場面緘黙症だったことに大人になって気付いた話⑤掃除時間編
幼稚園から小学3年生になるまで、園内、校内で全く話さなかった場面緘黙の話の続きです。
2年生に進級したが、喋らないのは変わらなかった。2年ごとのクラス替えなので、クラスのメンバー、担任も同じだった。
給食が終わると、床掃除をしやすいように、一斉に皆で机を後ろの方向に押す。
一斉になので、ギーギーと机を押す音が、教室中に響き渡る。
わたしも机の両端を握って、後ろに押していた。隣の列は進みが早かったのもあって、並んだ男の子は少し勢いを付けて押していた。その時、親指に強烈な痛みが走った。
男の子の押していた机が、わたしの机にぶつかって親指を挟まれたのだ。
男の子はわたしを見た。
涙が出そうなくらい痛かったが、わたしはまるで何事もなかったかのように、泣きもせず、声も出さず、指を押さえることもせず、表情ひとつ変えずに、机を押した。
一瞬固まった男の子だったが、何も反応しない場面緘黙の女の子に、かける言葉も見つからないだろう。
男の子もまた、何事もなかったかのように机を押したのだった。
このことは、教室の中で男の子とわたしだけしか知らないことだと思う。
いや…男の子はわたしがそんなに痛い思いをしたことは、知らないだろう。
そもそも、指を挟んだことさえ知らないかもしれない。
泣くと言う表現さえも出来なくなった、幼稚園での注射のトラウマが、ここに現れてしまったのだ。
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親に話したのかも覚えていないが、病院に行ったという記憶もない。
後日、親指の爪は黒くなり、剥がれたことは鮮明に覚えている。剥がれた爪の下から、新しい爪が顔を覗かせていた。
爪って使えなくなると、新しく生えてくるものなのだなぁと、経験として知ったのだった。
あの時の自分、本当に我慢強いなぁと今でも思う。今はそんな我慢は到底できない。その後授業もあったはずなのに、冷やしもせず、ズキズキした指を我慢しながら、誰にも言わずにいる小学2年生。
せめて、よく我慢したね!と幼い自分に言ってあげたいな。
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