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【トルコ語学習ノート】遊牧民族の眼で世界史を見る為の参考書:『文明の生態史観』を読み直す!

亡くなった梅棹忠夫先生の代表作のひとつ、『文明の生態史観』。トルコ人の気持ちを理解する為に、遊牧民族の歴史・文化を知ろう!という試みをしている私、学生時代以来、ひさびさに本書を引っ張り出してきましたが、やはり名著ですね!

ただし、古い本であり、かつ梅棹忠夫先生自身も遊牧民側の専門家ではなかったので、今の私から見ると(僭越ながら)言いたいこともいろいろあります。

梅棹忠夫先生の本書での主張は、ざっくりとまとめると以下の通り

・中世の世界史における最大の事件は、遊牧民族帝国(モンゴル、トルコ、ティムール)による大征服事業だった
・それに破壊された中国やロシア、中東は、長い停滞の時代を迎えた
・いっぽう、遊牧民族帝国からの攻撃をしのいだ国(日本、ドイツ、フランス)は、独立を保ったまま、産業革命に進むことができた
・だから、世界史は、「西洋 対 東洋」ではなく、「遊牧民族に征服された国 対 されなかった国」で二分割したほうがクリアになる

とても面白い論文であり、確かにこう見ると、「どうして冷戦時代に、日本・アメリカ・西欧が接近したいっぽう、ロシア・中国・東欧が接近したのか」という問いへの答えが得られるようで、たいへんに刺激的です!

ですが、現在に立った私の視点から見ると、「西欧と日本は実は近いのだ!」という論調にはいささか違和感もある。

そして、トルコ語にのめりこんだ私から見ての最大の疑問は、「遊牧民族に征服された文明と、征服されなかった文明」という二分割で世界をとらえると、当事者である「遊牧民族の子孫たち」がすっかり抜け落ちてしまうのでは?ということ。

よって、私としては、「遊牧民族に征服された文明と、征服されなかった文明、そして遊牧民族自身の遺した文明」との三国志としてみたほうが、世界史の見方としては適切では?と思ってしまいます(※もちろんこれは梅棹忠夫先生の論理にヌケがあるというわけではなく、梅棹忠夫先生は「西洋対東洋」という常識に物申すためにこういう主張を準備したので、「遊牧民族たち自身」には関心がなかったというだけなのでしょうが)。

しかし、そうした批判を加えつつもなお私が言えること。

中世の世界史において最大のショックが、遊牧民族帝国による世界侵略事業であったというのは、まったくその通りと思いますし、「遊牧民族たちの侵略にどう対処したかで、それぞれの国の文化が激変した」という主張も、きっとその通り!

日本だって、元寇に勝つには勝ったが、それと引き換えに、鎌倉時代の秩序が崩壊して戦国時代へとなだれこんでいくわけですからね。

いずれにせよ、梅棹忠夫先生の本は、やはり面白い!

大胆不敵な仮説を展開した人であり、先生が言っていることがどこまで正しいかはまた別の問題であるということを理解した上で読むならば、いまだにたくさんの斬新なアイデアに溢れた世界史論文ではないでしょうか!

子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!