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爽やかさとまろやかさが共存するレモンパイ 〈菓子四季録 vol.2〉

菓子研究家 福田淳子先生のレシピをイラストでご紹介しています。先生のレシピ解説も、ぜひあわせてご覧ください。
https://note.com/sakuracoeur/n/n263e5d8a3631

6月のお菓子はレモンメレンゲパイ

6月。暑いってこんな感覚だったなぁ、と思い出す季節。風が少し涼しくても、日向に行けば肌がじりじりする。たしかに夏がきたのだと空気が言っているこの時期に、「レモンメレンゲパイ」の鮮やかな黄色を見て、目からビタミンチャージするのはいかがでしょう。


レモンパイにおける「爽やかさとまろやかさの共存」とは?

表題についての説明に入る前に、一旦パイのことを置いておき、レモンについて考えたい。レモンと聞いて、何を思い浮かべるか。わたしは間違いなく真っ先に「からあげ」を連想する。肉汁がじゅわっと滲み出るような揚げたてのからあげに、レモンの果汁をてき、てき、と絞るあの瞬間!(レモンをかけないで食べるからあげも好きです。)洋食屋さんのフライの横に、おすましして座っているくし形のレモンも、外食感があって気持ちが上がる。
お菓子部門はどうか。レモンケーキ。まず形が可愛い。しゃりしゃりのアイシングタイプも好きだし、ホワイトチョコレートコーティングタイプもまたいい。レモンのパウンドケーキ。王道をゆく味で美味しい。ポピーシードが入っているものも食感がたのしい。チーズケーキ作りにもレモン果汁は欠かせない。

このように日々の食事場面でレモンに触れる機会はそこそこあるものの、この記事のテーマである「レモンパイ」に出会う機会は普段それほど多くない。おしゃれなカフェで、たまに出会うくらい。しかもおしゃれなカフェでのメニュー選びは競合も多いから、わたしはこれまでレモンパイを強く意識して選択したことがほとんどなかった。だから、レモンパイについての特段の印象も持っておらず、強いて言えば「酸っぱくて爽やかなパイだよな」くらいだった(語彙力〜)。

からあげやフライに添えてあるレモンは、大事な役を任されてはいるもののその役は主役ではない。レモンケーキやレモンのパウンドケーキの場合、レモンがいないとその名前が成り立たないし味の面で言っても主要な登場人物ではあるけれど、単独主演ではなくダブル主演というくらいか。でも、このレモンメレンゲパイは違った。レモンは主役だった。

このパイを食べたとき、レモンが主役なお菓子であることにわわ!と面白さを感じたけれど、もっと印象に残ったことがあった。それがタイトルにも掲げている「爽やかさとまろやかさの共存」だった。ここで先ほどの言葉を思い出してほしい。

レモンパイについての特段の印象も持っておらず、強いて言えば「酸っぱくて爽やかなパイだよな」くらい

たしかに酸っぱいし爽やかだった。ただ、そこに想定外の『まろやかさ』が存在していた。

不思議だった。あんなにレモン果汁(80mlも入っている)を入れたのに、なぜ酸っぱくて爽やかなだけのクリームではないのか…。答えはレシピ担当である淳子先生が教えてくれた。「たっぷりのレモン果汁を支えるだけのバターとお砂糖が計算されています。」今回のレモンメレンゲパイの主役はレモン。だけどその側にはバターと砂糖というお菓子界の大御所の存在、助演俳優の姿があったのだ。

何より発見だったことは、まろやかさが生み出されたことで酸味が抑えられるのではなく、まろやかさのおかげで酸味が全力を発揮できているところ。レモンの酸味が手加減しないでいい布陣が整えられたからこそ、主役の魅力を放てている。まろやかさと酸味はトレードオフではなかったのだ。

サクサクに焼き上げられたパイという舞台で大御所たちに支えられ、フレッシュに(爽やかに)のびやかに(まろやかに)演技するレモンを、どうぞご賞味ください。


レモンメレンゲパイ

材料

作り方

作り方(全文)

作り方の詳しいポイントが
淳子先生の記事で紹介されています

菓子研究家 福田淳子先生のレシピ解説はこちらです。レモンパイへの愛、配合のこだわり(「酸味」×「甘味」×「コク」のトライアングルバランス!)、作り方のポイントなどが掲載されています。盛りだくさんな解説は、レシピを通り越してもはやエッセイ。お菓子を作らなくても読み物として楽しめるので、ぜひあわせてご覧ください。

レモンパイの菓子四季録、おしまい。

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