■ハマス対イスラエル戦争について - その6: 【ハマスはパレスチナ・アラブ人の敵。停戦から休戦実現へ】

■ハマスはパレスチナ・アラブ人の敵。停戦から休戦実現へ
1 https://note.com/sawataishi/n/n69a628d04754
2 https://note.com/sawataishi/n/n1e657ab15199
3 https://note.com/sawataishi/n/n47e37db9eb10
4 https://note.com/sawataishi/n/n4eabc0e3545e
5 https://note.com/sawataishi/n/n1c2c3e019e33
6 本文章 https://note.com/sawataishi/n/naa200d46a412

 今日に至るまで、テレビ・新聞に出てくる中東問題「専門家」らの言説にはうんざりしてます。多くはネット情報のみで勝手に解釈しており話しになりません。ごく一部の知識が深い人達はパレスチナ人はいじめられているとの感情にまどわされて、ハマスこそがパレスチナ独立を阻害しており、ガザ住民にとってハマスこそが敵だと見抜くことができてません。本日は当たり前と私が思う事実と考察を書きます。
 参考までに、尊敬すべき飯山陽先生(47才)を紹介します。先生は20才頃からアラビア語・イスラム教を学んできている研究者

 以下、本題
【1】オスロ合意実現をハマス AND ネタニヤフらイスラエルの極悪勢力(ネタニヤフ一派+一部の宗教勢力)が妨害している
 1993~1995年の合意により、PLO(軍事部門はファタハ)がパレスチナ・アラブ人の唯一の代表とアメリカ・エジプト・イスラエル・ヨルダンが認め、パレスチナ独立が目標とされ、ガザとヨルダン川西岸はPLO/自治政府が統治、イスラエルと自治政府の話し合いでエルサレムの事など問題を解決することになりました。
 ハマスはイスラエル国を消滅させることを目的としており、最初からオスロ合意など認めないと公言してます。ネタニヤフ一派はそんなことを公言はしませんが、西岸への入植をするなど自治政府とまともに話し合う意思がありません。
 ハマスはパレスチナ国独立を目指しているのか? 明確に宣言してませんが、あの勢力はイスラム教の教義忠実なので、地球住民の全てがイスラムで統一されることが目的なのであり、国家なぞあの勢力の眼中にありません。イスラム聖戦、ISIS、ヒズボラなどの宗教軍事団体と同じ。イランはそれらテロ組織を全力で支援しており、イラン指導部は当然のことながら、全世界がイスラム支配となることを目指してます。
 イスラム教にはキリスト教徒の一部のような「原理主義」(聖書の文字列は神聖な神の言葉と信じる)はなく、イスラム教徒はコーランの全文字列は神の言葉だと信じるのであり、そうでないとイスラム教徒ではありません。もちろん、イスラム教徒の大多数は文化としてのイスラム教徒であり、日々善良に生きてます。けども、イスラム教そのものが全世界のイスラム化が実現すると断言しており、本当のイスラム教徒ならば全世界征服のために命を捨てることすら厭ってはなりません。ハマス、イスラム聖戦、イラン等の反イスラエル勢力はユダヤ人の国の存在は宗教的理由から論外とみなしておりますが、それだけでありません最近1400年ほど、北アフリカから中東にずっと生きてきたユダヤ人を継続して賤民とみなして、差別・迫害してきました。ロシア人、リトアニア人、ウクライナ人たちも確かに反ユダヤ暴動を繰り返してきましたが、イスラム教徒・アラブ人と比較すると、迫害の質×量はかなり小さいです。どちらも論外ですが。
 ユダヤ側に話しを転じます。この二十年ほどのイスラエル内閣はネタニヤフ一派と一部の宗教勢力により構成。前者は世俗的理由で、後者はユダヤ教の本旨をゆがんで理解しているため、パレスチナ独立を絶対に認め無い。それら勢力にとってはハマスにはパレスチナ独立を不可能とする作用があるために、客観的な味方なのです。イスラエルの新聞にはまともなものがあり、例えば HAARETZ https://www.haaretz.com/ はネタニヤフ内閣がハマスに資金援助してきたこと等を暴露してます。
ここから、これまでのまとめと別の諸観点を列挙します。

●ハマスとネタニヤフ内閣はお互いを必要としている
 ※おぞましいことです。
・ハマスによるロケット弾攻撃に対して、倍返し以上の空爆をすることでイスラエルの評判は悪くなるが、パレスチナ独立阻止のために有益。もしもハマスのテロが無いならば、平和的環境が成立、つまりパレスチナ独立を目的とする話し合いの条件が整ってしまう

・ハマスによるテロが望ましいどころか、ハマスがガザを支配していること自体がネタニヤフ内閣にとって素晴らしいこと。なぜならば、パレスチナ自治政府がハマスを排除してガザを領土にしない限り、パレスチナ人を唯一代表する政治体が成立しないから。パレスチナ民族全体を事実として代表する政治組織が存在してない以上、イスラエルには交渉相手が無いハマスが存続する限り、パレスチナ独立はあり得ないのだ

