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60年代の夢と闇『ラストナイト・イン・ソーホー』を観てきたよ

パソコンを買い替えたけど、機能に自分が追い付いていない。
職場支給のテレワーク用PCと大して違わないだろうと思っていたが、そもそもテレワークはほぼALLリモートデスクトップだから使い勝手が微妙に違ったのだった。
そんなことよりも映画である。
年末年始は大型映画が次々くるので、小規模~中規模公開の映画はすぐに見ないと上映回数がゴリゴリ削られること必至なのである。

というわけで観に行ったのが「ラストナイト・イン・ソーホー」である。
直訳すると「昨夜ソーホーで」だろうか。ソーホーは仕事を家でする人のことではなく、ロンドンのソーホー地区のことである。

簡単にあらすじを説明すると、現代でファッションデザイナーを目指すエロイーズが、夢の中で歌手を目指す60年代の女性サンディと同調するようになっていくうちに、現代でもサンディの夢に侵蝕されていくようになるホラー。

そう、この映画はジャンル「ホラー」なんだよ。(途中まで忘れる)

いや、ちゃんとホラーの文脈の映画なんですけど、途中までは夢を追いかける女性の悲哀もののテイストが強く、途中からはゾンビ映画のテイストが混ざる(※ゾンビは出てきません)

とか思ってたら監督のエドガー・ライトって『ショーン・オブ・ザ・デッド』の人じゃないですか!!なるほどゾンビ!!(※繰り返しますがこの映画にゾンビは出てきません)

私の中ではショーン・オブ・ザ・デッドよりも『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン』の人なんですけど、エドガー・ライト。

ホット・ファズのノリで『ラストナイト・イン・ソーホー』見たらテンションの温度差で風邪を引きそう。でも血のりの使いかたがホット・ファズと似てるのでやっぱ同じ監督!!ってなりました。

60年代の歌が流れまくるので、観るなら音響がいい映画館がオススメかも。
あと、上映前に光過敏症の人向けに注意書きが出る程度にビッカビカに光が明滅するので、苦手な人はご注意を。

この先はネタバレありの感想です。多分、話のジャンル的にネタバレをすると台無しになるやつですので、まだ観ていない(観る予定がある)人はこの先要注意ですぞ!
ネタバレOKな人はスクロールしてくれよな!!













序盤、希望を持ってファッションの学校に入ったエロイーズが、初手で会ったクソルームメイトに期待を粉々に粉砕されていくの、ちょっと殴りたいリアルさ。

エロイーズは霊感少女で、死んだ母親の幻覚を見たりするのですが、それが60年代を生きていたサンディの夢に繋がっていく。

歌手を目指していきいきとしているサンディを夢に見たエロイーズは、自分もサンディと同じ金髪にしてみたりと同調を深めていくが、夢の続きがどんどん不穏になっていく。サンディを歌手にすると言ったマネージャーは、サンディをたくさんの男との売春を仲介するように。

やがて、サンディが血まみれになる夢を見たエロイーズは、彼女が殺されたと考えて事件を探し始める。

サンディの夢が不穏になったあたりから、エロイーズの周りには男の幻覚が現れるようになるのですが、顔の部分がぼかされた薄暗い影として出てくるので、ゆらゆらした動きもあってすごく……ゾンビです。

サンディの正体については、まぁそこまで意外性はないのですが、手紙のあて名がアップになったところでキタワー!ってなりました。

クライマックスのクレイジーサイコババアのくだりはサイコ・ホラーのジャンルにカテゴライズするには十分な出来だと思います。

しかし、あの家に死体隠してるのだとしたら、よく臭いとかでバレなかったな……。死体隠してるからあの家を買ったのかもしれないけど。火事になったあとに大量の人骨が出てくるのか……。

エロイーズの「生きて」に対して、彼女を殺す意思はなくなったけれど、自分は火事の中に残るサンディはちょっと切ない。肉体は地獄の60年代を生き延びたけれども、サンディの心は60年代で死んだまま戻ってこなかったのかもしれない。

しかし、エロイーズに散々疑われた後に唐突に事故って重傷を負ったおじいちゃんと、ただエロイーズを真摯に信じて助力をしたのに巻きこまれで腹を刺されてしまったクラスメイト君、めちゃくちゃかわいそうだな!(おじいちゃんはわからないけど、クラスメイト君は生きてて良かった)(というか、あの出血量でよくぞ生き延びたな)

サンディに同調するタイムリープの最初の方の、鏡ごしにパジャマのエロイーズが映るシーンや、ダンスの途中でサンディとエロイーズがくるくる変わるシーンなど、映像的な見どころも十分あったと思います。

めちゃくちゃ血のりドバー!するけど!!(シーンとしてはそんなに多くない)

いや本当、途中までの展開だと主なホラー要素が男たちの幻覚のみなので、これはホラーか?? ホラーか??ってなるんですよね。後半には血のりダバー!クレイジーサイコババア!ゾンビ風男たちの幻覚フルスロットル!と大盤振る舞いなんですけど。

幻覚男たちの正体については、割と自業自得なところがあるのでアレなんですけど、最後に助けを呼んだことだけはグッジョブだな。

ホラーなんですけど、ラストはハッピーエンドです。エロイーズはちゃんと結果を残せる子だ。偉いぞ!

ホラー映画の実は何も解決してないエンドが苦手なので、そこはよかったなーと思います。

女性への性の搾取を割とシビアに描いてるので、その辺は好みが分かれるかもしれない。

これ、ホントに「ホット・ファズ」と同じ監督だよね??ってなるんだけど、ダイナミックな血のりの使い方が完全に同じ監督なんですよね。

12月の激戦区にこの映画が公開されたことに、何とも言えないチャレンジ精神を感じますね。面白かったので、興行収入的にももう少し伸びたらいいな。伸びてくれ!!

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