2年半前、セシルにはこの押しつぶされるような高密度のエネルギーを感じ取ることができなかった。  世界に先駆けて、イシアスは一極集中の道を選んだ。人々は3つある居住区の高層ビルに暮らし、多くの時間を「レブリー」と呼ばれる仮想空間で過ごす。稲作、畑作、酪農

          石の歌う森(第1回) ~星は風にそよぐ イシアス篇~

          「仕事」について、いつも考えています~umiさん応援!~

          私がSNSで名乗っている名前「ゴールディー」は、アメリカの絵本作家ゴフスタインの「ゴールディーのお人形」からいただきました。 この絵本の主人公、人形作家のゴールディーが、私のありたい姿そのものだからです。 ゴールディーは人形作りの仕事を、心の底から愛しています。 材料には角材ではなく、森で生の木を拾ってきて使います。全集中で作り上げた人形の顔ににっこりとほほえみかけ、自分の笑顔を映します。 そんな風に心を込めて作られたお人形の愛らしい笑顔を一目でも見た人たちは、そのお人形を

          「仕事」について、いつも考えています~umiさん応援!~

          登場人物について考えています

           物語を読む大きな喜びのひとつに、登場人物を愛する、ということがありますよね。 私が例外なく愛してしまう登場人物の特徴として、イノセンスの中に生きている人、という特徴が挙げられます。 ここで言うイノセンスというのは、純潔とか穢れのなさではなくて、純真である、ということです。まことの自分である人たち。 「進撃の巨人」に出てくる「無垢の巨人」も、ここで言うイノセンスにはあたりませんよ。あれは、無知というか、考えることができない人たち、ですからね。  ここに、イノセンスのつまった

          登場人物について考えています

          タイトルについて考えています

           作品のタイトルというのは、すごく大切なものですよね。  例えば「夜と霧」。ユダヤ人精神科医、フランクルによるナチス強制収容所の体験記ですが、その原題は直訳すると「心理学者、強制収容所を経験する」という、まったくそのままなタイトルだったってこと、ご存知でしたか? 私はそれを最近知って驚き、その超訳の妙にただただ感心してしまいました。 「夜陰に乗じ、霧にまぎれて人びとがいずこともなく連れ去られ、消え去った歴史的事実」を表現したタイトルだそう。なんと文学的で情緒的な。 「夜と霧」

          タイトルについて考えています

          また原点へ

          私の創作物語「星は風にそよぐ」は、note創作大賞の一次選考を通過することができませんでした。 持てるすべてを投入して取り組んだ作品だっただけに残念でなりませんが、お読みいただき応援してくださった方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。 結果発表の後2、3日は、かなりションボリしていました。でも、落選の経験は過去に何度もしているので、打たれ強くなったのでしょう。 今は「星は風にそよぐ」の続編を書くのが楽しみで、そのための準備も始めています。 自分の作品を人に見せることがあ

          海が見たいときに

          夏と言えばバカンス!(バカンスって日本では死語ですか?まだ使ってる?) だけど、農家の夏は忙しくて、野菜ばっかり見ています。海が見たいです。 こんなときは、海が舞台の大好きな漫画を少しずつ味わいます。 五十嵐大介さんの「海獣の子供」。映画にもなりました。主題歌は米津玄師さんの「海の幽霊」。 このMVを初めて観たときは驚愕しました。以来、これは私が世界で一番好きなMVです。 これを観た人はもう全員映画観るだろう、と思いました。でも、映画館に観に行ったら、なんと劇場に私ひとり

          「あとがき」のようなものを書いてます

           自作の物語「星は風にそよぐ」を無事書き終えて、只今、燃え尽き症候群の中にいます。身体がだるくて、何もやる気が起こりません。頭も痛いし。あれ? これ、もしかして熱中症かなあ。  とにかく、やる気が出ないなどと言っていられないのが農業なので、なんとかやる気を出そうとしています。自分を奮い立たせるとき、私がやることは2つ。エモーショナルな音楽を聴くこと、そして書くこと。音楽はもう朝から聴いているので、頭の中を整理してなんとかポジティブな方向性を見出だすために、今から書いてみようと

          「あとがき」のようなものを書いてます

          星は風にそよぐ(第12回/最終話)

          6月15日  先生。昨日の夜も寝不足で、とってもまぶたが重いけれど、コンサートのことは、やっぱり今日のうちに書いておこうと思います。  朝起きたとき、私はとにかくコンサートに集中しようと思いました。今は自分のことなんて考えず、子どもたちが、そして精霊たちが最高の時間を過ごせるように、心を込めてお手伝いをしよう、と心に決めました。  コンサートの設営は午後1時から始まりました。場所は、ミリエル先生が成長を助けたあの苗木たちの植わっているところです。苗木はまだおとなの腰丈ほど

          星は風にそよぐ(第12回/最終話)

          星は風にそよぐ(第11回)

          6月11日  いよいよコンサートは今週末。準備の慌ただしさも、ソワソワも、さらに高まってきました。そんな中、私は精霊術師になる1年生のアベルと初めて言葉を交わしました。初めてですよ。  どうしてこれまで話したことがなかったか。それは、アベルがほとんど話さない子だからです。アベルは、いつもぼんやり何かを眺めています。空だとか、草の中の虫、とかげ、イモリなんかを眺めてるんです。集中して眺めてるっていう感じではなくて、ぼんやり。だけど、話しかけても聞こえていないのか、何の反応もあ

          星は風にそよぐ(第11回)

          星は風にそよぐ(第10回)

          6月6日  クレアは近頃、お昼休みにも音楽室で練習していると聞いたので、私は邪魔しないようにそっと聴きに行ってみました。静かにドアを閉めて、一番後ろの席についた途端、クレアが気づいて 「わ!セシル先生。うれしい。聴きに来てくれたんだ。オーディエンスがいると、俄然やる気が湧いてくるの」 と満面の笑顔で言いました。  音楽家というと、私は静かで落ち着いた人のイメージを勝手に持っていましたが、クレアは違います。いつも明るくて、おしゃべりが大好き。ソロのコンサートをするようになった

          星は風にそよぐ(第10回)

          星は風にそよぐ(第9回)

          6月2日  日曜の朝で時間があるし、昨日の気持ちの高ぶりを鎮めるためにも、今朝は大岩のもとで、ゆっくりとじっくりと耳を澄ませていました。そしたら、聞こえましたよ。小川のせせらぎやミツバチの羽音、鳥たちの歌に混じって、先生の声が。何らかの弁解はあると思っていました。だけど 「私が育てるトマトもきゅうりもジャングルみたいって言うけれど、あれはソバージュ栽培という栽培方法なのよ」 って、そっちの弁解ですか。  そして先生は言いましたね。 「あの詩がセシルをロータシアに引き寄せたの

          星は風にそよぐ(第9回)

          星は風にそよぐ(第8回)

          5月28日  今朝はやっぱり、風に乗せてお話しする時間が取れなかったので、昨日、スリーシスターズから学んだことを書いておきますね。  昨日は一日、ジュリアのそばについて、勉強させてもらいました。ジュリアのおうちがベジタブルショップを営んでいることは、お話しましたよね。ジュリアは、給食で使う野菜栽培のリーダーです。  朝獲りの野菜が一番みずみずしいですから、スリーシスターズの一日は野菜の収穫から始まります。クロード先生もとても早く登校するんですけど、先生にお願いして、いつもよ

          星は風にそよぐ(第8回)