・イスラエルの倍返し以上の空爆も西岸への不当な入植もハマスにとって大歓迎。それがあるからこそ、ハマスの野蛮さが見えにくくなり、ハマスへのイラン等からの資金・軍事援助が増大する。イスラエルの「蛮行」が繰り返される間は、「国際社会」とか半端な知識しかなく洞察力に欠ける有識者・学者連中は、ハマスこそがパレスチナ独立を阻害している事実を認識することができない。(補足:そもそもハマスやイスラム戦線はパレスチナ国独立なぞ眼中になく、イスラエル消滅は仕事の第一段階に過ぎないと幾度も声明してきてます。今回もそうでした)
以上のようなことの理解しなくて、今日までの解決不能状態の理由がわかるはずありません。ネタニヤフ内閣とハマスは互いに憎悪してますが、どちらも敵の存在と蛮行を必要としており、これまで十数年間「共存関係」を継続してきたのです。
 ただし、違いはあります。ネタニヤフ内閣はハマスとの時折の戦闘が永遠に継続することを国益のために甘受してきているのに対して、ハマスはそうではないこと。
 最近、遅くとも二年前、いつまでも馴れ合いが続くことには我慢できなくなったと考えられます。理想実現の第一段階としてのイスラエル国消滅という当面の目標が馴れ合いでは達成できないことに、ハマスはようやく二年ほど前に気付いたのでしょう。ネタニヤフ内閣は永遠にだらだらと戦闘が繰り返されることを目標としていることがわかったのでしょう。だから、これまでは控えてきたユダヤ人大虐殺を二年前から周到に準備してきて、今回断行したわけです。
 イスラエルがもしも数倍返しの報復をしないと、イスラエルへの同情が高まり、ハマス存続の危機に陥る危険を覚悟しつつ、必ずイスラエルは圧倒的な軍事力で空爆と地上侵攻をすることに賭けたのです。イスラエルが途方もない軍事力行使をするならば、アラブ諸国はもとより全世界の諸国で反イスラエルデモとユダヤ人攻撃が頻発し、「国際社会」とか半端な知識人の反イスラエル感情が限度を超え、ついにはイランがヒズボラ等による対イスラエル攻撃にGOを命じ、イランは宣戦布告なくしてイスラエル国会議事堂(クネセット)に弾道ミサイルを打ち込むようなことの実現に賭けたと思います。ハマスはナイスドイツ以来のユダヤ人大虐殺こそ、これまで馴れ合ってきたネタニヤフ内閣の誤った判断を誘発することに賭けたのであり、今のところ賭けに成功してきてます。ハマスとイランの望むとおりの現実が展開してます。

2】ハマスは停戦を求めているが、停戦が実現されないことに賭けている
 ハマスは停戦を求めてますね。国連もそうしてます。ハマスが本気で停戦実現を願っていると見做してはならないと私は断固として主張します。停戦が実現すると、国連とかアラブ・イスラム諸国(イラン以外)の中で正気の諸国が介入します。停戦実現後、ハマスとイスラエルとの直接交渉はほとんど有り得ませんが、パレスチナ自治政府とイスラエル AND 国連とまともなアラブ・イスラム諸国(イラン以外)の交渉が始まるでしょう。パレスチナ独立を目標とすることにイスラエルは断固反対することが決してできません。その目標のための諸手段が議題となり、当然のことながらハマスとイスラム聖戦の解散・無効化、自治政府によるガザ統治が必須となりましょう。ハマスとイランにとって、絶対に認められないことが停戦実現だと考えられます。
 以上のように解説しましたが、何故ハマスは停戦を求めているのでしょうか? 単純に、我々は人命を尊重していると宣伝することで、イスラエルがもっと政治的に不利になることが目的でしょう。大虐殺したハマスが、子供をあやしている有様をネットに公開しましたが、その映像は逆効果のみだったわけです。しかし、ハマスは停戦を求め、イスラエルは応じない事実があり、イスラエルへの悪感情が現実に高まってます。ハマスはイスラエルが停戦に応じないことを願っており、予想しております。イスラエルはハマスとイランに操られてます。
 さて、もしも、文書での停戦協定により停戦ないしは文書なくしての事実上の停戦が実現してしまうと、朝鮮戦争においてのごとき休戦協定(自治政府のガザ支配など含む)が成立する公算が極めて高くなります。ハマスとイランの望みに反して停戦が実現してしまった後、休戦協定締結を妨害するためにハマスとイランは全力をつくそうとするするでしょうが、何しろ停戦しているのですから、新たなテロは政治的に極めて困難。それでもハマスは最後に賭けにでることは考えられます。

  1. 停戦協定に堂々と違反して、ロケット弾を可能な限り発射すること
     イスラエルがハマスの軍事拠点を空爆することを期待して、停戦が崩壊することにかけるわけです。もしも、イスラエルの攻撃がこれまでのような倍返しでないならば、休戦協定交渉参加国(国連も)はイスラエルの報復を厳しく非難することはなく、戦闘は短期間に終息するかもしれません。ただし、ネタニヤフ内閣はそもそもパレスチナ独立は避けたいので、激烈に報復して、停戦が完全崩壊する公算は小さいながらありましょう。けども、アメリカの強い本気の圧力はかならずあるので、おそらく停戦崩壊とはならないと予想します。

