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個人の内的コントロール心理学としての選択理論にユニークさはあるのか?【選択理論を何でもありで学ぶメルマガ8号】

最近はあっちにも、こっちにも、選択理論に似た本

私は、本屋さんに行くと、「行動のセルフコントロール」「内発的動機づけ」「ポジティブ思考」「ウェルビーイング」「幸せの心理学」「コーチング」「マインドフルネス」「人間関係」「自己肯定感」「コミュニケーション」「強み」「メンタルヘルス」「横の対等な関係でのマネジメント」などについて書かれた一般読者向けの本は、だいたい手に取ってみている。

そして、最近の、一般読者向けのポジティブ心理学やウェルビーイングの本、コーチやカウンセラー、臨床心理士、僧侶などが書く悩み相談の本、将来のキャリアや生き方に関する本、などを読んでみると、

「過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる」「自分の人生の舵は自分でとる」「自分という壁」「他人軸ではなく自分軸で生きよう」「行動と思考をコントロールすることで気分やストレスを改善できる」「人に振り回されないで生きる」「自分にできることとできないことを区別して、できることに意識を集中する」「将来の夢や理想、人生の目的、大切な価値観を明確にするべきである」「人の不幸の原因の多くは人間関係である」

など、行動の内的コントロールと、人間関係の重要性を説く本がどんどん増えてきているように思われる。

上のようなフレーズは選択理論でも言われていることなので、選択理論と同じような内的コントロール心理学の本がどんどん出てきているということである。

そして、そのような気になった本を手にとって全体をざっと読んでも、多くの本が選択理論の考え方とあまり矛盾しないように思われる。しかし、それらの本には選択理論という言葉を使われておらず、参考文献にも選択理論関係の本は記載されていない。

選択理論のユニークさはどこにある?

最近のこのような「こっちにも、あっちにも、選択理論と同じようなことが書いてある」という状況にあって、筆者(私)の関心は、選択理論をこれらの本と比べてみたとき、どこに選択理論のユニークさがあるのだろうか? ということである。

他の内的コントロールの本と選択理論が異なる点

そして、今回のメルマガを書く趣旨もこの点にあるが、いろいろ考えた結果、今のところの筆者のおおざっぱな見解は次のようなものである。

1、選択理論は、行動の内的コントロールの心理学である点で、上にあげた本の考え方と共通しているが、他の本では、「行動の内的コントロールの心理学」という言葉がはっきりとは使われていない。

2、また、それらの本では、「内的コントロール心理学」の対極としての「外的コントロール(心理学)」という言葉も使われていない。この点では、他の本は「自分の言動が他人に対して影響力を持つことは当然」と考えながら、一方で影響力は及ぼせても「相手を変えることはできない」と考えているようである。

この点で、選択理論は「相手を変えることはできない(相手を外側からコントロールすることできない)」と考えるべきとし、「人間関係の悪化を防ぐ」という点からも、徹底してこのような「外的コントロールの排除」を主張する点において、他の本と異なると思われる。

3、選択理論は、人の行動が内的に引き起こされる要因は「今満たせていない5つの基本的欲求を満たすため」であるとする。しかし、選択理論以外の本では、「基本的欲求が行動を動機づける、行動を引き起こす」とはっきりと書いているものはほとんどない。

4、また、選択理論は「人の行動の内的コントロールモデル(脳のしくみ)」を持っており、人はこれに従って行動を内的コントロールしている/できると考える。しかし、ほかの本には「行動の内的コントロールモデル」のようなものが書かれているものはない。

5、他の本では、「具体的な願望のイメージ写真が行動を引き起こす」という考え方は書かれていない。また、人々の上質世界の違いが、人の行動と人間関係に影響を及ぼすことも書かれていない。

6、ほかの本では、選択理論の「行動の内的コントロールモデル」における「行動のシステム(行動のシステムでは「これまでに使い慣れた行動」が選択されたり、又は「新しい行動の創造」が行われる)」という考え方はない。

7、ほかの本で、全行動に似た考え方がとられているものはあるが(例えば認知行動療法など)、全行動の概念のように4つの要素(行為、思考、感情、生理反応)が密接に連動していること、行為と思考をコントロールすることで、感情と生理反応を間接的にコントロールできること、を明言しているものはない。

8、「人は自分の行動だけを内的コントロールできる」、「人の行動を外側から外的コントロールすることはできない」と明言している本はない。

9、欲求充足における「人間関係の重要性」
選択理論は、愛・所属の欲求を満たせることが他の4つの欲求を満たすために必須であること、人の長期的な心理的問題の原因は「満足できる人間関係」が持てていないことにあること、を説く。人間関係の重要性を説く本は多いが、その理由を「基本的欲求の充足(特に愛所属の欲求充足)」の点から説くものはないようである。

そして、うえのような九つの点を考えてみると、結局、選択理論のユニークさは、

①「外的コントロール心理学(人の行動は外側からコントロールされる/できるという考え方)」の対極(正反対)として考えられた「内的コントロール心理学(人は自分の行動を内的コントロールしている)」であること、

②そして、そもそも、内的コントロール心理学としての選択理論は「人々を不幸にしている外的コントロールの考え方(心理学)」を否定し、排除するために考え出されたものであること、

③選択理論は、「人々が行動するのは、内的な欲求充足のためである」として、行動を引き起こす原因が5つの基本的欲求の充足であるとしていること、

④選択理論は「内的コントロール100%の心理学」であり、そのために人々が行動をセルフコントロールしているモデルとして、独自の「内的コントロールモデル(脳のしくみ)」を持っていること、

があげられ、これらの①~④の点が、まさに他の「内的コントロールの考え方が書かれた本」とは異なる点であるように思われる。

以上に書いたことを叩き台にして、引き続き、「選択理論のユニークさ」について、考えていくこととしたい。

(記事は以上です)


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