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映画『デシベル』 痛快アクション映画と思いきや深重い映画だった

ドラマで大活躍のASTROチャウヌが初めて映画出演することになった作品『デシベル』
突如短髪にしたチャウヌに、
映画撮影のためとは知らないオタク達は、兵役に行くのかと騒然となった。
そんな韓国映画が日本公開されたので見に行ったのだが、その感想が自分でも意外だった。

*ネタバレ注意

短髪のチャウヌ


①静と動のギャップ

この映画の面白いところは、
現在進行形のストーリーと
過去の伏線シーンの
「静と動のギャップ」だと思う。

騒音反応型爆弾テロを防ぐために孤軍奮闘する元海軍副長カン・ドヨン。
あらゆる音が脅威になる臨場感溢れる爆破シーン、手に汗握るアクション、息もつかせぬ展開に、
ハラハラドキドキのパニックアクション映画。
かと思いきや、
過去にカン・ドヨン率いる海軍潜水艦が訓練中の事故で浮上できなくなり、究極の選択を迫られる。
乗組員達の絶望感と音の無い海の底のシーン。

この2つの静と動のシーンが交互に繰り返され、
犯人と事件の真相に結びつく。

何も知らない5万人の観客の中で孤軍奮闘するカン・ドヨン
冷酷卑劣な爆弾テロリスト役のイ・ギョンソク


②ドキドキハラハラの「動」のシーン

大都市釜山に仕掛けられた騒音反応型爆弾。
騒音が一定のデシベルを超えると爆発する。
犯人が仕掛けた現場は、
5万人が集まるサッカースタジアム、真夏の室内プールなど、人々の興奮で騒音が起こることが必至の状況。
そのことを知るのは、
爆破予告の通報を受けた元海軍副長カン・ドヨン(キム・ウォレン)ただひとり。


そしてひょんなことから事件に巻き込まれることになった特ダネ記者オ・デオ(チョン・サンフン)が、
このシリアスな映画をコミカルに色づけしてくれている。


③事件の発端となった悲し過ぎる過去

1年前、カン・ドヨンは暗い海の底で苦渋の決断をした。
それは海軍潜水艦が訓練中の事故で浮上できなくなり、2週間後にしか助けは来ない状況となった。
船中の酸素は乗組員の半数の量しか残っていない。
全員犠牲になるか、半分を生きて返すか。

カン・ドヨンはタイムリミットまで悩んだ挙句、後者を選んだ。
手編みのマフラーをほどき、くじを作って全員がひいた。
船首と船尾に別れ、船尾の酸素をシャットアウトするために。

兄弟で乗り組んでいた兄(イ・ジョンソク)弟チョン・テリョン(チャウヌ)は、
それぞれ船首と船尾に別れてしまった。
そしてこのことが脅威の爆弾テロリストを生み出すきっかけになってしまう。


④チャウヌということを忘れて感動

潜水艦の船首と船尾に別れることは、すなわち永遠の別れ「生と死」を意味する。

最後の別れ際、
船尾の隊員が泣き叫ぶ姿に、
チョン・テリョンは
「泣いてはいけない。船首の人達が辛くなるでしょう。」
そう気丈に声をかけて船首に残る隊員達に敬礼をして船尾へと歩を進めた。

生き残った隊員もその後の人生は同僚の犠牲の上に成り立った辛い人生だった。
昼間から酒に溺れて廃人になった者もいる。


深重い映画だった。

⑤自分ならどうする?

こういう究極の選択をする映画を今まで何度か見たことがある。
映画のタイトルは覚えていないが、そのシーンはずっと脳裏に焼きついている。

ある映画では、
雪山のクライミングシーンで、
絶壁に吊るされた2人が、
重みに堪え兼ねたくさびが岩から抜けてしまう前に、
ひとりが自分のロープを切って、奈落の底へ落ちて行くシーン。

自分ならどうするだろう。
と、その時も考えたが、結局考えはまとまらなかった。
そして今回も全員死ぬか半分生き残るか、
船首か船尾か、
その答えは出ていない。

ただ、今回のチョン・テリョンの船首に残る人への慈悲にあふれた言葉と、敬礼をして船尾に消えて行く姿は、
忘れられないシーンとなって、
この先、何度も思い出すことになるだろう。

*画像は『デシベル』公式H.P.より

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