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原付バイクの冒険

自分は自動車だと思ってた

大きくなったら高速道路に乗って
時速100kmで全国を駆け巡り
たくさんの人のために働くんだと

でも違った
私は原付バイクだった

見た目は自動車だから
料金所は通れてしまうし
高速道路に入れてしまう

だって料金所に入る時は徐行でスピード落ちてるし
エンジンルームまではチェックされない


そして高速道路を走り出したら

どんなに頑張っても
どんなに頑張っても
時速55kmしか出せない

自分も周りも私は自動車だと思ってるから
なんでこんなに遅いのかわからなくて

煽られ 追い越され クラクション鳴らされ
時には怒鳴りつけられて いるだけでイライラされて

自分を責めて落ち込んで
心ない言葉に落ち込んで
高速道路の流れに乗れない事がつらくて
一般道に下りては何度も再チャレンジして
でも 結果はいつも同じだった


そんな時 自分が原付バイクだって気づいた

55kmしか出せないのは
私がバカだからでも
努力が足りないからでもなく
ただ 原付だからなんだと

原付が高速道路に入るのは
法律で禁じられている
実際 すごく危ない

なぁんだ
知らずに高速に入っちゃって
そりゃ自動車の皆さんはイライラするよね
100kmで走るのが当たり前なんだから

なぁんだ そうだったんだ


それから私は
身も心も原付バイクになった

まぎらわしい自動車ボディを捨てて
本来の原付バイクのボディへ

高速道路には入らず
下道をマイペースに
車道の左端に寄って

正直 二段階右折とかめんどくさいし
スピード出ないのは不便だし
メンテにお金もかかるけど

でも
原付バイクになった今の自分の方が好き

原付ってすごく便利

駐車場も車検もいらないし
本体も税金も安いし
操作カンタンだし
出先でも駐輪場探しやすいし
燃費がよくて
小回りがきいて渋滞知らず
庶民の足としてみんなから愛されてる
屋根つきのもあるし
その気になれば日本一周だって不可能じゃない

高速道路を華やかに疾走することはできないけど
その事実に劣等感を抱いた時もあったけど

自動車より価値が低いわけじゃない
活躍する場所が違うだけ
どちらも世の中に必要な存在

自動車のスピードじゃ見落としてしまうことを
しっかり拾い上げながら
自動車が渋滞でイライラしている中を
飄々とすり抜けながら

これからも原付バイクとして
自動車の流れとは違う所で
胸を張って私は生きていく


【終】
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WAIS-III 動作性下位検査「処理速度」が著しく凹の私を
原付に例えて書いてみました。

原付と自動車という例えに不快感を覚えた方がおられたらすみません。
発達当事者全員が原付と言いたいのではなく
あくまで「私の場合」として、今までの人生を振り返って書きました。

凸の部分によっては高速道路で100km出して渡り合っている人もいるでしょう
あるいは高速の中でも首都高じゃなく西湘バイパスなら戦えるという人もいると思います(笑)

それは人それぞれなので、誤解なきよう…。

ちなみに私は
たまにスイッチが入るとスーパー原付モードになって
時速100kmというかいきなり空を飛んだりするんですが(笑)
その時はボディも大型バイクみたいになって
「ちょっと変なバイク」として擬態できちゃうんですね
すぐ活動限界になるので短時間しか使えないし
自分でスイッチをコントロールする事もできないけどね…...( = =) トオイメ

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