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ハリウッドがひれ伏した銀行マン / 映画の新たな資金調達スキーム

「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」というドキュメンタリー映画をご存じだろうか。
映画製作の現場で新たな資金調達スキームを編み出し、900本もの作品の製作をサポートしたオランダ人銀行マンの軌跡を描いたドキュメンタリー映画である。
この新たな資金調達スキームがなければ、「コンドル」「キングコング」「ターミネーター」「プラトーン」といった名作が作品が生まれることがなかったかもしれないと言われている。

■当時のハリウッド
1970年代~90年代のハリウッドではプロデューサーや監督が独立をして、製作会社を立ち上げたりしていた。しかし、彼らの問題はメジャー系製作会社と比較して資金力が劣ることだった。そのため、なかなか良い作品を製作するこができなかった。

普通の企業であれば資金調達をするために行うのは、銀行からの融資である。しかし、映画の製作費のために融資をするのは銀行にとってリスクが大きい。以下が主なリスクだ。
①作品がちゃんと完成しないかもしれない
②作品が完成してもヒットせずに資金が回収できない

以上の様に、独立したばかりの製作会社は資金を集めることができずに苦戦をしていた。

■新たな資金調達スキーム
そこで登場するのがこの映画の主人公であるオランダ人銀行員のフランズ・アフマンである。彼が考えたスキームは事前販売(プリセール)だった。

このスキームは、製作者は脚本やキャスト情報をまとめた段階で、その配給権を事前販売(プリセール)して制作費をつくるものだ。
以下が全体のスキーム図になる。

ステップ1:初めに世界中のメジャー系配給会社に脚本及びキャスト情報を読んでもらう。
ステップ2:興味があれば配給契約(配給権の買い取り)を締結する。
しかし、この段階では作品が完成をしていないので現金の支払いはない。
ステップ3:締結した配給権を担保に銀行に融資を依頼する。
これだけだと銀行からすると、作品が完成せずに配給権が価値をなさない(価値ゼロ)の可能性がある。
そこで完成保証会社から完成保証契約を差し入れさせる。
-完成保証会社とは
この会社というのは、作品の完成を保証する会社である。
1「映画が予算を超え、資金難に陥った場合、完成するまでの不足分を負担する
2「あるいは製作会社から撮影中の映画を引き取り、自ら完成させる。さらに最悪な場合には金融機関に融資額を返済し、映画そのものをボツにする」権限がある。作品が完成しないと困るので、「スケジュール通りに制作が進んでいるか」「クオリティが守られているか」ということをアシスタントプロデューサーとして毎日現場でチェックする。
完成保証会社としては作品がちゃんと完成しないと困るので製作に積極的に係わるようになる。

ステップ4:完成保証契約を差し入れさせた後、銀行はお金が回収できないリスクはなくなったので融資を実行する。
ステップ5:このタイミングでやっと現金が支払われ、製作が進むようになる。同時に完成保証会社に保証料(保険金のようなもの)を払いながら、進捗管理の影響を受ける。
ステップ6:製作が完了して配給会社に納品
ステップ7:配給会社は納品がされたので、お金を製作会社に支払う。
ステップ8:配給会社が映画館で上映を開始する

以上が事前販売(プリセール)スキームになる。
このスキームによって、面白い脚本・キャスティングさえあれば新興系の製作会社でも多くのお金を集めることができるようになり、「ターミネーター」等の数多くの名作を世に出すことできたそうです。
つまり、企画力でお金集める。まさに現在のクラウドファンディングのようなものと言える。

ちなみに日本ではこのスキームはあまり普及していない。
14年前に東京海上日動火災保険が国内で初めてこのスキームを実施した。
しかし、それ以降はあまり実施されていない。
日本で普及しない理由は金融機関が消極的だったり、そもそも日本が米国に比べ制作費が小規模で保証料の金額も小さい(手間ばかりかかる)と言われている。

このスキームに興味を持った人はぜひ映画を観ていただければと思う。



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