  2. イスラム国のやり方を断行: イスラエルに対して無理難題を要求する。応じないならば人質を生中継で1人また1人と斬首する
     現実にネット中継で全世界に野蛮行為(斬首)が中継されたら、イスラエルは軍事的報復をするでしょうか? したとしても、「国際社会」/国連/アラブ・イスラム諸国(イラン以外)/生半可な「有識者」達すら、「ハマスによる野蛮行為は非難するが、イスラエルにも責任がある」とこれまでのような妄説を垂れ流すことは困難で、しないでしょう。ただし、ネタニヤフ内閣の至上命題はパレスチナ独立阻止なので、報復の質量を激烈にする、つまりはガザの南半分への途方もない攻撃を断行することで、国際社会等からして途方もなく過度の報復だとの非難を期待して、結果として停戦崩壊実現のための賭けに出る公算がゼロではないとは思います。もちろん、そんな賭けに出るとは予想しません、私は。イスラエルが斬首の生中継に対して、何も軍事行動を取らないならば、イスラエルへの同情が強まり、停戦は維持され、休戦協定実現となる公算がますます高まるでしょう。

すでに長くなりました。以下は補足。

【3】ハマス、イスラム聖戦、イラン等は反ユダヤ主義、これに対してネタニヤフ一派と一部の宗教勢力(イスラエル内閣)はパレスチナ独立反対に過ぎない
 最初に「主義」という言葉について正確に定義します。マルクス主義などの主義は自らを絶対的な正義とみなし、反◎◎主義は、◎◎の迫害を喜んで実行し、時には◎◎を全員殺害することすら望みます。少なくとも◎◎の無力化に関しては可能ないかなる手段を用いても実行する決意を有します。
 反ユダヤ主義はイスラエル国の存在だけを否定するのではなく、全世界のユダヤ人そのものを嫌い、ユダヤ人が地球からいなくなることすら望みます。ハマス、イラン等は明白な反ユダヤ主義勢力であり、単にイスラエル国を消したいだけではありません。その根拠は最近の報道でも明白になってます、すなわちハマス等は全世界のイスラム・アラブ人に対して、対ユダヤ人テロやイスラエル製品不買等を暗に陽に呼びかけてます。1つのネーション(民族・国民)そのものを憎悪するだけならば「単なる」人種差別ですが、憎悪対象のネーションを政治的・政財敵手段で迫害したり、殺害することを正義と見做すならば、人種差別主義です。
 フランスにあるシナゴーグ(ユダヤ教徒の集会所)を攻撃する人に対しては、人種差別主義者と非難しなければなりません。イスラエル国の蛮行に憤ることは仕方ないですが、フランスのユダヤ人はイスラエル国の有権者ではありませんから、イスラエルの罪に関係してません。但し、反ユダヤ主義は人種差別主義ではありません。何故ならばユダヤ人はいかなる意味でも人種でないからです。確かに、ユダヤ人はアブラハム、イサク、ヤコブの血筋から連綿と継続していますが、五千年余りの間に様々な人種と混血しておりますので、race/人種として存在していると言うのは誇張であり、間違いです。だから、ハマスとかイラン政府指導者を人種差別主義と非難してはなりません。イスラエルのユダヤ人の顔だけ見ると、ドイツ人そのもの、アラブ人そのものとしか見えない人が莫大におりますよ。
 イスラエル側に話しを転じます。ネタニヤフ内閣を構成する人々の態様は反アラブ/反イスラムではありません。パレスチナ独立は現世利益からして、ないしは宗教的誤解からして、認められないだけのこと。ネタニヤフらはアラブ人/イスラム教徒そのものが嫌いというのではない。その根拠の1つは、イスラエル国もネタニヤフ的なユダヤ人の誰1人として、全世界のユダヤ人にアラブ人・イスラム教徒迫害を呼びかけるようなことしてないし、今後もするはずなく、そんなことを考えすらしません。

【4】クェート、サウジ、ヨルダン等の王制国にとってはもちろん、シリア/イラク/エジプト等の普通の諸国にとっても、イスラムテロ集団は敵である
 これらアラブ諸国は世俗的であり、指導層は冷徹な現実主義者です。確かに、パレスチナ人の大義を言葉で支援し、それのみではなく現実にパレスチナ自治政府を金銭的、経済的、政治的に支援してきてます。しかし、ハマスのごとき人類全体をイスラム化することを目標とするテロリスト集団の危険を世俗的指導層は正しく認識していると信じられます。ハマス等のイスラムテロ集団はサウジ等の王制国を認めてないし、できればサウジを支配下にして石油を武器にしたいと思っていると確信してます。けども、このことを公言はしません。もしも、ハマスがヨルダン川西岸をも支配下におき、パレスチナ人が完全にハマスの奴隷となれば、テロが更に激増し、結果としてイラン等連合軍対イスラエルの第五次中東戦争実現も有り得ることでしょう。

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