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【ショートショート】ルールを知らないオーナメント

 計画は完璧だった……
 ……はずだった。

 始まりは、私が国会議員として今日まで稼いだ裏金に税務署が気づいたという税理士からの報せだった。
 あまりの巨額に、ガサ入れが行われることが決まり、その日取りは間近に迫っていた。
 だが私は抜け目なく、問題のある資産を全て宝石に換えることに成功した。
 問題は、ガサ入れの日にはこれを隠さなければならないことだ。

 そんな時、私は地元でクリスマスツリーのオーナメントコンテストがあることを知った。
 チャンスだ。
 私は全ての宝石をツリーのオーナメントに紛れ込ませ、適当な形に仕上げた。
 これを出品し、ガサ入れの日には家にないようにすれば問題解決だ。
 だが……

「ダメねえ、お父さん。飾りつけのルールが全然わかってないじゃない」

 娘がオーナメントの手直しを買って出て、ツリーは見事な見栄えとなった。

 まあ、別にいいだろうと出品し、無事にガサ入れの日をやり過ごすことができた。
 見事に空振りして地団駄を踏む税務署を尻目に、私はツリーを回収するためコンテストの受賞者発表会に向かった。

 そこでなんと……
 私のツリーが優勝したのだ!

 目立つことは極力避けたかったが、まあ娘も喜んでるし……

 ……と、発表会の司会者がとんでもないことを言った。
「おめでとうございます! この優勝ツリーはお約束通り、街の児童保護施設に寄贈させていただきます!」

 私が知らなかったのは、オーナメントのルールだけではなかったのだ……


たらはかにさんの募集企画「#毎週ショートショートnote」参加作品です。
お題は「ルールを知らないオーナメント」。

そもそも「オーナメント」ってなんだっけ?
というところからスタートして書きました。
😅

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